①つばめの場合


「さて、ほんならつばめからやな。」


「やだっ やだやだやだやだぁっ!」


すでに、リビングの机には注射器等がセッティングされている。


雲居は立ち上がると、愚図っているつばめの腰を無理矢理小脇に抱え、

器用にズボンと下着を下ろしてしまう。


「全く・・・全員で5人もおんねんからあんまり手間かけさせんといて。」


バシィンッ バシィンッ バッシィィィンッ


「いっ・・・いたっ・・・いったぁぁぁぁぃっ!!」


雲居は手早く3発きついのを打ち込むと、ストンとそのままつばめを床に下ろす。

痛みで涙ぐんでいるつばめを尻目に、

雲居は置いてあった消毒液の染みこんだコットンを取り、
つばめの腕を無理矢理つかみ、有無を言わさず袖を捲って消毒を塗る。


最初は突然のお尻叩きに呆然としていたつばめだが、

ようやく自分の置かれている状況が分かり、途端に暴れ出す。


「何っ!? やだっ やめてよっ 離してってば!」


雲居の手を振りほどこうと暴れるが、雲居の力が強い上に、
床にしゃがみ込んでいる状態で手を掴まれたため、

上手く立ち上がれず、力が入らない。

が、いっこうに諦めようとしないつばめに、雲居が一喝した。


「いい加減にせぇや! 針折れるで!?」


「ひっ・・・」


雲居が突然怒鳴ったのにびっくりして、つばめが一瞬動きを止める。

すると、雲居はそのタイミングを見逃さず、すかさず素早く注射を打った。


「えっ!? あっ・・・いた・・・いたいぃぃぃぃっ」


ワンテンポ遅れてそれに気がついたつばめは、

顔をくしゃっとゆがめて半泣き状態。
しかし、雲居は何事もなかったかのようにつばめの腕にガーゼを貼る。


「大げさやなぁ。打った瞬間、気づいとらんかったくせに。」


「抜いた時が痛いのぉっ!!」


「へいへい、さよか。ほら、はよはーくんとこ行けや。後がつまるで?」


「うぅ・・・」


つばめは涙目で雲居を睨みながら、嫌々風丘の部屋に向かった。





「はい、いらっしゃい。」


ニッコリと笑顔、しかし目は笑っていない風丘に迎えられたつばめ。

風丘は、ベッドに腰掛けていた。


「うぅ・・・」


「じゃあ、ほら、膝においで。」


「僕、注射受けたっっ」


「知ってる。でもお仕置きも必要でしょ。早く来ないと、追加するよ?」


「風丘のバカ・・・」


つばめは小声で悪態をつきながらも、のそのそと風丘に近づく。

風丘はつばめの手を取ると、膝に乗せ、ズボンと下着を下ろした。


「さて、あの様子だと、『注射嫌だ』って言ったのは太刀川だね?

