(注意)
*超絶に長いです。(で、長い割に中身があるかというと・・・)
この時点で、書きながらアップしているので、
いつものように1回でラストまでアップできないかもです。
惣一たちが中2になった、始業式の翌日。木曜日。
教師陣も大して変わらないメンツで、
オリエンテーションもそこそこに、徐々に通常授業が始まってきた時だった。
今は昼休み。
惣一たちはいつものように屋上に溜まって、
昼食を食べながらダラダラしていた。
「あー、たるっ・・・ 早く休みになんねーかな・・・」
惣一がふわぁと欠伸をしながら何気なく発した一言。
それに相づちを打ったのは洲矢だった
・・・が、それが惣一の予期していないものだった。
「うん・・・でも休みの前に、予防接種だねー・・・ちょっとやだな・・・」
「あぁ・・・って!」
「「予防接種ぅぅっ!?」」
少しずれた相づちだったが、それどころではない。
声を上げたのは、惣一と、つばめ。
「何それっ 聞いてないよ!?」
「えー? 風丘先生、朝のホームルームで言ってたよー?
あ、始業式の日にプリントも配られたし。
雲居先生が来て、明日の放課後、2年生一斉にするんだってー。
13歳の麻疹の予防接種。
もう受けた人はいいって言ってたけど・・・」
いつものおっとりした口調で、洲矢が答える。
「あー、そういや、んなこと言ってたな・・・」
「いや、フツーに言ってたし。」
仁絵と夜須斗は興味なさそうに相づちを打つ。
「朝のホームルームなんて聞いてるわけねーだろ!」
「そーだそーだ! っていうか、予防接種って注射だよね!?
注射やだよぉっ(>_<)
しかも光矢っ!? 絶対、ぜーーーーーーったいヤダッ」
「俺だって嫌だよ・・・ 夜須斗だって嫌だろ!?」
「俺は別に・・・。仁絵は?」
「っ・・・平気だ、んなの!」
仁絵は、春休みに雲居にお尻に注射された事件を思い出し、
あれに比べればただの予防接種くらい・・・と心の中でつぶやく。
本当は少しは嫌なのだが。
・・・というか、雲居にされるのが軽くトラウマになっている、というのが強い。
「僕もあんまり好きじゃない・・・けど、すぐ終わるって風丘先生言ってた。」
一瞬伏し目がちになる洲矢だが、
すぐに顔をあげて、「頑張るっ」と気合いを入れる。
が、その洲矢の気合いをつばめが打ち崩した。
「大人はみんなそー言うんだよ!
っていうか受ける前に『痛い』なんて説明するわけないしっ」
「・・・そーかなぁ・・・。」
「おい、脅すんじゃねーよ・・・」
つばめの言葉に、また落ち込む洲矢を見て、仁絵が溜息をつく。
「っていうかさ・・・」
夜須斗が口を挟む。
「予防接種自体は別にどーでもいいんだけど。
1組から体育館で1列に並んで、順番待ちして受けるってシステムが気に入らない。
待ってる間特にすることもなくて。
ただでさえ今日6時間なのにさ。だったら早く帰らせろって感じ。
だいたい、学校で受けなきゃいけない義務も無いんだし。
後で各自で受けりゃいい話じゃん。」
惣一たちは5組だから、待ち時間が長い。
しかも、終わった生徒から解散の予定になっているのだ。
夜須斗にとっては煩わしいだけだった。
数秒間の沈黙の後。
惣一が、叫んだ。
「よっしゃ、サボろう!!!」
「言うと思った・・・。」
夜須斗がそれを聞いて苦笑いする。
が、仁絵が冷静に一言。
「フツーにバレるんじゃね?」
「バレても明日だけ粘れば注射からは逃げられる!」
「風丘からは逃げらんねーけどな。
注射と引き替えに尻犠牲にするわけ?」
「うっ・・・おい、仁絵!
せっかくの決意を萎えさせるよーなことを言うな!」
「事実を言ってんだろーが!」
ヒートアップしたきた2人を見て、夜須斗が口を挟む。
「・・・まぁ、風丘はきついかもだけど、
明日の放課後、2年部は職員会議だったはずだから・・・
雨澤なら、もしかしたらいけるんじゃない?
予防接種の担当、雨澤でしょ? 打つのは雲居だろうけど。」
「何、何? 夜須斗のアイディアひらめいたっ!?」
つばめが身を乗り出して聞いてくる。
「うちの学校。
正式に早退するには担任許可か養護教諭許可かのどっちかが必要でしょ?
明日、風丘が早退許可出してくれそうなのは洲矢か・・・仁絵だね。」
「洲矢は分かるけど・・・何で俺なんだよ。」
仁絵が不思議そうに聞く。
洲矢は普段マジメだから、「調子が悪い」と言えば風丘でも信じるだろう。
しかし、なぜ仁絵が・・・しかし、夜須斗はあっさりとそれに答えた。
「仁絵、始業式直前まで風邪だったじゃん。
今ならまだ、『ぶり返した』っつっても真実味がある。」
「あぁ、なるほど・・・。」
「似たタイミングで早退したら怪しまれるから、
仁絵は今日の夜とか明日の朝から、
家で風丘に調子悪げな雰囲気臭わしといて、
2限と3限の間に風丘に言って早退して。
洲矢は昼休みに、雨澤に言って、仮病使って早退。」
「うんうんっ」
つばめが、目をキラキラさせて相づちを打つ。
「惣一は・・・これ使え。」
夜須斗は惣一に、ポケットから取り出したものを投げわたす。
「何だ、これ・・・チョコレート?」
「あぁ。ウイスキーボンボン。きっついヤツ。
お前、酒ダメだったよな?」
「あぁ、ラムレーズンでもきついのだと顔赤くなる・・・ってまさか・・・」
「それ食って、放課後に雨澤んとこ行って。
ただお前が行っただけだと信じられないだろうけど、
顔赤くして、多少実際に気持ち悪さがある状態で行けば、何とかなるでしょ。」
「その気持ち悪さはどーなるんだよっ!!」
「きっついったって、お菓子なんだからたかがしれてる。
一時的なもんなんだから我慢してよ。」
夜須斗はバッサリ切り捨てる。
「それから、俺とつばめだけど・・・。
つばめは、予防接種、接種済みのヤツが提出するプリントのねつ造。」
「え? そんなのあったっけ?」
つばめはピンと来ないようで、洲矢を見つめて助けを求める。
すると、洲矢が数秒の沈黙の後、答えた。
「・・・うん。もう受けた人は、
プリントに家の人のサインとハンコ貰って、雨澤先生に見せるんだって。」
「ハンコぐらいは自分で何とかして。
サインは、俺か仁絵が適当に崩し字で書くから。
風丘だったらバレるけど、雨澤ならごまかせるでしょ。
そんなに俺らの字を見る機会も無いし。
で、俺は適当な理由見繕って、
放課後用事が出来たから、来週中に自分で受けてくるって雨澤に言う。
・・・これで、何とかいけるんじゃない。」
「おぉ!」
「すっごーい!!」
素直に感嘆の声を上げる惣一とつばめ。
仁絵は、感心したように言う。
「さすが、サボりの常習犯。よく思いつくもんだな。そんな5人分も」
「まぁね。よし、それじゃあその作戦で。」
こうして、5人の予防接種サボり作戦は動き始めたのだった。