③洲矢の場合


「次。洲矢か。・・・って、そんな怯えんといて。傷つくから(苦笑)」


惣一が出て行って、次は自分の番、となってからずっと、
洲矢は仁絵の後ろで、陰に隠れるように縮こまっている。
雲居が洲矢を見ると、ビクッと肩を震わせて。


「えーと・・・お仕置きが怖いんと、注射が怖いんと、どっち?」


自分が洲矢をお仕置きするのは初めてだから、

それで怖がられてるのかもしれない、と雲居が洲矢に尋ねる。

すると、洲矢は俯きながら答えた。


「どっちも・・・」


「どっちもかい(汗) でも、みんな同じやからな。こっち来ぃや。」


「はい・・・」


ここで愚図らないのが、洲矢だ。
おずおずと進み出て、雲居のところまで行く。
抵抗ゼロで、雲居に素直に抱えられ、ズボンと下着を下ろされる。


「素直やなぁ。あの2人の後だとめっちゃ楽やわ。」


比較的、暴れてる相手のお仕置きが多かった雲居は、

洲矢の様子に感嘆の声をあげる。
しかし、平手は前の2人と同様に、強烈なのを振り下ろした。


バシィィンッ バシィィンッ バシィィンッ


「いたぁぁぃっ・・・ぁぁっ・・・いたぁぁぃ・・・」


「よし、お仕置きは終わり。ほなら、次は注射やな。」


洲矢を床に下ろし、注射の準備を始める。

洲矢は履く物を戻して、素直に待っているが、顔はものすごく不安げ。


「ほな、袖捲って・・・あぁ、目はつぶって、顔背けてもええけど、

力はあんま入れたらあかんで。よけい痛いから。」


「惣一の時にはんなこと言わなかったくせに。」


見ていた夜須斗がつっこむ。


「あいつは言うても聞かんやろ。肩の力抜いて、だらんとしてな。」


「はい・・・」


洲矢が力を抜くと、雲居は腕に針を刺す。瞬間、


「んっ・・・」


と少し顔をしかめたが、その後はおとなしく、注射は終了した。


「あんまり・・・痛くなかった・・・」


「せやろ? 逃げんといたらこれだけで済んだのに・・・」


「はい・・・」


そう言われ、シュンとなる洲矢。


「まぁ、これからは平気やな。

ほんなら、はーくんの連絡待っといてな。」



そして、数分後、電話が鳴り、洲矢は風丘の待つ部屋に向かった。






「先生・・・」


開いているドアから怖々と顔を覗かせる洲矢。
そんな洲矢を見て、風丘は少し微笑む。


「いらっしゃい。こっちおいで。」


「はい・・・」


おずおずと部屋に入ると、洲矢はベッドに座った風丘の前に立った。

風丘は洲矢の手を引き、膝の上に横たわらせ、ズボンと下着を下ろす。
露わになった白いお尻に手を置いて、風丘は尋ねた。


「何がいけないことか、分かってる?」


「あの・・・嘘ついて、仮病使って・・・」


バシィィンッ


「いたぃっ」


「そう。それで?」


「注射、サボろうとした・・・」


バシィィンッ バシンッ バシィンッ バシィンッ


「いたぃっ・・・うぅっ・・・ったぁ・・・ふぇっ・・・」


「そう。注射はやらなきゃいけないことなんだから、

サボっちゃダメでしょう?」


バシィィンッ バシィィンッ バシィィンッ


「はぁぃっ・・・いたぁぁっ・・・うぅっ・・・ごめっ・・・ごめんなさいっ・・・」


「うん。反省は出来てるみたいだけど。でも、まだダメ。

やっちゃったことへのお仕置きだからね?」


「ふぇぇ・・・」


優しい声音ながらも厳しい風丘の言葉に、洲矢は涙目になる。


「なんで、仮病がいけないことだか分かる?」


「えと・・・うそ・・・だから・・・」


バシィィンッ バシィィンッ バシィィンッ


「いたぁっ・・・やぁっ・・・ふぁっ・・・いたぁぃっ・・・ふぇぇんっ・・・」


「そう。嘘つくのはダメだよ。でも、それだけじゃない。」


「ふぇ・・・?」


「佐土原が『調子悪い』って言ったら、

それを聞いた雨澤先生や俺が、どんな気持ちになるか分かる?」


「え・・・? えと・・・・・・んと・・・」


「佐土原なら分かるでしょう? 考えてごらん。」


「んと・・・えと・・・」


風丘が平手を止めてくれたので、洲矢は落ち着いて考える。

そして、出た結論は・・・


「心配・・・する?」


「そう。正解。仮病は嘘の中でも、人に心配をかけるタチの悪い嘘。
だから、俺は仮病ってかなり嫌いなんだよね。」


「うっ・・・ごめんなさい・・・」


『嫌い』と言われたのに反応して、洲矢は落ち込む。
更にシュンとしてしまった洲矢を見て、風丘は苦笑する。


「いいよ。佐土原はちゃんと反省できてるみたいだし。

でも、また次やったらこんなもんじゃすまないよ?」


「はぁい・・・ごめんなさい・・・」


「うん。じゃあ仕上げね。物差しで。もう少しがんばろっか。」


「う・・・」


物差しをかざされて、さすがに素直な洲矢も狼狽える。
が、ここでまけてくれるほど風丘は甘くない。


「お返事は?」


バチィンッ


「あんっ・・・はぁいっ・・・」


「よくできました。それじゃあ、仮病の分、3発ね。いくよ。」


ビシィンッ ビシィンッ ビシィィンッ


「いたぁぁぁぃっ!」


「はい、おしまい♪」


「先生、痛いよそれ・・・」


膝から下ろされて、

珍しく、洲矢がお仕置き後に恨めしそうな目をして、物差しを指さす。
相当効いたようだ。


「痛いでしょう? 