全くもう・・・」


バシィィィンッ バシンッ バシンッ バシィィンッ バシィィンッ


「やぁぁっ! いたぁぁっ 僕だけじゃないもんっ いたぁっ 惣一もだもんっ」


「ふぅーん。新堂も、なんだ。なるほど。言い出しっぺはその2人、と。
ってことは結局やっぱり太刀川もじゃない。反省しなさい。」


バシィンッ バシンッ バシィィンッ バシィンッ バッシィィンッ


「いたぁぁぃっ だってぇっ 注射嫌いぃっ いたぁぁっ」


「そりゃね、注射好きな人ってあんまりいないと思うけど。

でもさぁ、いずれやんなきゃいけないんだよ。
やんなきゃいけないことを後回しにしたって、良いことないでしょ?」


バシィンッ ベシィンッ バッシィィンッ ベシィィンッ バシィィンッ


「ああぁんっ だってぇっ いたぁぁっ ふぇぇ・・・」


「それで嘘の書類なんて作って。先生騙したりして。」


バシィィンッ バシィンッ バシンッ バシィンッ バッシィィンッ


「いたぁぁぃっ あれは夜須斗がやったのぉぉっ いたぁぃっ」


「作ったのは吉野でも、のったのは太刀川でしょ。

っていうか、さっきから他の子の名前出してばっかで。
太刀川自身の反省は0か。

じゃあ、ずーっとお尻ペンペンしてなきゃね。」


「いやぁぁっ 反省したからぁっ」


バシィィンッ バシンッ バシィンッ バシンッ バシィィンッ 


「いたぁぃっ ふぇっ あぁぁんっ うぁっ」


「ほんとに~? そのわりには反省の言葉、全く聞こえてないけど?」


バシィンッ ベシィンッ バッシィィンッ ベシィィンッ バシィィンッ


「いぁっ・・・あぁんっ したぁっ したからぁっ ごめんなさぃぃっ」


「やっと言った・・・じゃあ、仕上げね。」


つばめの体の下にある、風丘の膝が少し動く。

風丘が手を伸ばして、手にした物。それは・・・


「ふぇっ・・・何それっ!? 何持ってんのぉっ!?」


「物差し。」


さらっと答える風丘に、つばめはわかりやすく顔をゆがめる。


「なんでっ・・・なんでぇっ!? 反省したもんっ」


「だから仕上げだってば。

太刀川はそうだね・・・書類のねつ造が2発で、

言い出しっぺな分、1発追加。3発ね。」


「何それっ・・・やっ・・・」


つばめが暴れ出す前に、その凶器は手早く振り下ろされた。


ビシィンッ ビシィンッ ビシィィンッ


「あぁぁぁぁぁんっ!」


その瞬間、つばめは大泣きし、解放された瞬間、膝から転げ落ちた。


「あぁ、ほら、危ない。

全く・・・これに懲りて、もうこんなことしないんだよ?」


「ふぇぇっ・・・風丘のバカぁっ・・・」


お尻を押さえて自分を涙目でにらみつけているつばめを見て、

風丘は苦笑するのだった。








②惣一の場合


つばめが出て行ってしばらく経って。

雲居が、惣一に向かって手招きした。


「ほな、次惣一やな。・・・お前も注射ダメなんか?」


「っ・・・しょーがねーだろっ」


「お前らなぁ・・・中2にもなって・・・」


雲居は呆れ気味。


「まぁ、とりあえずお仕置きやな。ほら、はよ来い。

つばめみたいに逃げたって、ええことあらへんで?」


「うっ・・・」


釘を刺され、渋々雲居に近づく惣一。
すると、雲居はつばめと同じように

惣一の腰を抱え、脇に抱えると、手早く平手を振り下ろす。


バシィンッ バシィィンッ バシィィィンッ


「いぁぁっ・・・うぁっ・・・ってぇぇぇぇっ!」


惣一が痛みに叫ぶが、雲居は全く意に介さず、

床に下ろすと消毒のコットンと注射器を持った。


「惣一は自分で受けるやろ? 

それとも、つばめみたいに無理矢理やられるか?」


「っ・・・」


惣一は少しの間迷っていると、意を決して立ち上がり、雲居の元に再度歩み寄った。
袖を捲り、腕を突き出す。
体にものすごく力を入れ、顔を思いっきり背け、目をつぶっている。

そんな惣一を見て、雲居は苦笑。


(そんなんせんでも・・・つーか力入れたよけい痛いんやけど・・・まぁええか。)


注射針を刺すと、予想通りにうめき声があがった


「いぃっ・・・くぅっ・・・」


「ほい、終わり。はーくんから連絡来るまでちょっと待ってな。」



それから約5分後、雲居の携帯が鳴り、

惣一もつばめと同様、嫌々部屋に向かうのだった。





「ほら、おいで。」


部屋に入ってすぐに、風丘に手招きされる。
が、ここで素直に行けるような惣一ではない。


「っ素直にいけるかぁっ」


クルッと踵を返して、部屋から出ようとした惣一だが、

さすがに風丘の反応は早かった。
瞬時に立ち上がって惣一の腕を掴み、

そのまま引っ張ってベッドに座った自分の膝に乗せる。


「全く・・・逃げた分も追加だね。相変わらず往生際が悪いんだから・・・」


呆れながらズボンと下着を下ろす。
その間も、惣一は抵抗を続けているが、風丘はびくともしない。


「うるせぇっ はなせぇっ」


「離すわけないでしょ。ほら、いくよ。」


風丘は相手にもせず、平手を落とした。


バシィィンッ バシィンッ バシンッ バシィンッ バッシィィンッ


「うぁぁっ いぅっ・・・くぅっ・・・ってぇっ いてぇぇっ」


「全く・・・アルコール入りのお菓子使うなんて、

ずいぶんな悪知恵働かせたねぇ。」


バシィィンッ ベシィィンッ パァァンッ バシンッ バシィィンッ


「あぁぁぁっ! あぅぅっ いってぇぇっ 

あれは夜須斗の入れ知恵だぁぁっ」


「はぁ・・・。つばめ君とおんなじようなこと言って。

だから、考えたのは吉野でも、それにのったのは新堂でしょ? 

責任転嫁しない!」


バシィィィンッ バシィィンッ ベシィンッ バシィンッ バシィィンッ


「ぎゃぁぁっ ってぇぇっ いてぇっ いたいってぇぇっ」


「知ってるよ。痛くしてるの俺だもん。
だいたい、注射嫌だって言い出したの、新堂もなんでしょ? 

嫌なことから逃げるためにこんなくだらないことして・・・」


バシィィンッ バシンッ バシィンッ バシンッ バシィィンッ 


「うぁぁぁっ いたぃっ・・・ってぇぇっ ぎゃぁぁっ」


「しかも、この期に及んでお仕置きからも逃げようとして。

反省する気、ないんでしょ?」


バシィンッ ベシィンッ バッシィィンッ ベシィィンッ バシィィンッ


「いてぇぇっ したよっ・・・したからぁっ ぎゃぁぁぁっ ってぇよっ ふぇっ・・・」


痛みに涙ぐみだしたところで、風丘が助け船を出す。


「だったら何て言うの? 知ってるでしょ? 新堂。」


「うぅ・・・」


分かってはいるが、なかなか言えない。
惣一がうなっていると、

風丘がしびれを切らして、強烈な平手を叩き込んだ。


バッシィィィィィンッ


「ぎゃぁぁぁぁっ ごめんなさぃっ」


痛みに負け、叫ぶように惣一がやっとそう言うと、風丘ははぁっと息をついた。


「全く・・・つばめ君も新堂も、どうして毎回毎回自分から言えないかなぁ・・・」


「るせぇっ うぅっ・・・いったぁっ・・・」


惣一が涙目で睨んで膝からおりようとする・・・

が、風丘に腰を押さえられ、阻まれる。


「まだダメ。」


「はぁ?」


「仕上げ。物差しでね。

新堂は・・・お菓子使った偽装で2発、言い出しっぺで1発、

それから逃げた分で2発追加。合計5発ね。」


「はぁぁぁっ!?」


「ほら、いくよー」


そう言って、その凶器は、

すでに赤くなった惣一のお尻に容赦なく振り下ろされた。


ビシィンッ ビシィィンッ ビシィィンッ ビシィィンッ ビッシィィンッ


「いたぁぁっ うぁぁっ ってぇぇぇっ ぎゃぁぁぁぁぁっ」


惣一のお仕置きは、大絶叫で幕を閉じたのだった。