風丘の部屋。
風丘はソファーに座り、夜須斗はその前に立たされていた。
「さてと・・・・吉野。何でここ、連れてこられたかわかってるよね?」
風丘に問いかけられ、夜須斗は口を開く。
「・・・・・酒飲んだから・・・すみません・・・」
「正解。 今回はたまたま体に異常出なかったけど、
このまま『いつも飲んでるから平気』とかいって飲み続けたら、
いつ体おかしくなっても不思議じゃないんだからね。」
「・・・・・うん・・・」
「吉野、未成年がどうして法律でお酒飲んじゃいけないか知ってる?」
「アルコールの影響を強く受ける発育期に接種すると、
脳や肝臓に障害が起こりやすくなるから・・・って保健でやった。」
すらすら答える夜須斗に、風丘は眉間に皺を寄せた。
「そこまでわかってて飲んだわけか。」
「うっ・・・・だって・・・こんなん普通の炭酸と同じって思って
ちょっとっつ飲み始めたら止まんなくなって・・・・」
消えていくようなか細い語尾。
夜須斗の表情を風丘はしばし無言で見つめ、それから口を開いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いつもの吉野らしくないじゃん。
そんなに怒った俺が怖かったー?」
「え?」
「いつもだったら、惣一君たち悪ガキグループの頭脳として、
余裕しゃくしゃくの態度とってるのにねー?」
「・・・・・・・・風丘、なんかしゃべり方・・・」
先ほどとうって変わった風丘の態度に、呆気にとられる夜須斗。
「ああ。さっきまで確かに冷たくしてたよ?体に関わることだしねー。
でも、飲んじゃいけない意味わかってるのはよかった。
教え直さなくてもいいもんね。」
「・・・・・・・(こんなあっさり態度変えるなんて・・・
やっぱよくわかんないや、風丘って)」
そう不思議そうに見つめる夜須斗の顔を見て、風丘はにっこり微笑んだ。
「あーあ。ガラにもなくお説教しちゃったよ。
それもこれも吉野が大人ぶって変なことするからだよ。
よし、それじゃあ、長らくお待たせいたしました、本番開始です(^-^)」
「!」
この「本番」が何を意味するのか。
嫌なことに分かってしまった夜須斗は、冷や汗が流れるのを感じる。
「でもよかったねぇ吉野。お酒、止められなかったんでしょ?
今回、トラウマになってきっとお酒見るのもいやになるよ。
いやぁよかったよかった。」
「!!! やだ! すみませんってば! ちょっ 離せって!」
いきなり普段の風丘に戻って、
しかもさらりと軽く恐ろしいことを言われたりして、
夜須斗はまたもやびびることになった。
「だーめ。 今日は大泣きしてもらうからね。
こう見えても俺、まだ怒ってるんだよ?」
「やだよ、離せってば!」
「・・・離せって言われて離すんだったらとっくに離してると思わない?」
「うっ、それは・・・・・・・っやめろ!」
何の前触れもなく、風丘は夜須斗の腕を強く引っ張り、
自分の両脚の間に引き込んだ。
そして手際よく、夜須斗が履いていたズボンと下着をおろしてしまう。
「やめろって言ってんじゃん!」
「ん? やーだ。 だって悪いのは吉野じゃない。」
あっという間に夜須斗のお尻をむき出しにすると、
風丘は夜須斗の背中を押して
ちょうど左腿の上に下腹部がきて少しお尻を突き出すような形にした。
そして残った右脚で夜須斗の両脚を挟み込み、
足を動かせないようにしてしまう。
おまけに左手で夜須斗の両手首をつかんで背中と一緒に押さえつけているため、
夜須斗は完全に身動きがとれない状況にさせられてしまった。
「よし! それじゃあ行くよ。さっきから言ってるけど、簡単には許さないからね。」
バッシィンッ
「んんっ!」
一発目から鋭い痛み。
惣一のさぼりの計画に付き合って、そのとき叩かれたものとは全然比べものにならない痛みだ。
素のお尻を叩かれている、ということもあるが、明らかに叩いている力が違うのだ。
バシィンッ
バシィンッ
バシィンッ
バシィンッ
「ん・・・んん~っ!」
夜須斗は、とにかく悲鳴を漏らさないように必死だった。
一度出してしまえば、おそらく止められなくなる。
惣一以上にプライドの高い夜須斗にとって、
担任の膝の上で悲鳴をあげながらお尻を叩かれている自分、
なんて想像するだけでも耐えられない。
何回か叩いた後、そんな夜須斗を見て風丘は
「くすっ。 吉野は相当プライド高いね。
でも・・・それがいつまで続くかなー あー、楽しみ楽しみ。」
と、バカにしたように言うと、
バッシィィンッ
「ぎゃぁっ!!」
さっきよりも強い一発を炸裂させた。
夜須斗はいきなり強くなった平手に我慢できず、ついに悲鳴を漏らしてしまった。
バシィンッ
バシィンッ
バッシィィンッ
バシィンッ
バシンッ
「んあっ! ぎゃぁっ! いったぁ!」
一度漏れてしまった悲鳴はもう止められない。
結局、容赦なく降ってくる平手に情けない悲鳴をあげることになってしまった。
「風丘・・・・先生。もういいじゃん・・・十分だって・・・」
夜須斗の悲痛な訴えも、風丘はあっさり棄却する。
「十分かどうかは俺が決めるの。
それに言ったでしょ?『今日は大泣きしてもらう』って。」
「なっ・・・! 俺は泣かない!」
「さあ、どうだろ。目、潤んできたんじゃない?