でも、次またこんなことがあったら、ずーっとこれでお尻ペンペンだよ。」


「やぁっ」


「でしょ? だから、いつも通りの洲矢君で、良い子にしててね。
たまには悪戯していいけど、今回みたいなのは絶対ダメ。分かった?」


「はぁいっ」


「よくできました(ニッコリ)」




こうして、洲矢のお仕置きも無事終了した。








④夜須斗の場合


残すは2人。

雲居は、夜須斗を呼ぶ。


「次。夜須斗やな。」


「分かってるよ・・・」


ふて腐れたように返事をして、夜須斗が雲居のもとの歩み寄る。


「さっさとして。」


「お前なぁ・・・」


相変わらずのかわいげのなさに雲居は溜息をつきながら、

夜須斗の腰を抱え上げて履いているものを下ろし、平手を与える。


バシィィンッ バシィィンッ バシィィィンッ 


「んんっ・・・くぅっ・・・うぁっ!」


お仕置きが終わると、

特に注射自体に嫌悪感を抱いていたわけではない夜須斗は、

おとなしく打たれていた。
その様子を見て、雲居は少しからかい気味に言う。


「なんや、お前は平気なんか。」


が、その言葉への夜須斗の反撃はきついモノだった。


「何それ、『注射怖い』とか言って泣いてほしかったの?
あいにく、俺がサボったのは、

放課後こんな事のために待たされるのが嫌だっただけ。

残念でした。」


「ほんま可愛くないやっちゃ・・・」


ピリリリリ


「はぁ・・・来た。じゃあ行くから。」


溜息をつく雲居を尻目に、夜須斗はリビングを出て行った。


雲居の前では相変わらず、

風丘以上に意地を張る夜須斗なのだった。





「・・・来たけど。」


「うん。どうぞ。・・・はい、ここに来て。」


「っ・・・」


入った途端、風丘に膝を示され、夜須斗は唇を噛む。

いかなければ酷いことになるのは目に見えている。

行かないわけにはいかないが、自分の羞恥心やプライドが邪魔をする。
それでも何とか歩を進め、風丘の横に立った。

ひどいときはそこから自分で下ろして乗れ、なんて言ってくる風丘だが、

今回はそこまで要求せず、
その後は腕を引っ張られ、無理矢理乗せられ、お尻を出された。


「さて、吉野は主犯格だよね。」


バシィィィィンッ


「ってぇぇぇっ 確かに計画はしたけど! 元はあいつらが・・・」


想像以上の1発目の痛みに、思わず言い訳してしまう。
風丘は、それを咎めるように更に平手を落とす。


バシィンッ ベシィンッ バッシィィンッ ベシィィンッ バシィィンッ


「んぁっ! うぁぁっ! ってぇっ・・・くっ・・・うぁぁぁっ」


「いつも言ってるじゃない。その頭の使いどころ、間違ってるって。
洲矢君たちに仮病なんか使わせて・・・惣一君にもあんな変な入れ知恵して。」


バシィンッ バシンッ バシィィンッ バシィンッ バッシィィンッ


「いたぁぁっ・・・あいつらがっ・・・やるって・・・決めたんだろっ・・・うあぁぁっ・・」


「それにしても、だよ。吉野が言ったから大丈夫だろう、って思って

決行したんじゃないの?
特に惣一君とかつばめ君とか。
吉野は影響力が強いんだから、考えて行動しなさいってことも、

いつも言ってるはずだよ。
なんでサボろうなんて提案にのったわけ?」


バシィィンッ バシィンッ バシンッ バシィンッ バッシィィンッ


「んぁっ・・・だってっ・・・いたぁぁっ」


「だって?」


バシィンッ バッシィィンッ


「だって・・・めんどくさいじゃんっ・・・いたぁぁっ・・・注射なんてっ・・・」


「ほら、それが本音でしょ? 

自分だって乗り気だったのに、他の子のせいにしないの。
大体、そのダシにお祖父さん使うなんて・・・」


バチィィィィンッ バシンッ バシィィンッ バシィンッ バッシィィンッ


「ってぇぇぇぇっ! 別にいいじゃんっ・・・

ほんとだよ、じいちゃんが調子悪いのは!」


「もっと悪いよ。そんなことをサボりに利用して・・・反省しなさい。」


そして、最大の3連打が降ってきた。


バシィィィンッ バシィィィィンッ バッチィィィィンッ


「いたぁぁっ・・・うぁぁっ・・・ってぇぇぇぇっ! ぅぅっ・・・くっ・・・」


さすがの夜須斗もこれには堪えたのか、

目端から涙がこぼれそうになった。
必死に耐えて、焦って叫んだ。


「分かったっ 分かったからっ ごめんなさいっ」


「お、今の効いたみたいだね? 珍しい。」


滅多に、お仕置き中自分から謝らない夜須斗の謝罪に、

風丘は少し驚いたように言う。


「るさいっ・・・マジで痛いっ・・・」


「それじゃあ、仕上げ。物差しで・・・」


かざされた物差しが目に入り、

夜須斗は反射的に文句を言ってしまっていた。


「はぁ!? あんたバカじゃない!? この期に及んで・・・」


「今の暴言で1発。それから・・・」


「なっ・・・」


さらりとかわされ、夜須斗は目を見開いて諦めて口をつぐむ。
余計なことを言えば、どんどん追加される。


「嘘の理由で2発。計画を立てた主犯だから1発追加で4発ね。

はい、いくよー」


夜須斗が拳を握り、体を硬くして身構える。
そして、その痛みは唐突に降ってきた。


ビシィンッ ビシィンッ ビシィィンッ ビシィィィンッ


「いぁっ・・・ってぇぇっ・・・あぁぁっ・・・うぁぁぁぁっ!」


「はい、終わりー。」


「この・・・暴力教師・・・」


「何か言った?」


「別に・・・」


膝から下ろされ、

お尻をしまった後もジンジンと痛むお尻をさすりながら、夜須斗がぼやく。
これは久々に後を引きそうな痛みだ。


「これに懲りて、参謀を務めるのもほどほどにするんだね。」


「はいはい・・・」


夜須斗は渋々返事をして、部屋を後にするのだった。