悲鳴の声も上ずってきてるし。そろそろ限界近いんでしょ。わかってるんだから。」
「うっ・・・・それは・・・」
それは事実だった。
ここまで徹底的に叩かれて、我慢できる域をそろそろ超えようとしていた。
「・・・・・・・・・」
なかなか次の平手が降ってこない。
でも、さっきまでの言い様だと決して許されてはいない雰囲気だ。
じゃあなんなんだこの間は・・・そんなことを考えているときだった。
ピシャァンッ
「んんっ! ふ、ふぇ・・・」
叩き方が変わった。今まで真上から打ち下ろすように叩いていたのに、
下からすくい上げるような叩き方になったのだ。
そしてついに・・・
「ふぇ・・」
夜須斗の目から涙が流れた。
叩き方の変化にびっくりしたし、痛いしで、
泣き声はこらえたものの、涙が流れるのは止められなかった。
泣きたくないのに、泣くもんかって思ってるのに、涙はどんどん流れてきてしまう。
ピシャァンッ
ピシャァンッ
ピシャァンッ
「ふぇぇ・・・やだ・・・痛いぃっ!」
「ほぉら泣いちゃった。俺の言うとおりだったでしょ?
さぁ、じゃあこれであとは『ごめんなさい』言ったら許してあげないこともないよ。」
「やっ・・・そんなの・・・俺最初にすみませんって言ったよ・・・」
「『すみません』じゃなくて『ごめんなさい』。」
「・・・・・・・・・・」
ピッシャァァァンッ
「やぁぁっ! ご、ごめんなさいっ!」
「はい、OK。」
「ったい・・・早く・・・おろしてっ!」
「こんなお尻のまま床におろしたって痛いだけだよ、夜須斗君。」
「うう・・・・」
言い返せなくて、膝の上で唸っている夜須斗のお尻を指でなぞりながら、風丘が顔をしかめる。
「うわぁ・・・こりゃまた真っ赤だねぇ・・・」
「誰が・・・こんなにしたんだよっ・・・!」
「はいはいはい。 いいからこのまま横になってな。」
風丘はそういうと、膝の上から夜須斗をおろすと、
惣一の時と同じようにアイスノンを持ってきて夜須斗のお尻にあてた。
「んんっ!」
「それにしても、夜須斗君って痛みに強いんだねぇ。
あの叩き方で大暴れしなかったなんて、珍しいよ。」
「暴れたくたって暴れさせてもらえないじゃん・・・・」
「ん?」
「な、何でもない・・・・」
「そう・・・んじゃ、しばらくそうしてな・・・「やだよ、帰る! こんなとこもう一分たりともいたくない!」
夜須斗がそう叫ぶと、風丘がにやりと意地の悪い笑みを浮かべて尋ねてくる。
「でもそのお尻でだよ?」
「こんなの平・・・」
「『平気』なのー? ふ~ん・・・・」
「いや、平気・・・じゃ、ない、けど・・・」
「くすっ いつもクールな吉野夜須斗も形無しだね。
お尻叩かれて泣くわ、俺にからかわれて焦っちゃって~ 可愛い☆」
「だ、だから、そうしてんのは全部あんたでしょ! っていうか今のキモイ!」
「そうする原因作ったのは夜須斗君でしょ?」
「そ、そうだけど・・・」
「でも、もうお酒なんて手出すの止めようって思ったでしょ?」
「そ、そりゃあ・・・」
「ならOK。泣かせた甲斐があったよ。」
「・・・・・・・・帰る!」
部屋を出ようと服を整え、風丘に背を向けてドアの方へ歩き出す夜須斗に、風丘がだめ押しの一言。
「うん。気をつけて帰りなよ。
帰って勢いよく座って悲鳴あげたりしないようにね。」
「あのさぁ・・・・惣一に言われただろうけど、俺からも言わしてもらう。」
「んー?」
「あんた最っ低!!」
夜須斗が初めて風丘にしっかりお仕置きされた日のことだった。