「さて、2人とも。なーんであんな喧嘩してたのかな?」


明らかに焦った表情の惣一と、

一度も風丘と目を合わせようとしない仁絵。
そんな2人にニッコリと怖い笑顔で問いかける風丘。


「ほら、どっちか答えて。それともお膝の上に来ないと言えない?」

「「!!」」


2人は目を見開いた。

そして、ついに惣一が口を開く。


「仁絵が悪ぃんだよ! 

いつまでたってもツンツンしてるし、いきなり殴りかかってくるし!」

「んだよ、てめぇがいらつくこと言ってくるからだろうが!」

「こっちは仲間に入れてやろうとしてんだろ!」

「誰もんなこと頼んでねぇ!」


「あー、はいはい、ストーップ!!!」


またヒートアップしそうになる2人に、慌ててストップをかける風丘。


「つまり。新堂は仲良くなろうとしてなんとか柳宮寺に話しかけるけど、

柳宮寺がクールに流しちゃうもんだから
新堂はちょっとイラッときて

柳宮寺が嫌がるようなことを言って気を引こうとした。
そしたら、柳宮寺が今度はカチンと来て、殴りかかって、

元々喧嘩っ早い新堂はそれにのって、
気づいたら殴り合いの喧嘩になってた・・・・って感じだね。」


「今の説明だけでどうやったらそこまで理解できるんだ・・・?」
「・・・。」


目を丸くする惣一と無言の仁絵。


「ま、喧嘩両成敗でしょ。だ・け・ど!」


「「??」」


「柳宮寺にはその他にもちょーっと聞きたいことがいーっぱいあるから」

「どっちだよ。」


さりげない惣一のつっこみ。


「そこでしばらく静かに反省してなさい。・・・ってなわけで、新堂~ お・い・で♪」

「音符をつけるな! 楽しそうにすんな! ってか素直に行くかぁ!!」

「ほら、30発で許してあげるから。早くしなさい。」

「うぅ~~~~~」

「素直に来ないなら倍にするよ?」

「わ、分かったからっ!」


その瞬間、惣一は焦って風丘のもとへ行った。

しかし、今回風丘が要求するものはそれ以上だった。


「・・・・はい、履いてるの下ろして。」

「・・・・・・・は?」


ポカンとする惣一。


「だから、お・ろ・し・て?」

「満面の笑みで恐ろしいこと言うなぁぁぁっ!」

「膝まででいいから。そしたら自分で膝に乗って。」

「・・・・・・・・・・・・マジで?(汗)」

「冗談で言ってるように見える?」


へらへらした様子のまま言っていたが、目は全く笑っていない。むしろ冷たい。


「勘弁してよ・・・・」

「ダメ。ほら、早く。」

「だってあいつ見てるっ・・・・」


「いいから早くしなさい。倍がいいの?」

「うぅっ・・・・・」


2人がこんなやりとりをしている中、離れたところに立っている仁絵。

惣一が『見てる』と言っていたが、

実は見ているようで全くそれどころではなかった。

昨日の今日で、現在仁絵の中は恐怖心がほとんどを占めていた。
しかもそれだけではない。

風丘の性格上、恐らく自分だって惣一の見てる前でされるだろう。

そんなのは冗談じゃない。
もしそうなれば、昨日のように素直に謝る、

ましてや泣き叫ぶなんて、どんなことがあっても出来ない。
そんなのは自分のプライドが許さない。

『女王様』と呼ばれるほどの高いプライドを持っているのも、
甘えん坊なのと同時に仁絵本来の姿なのだ。

つまり、結論からすると惣一の前で叩かれるなど考えられないことなのだ。
しかし、逃げたりするなんてこともできるわけがない・・・

そんなことを考えていたため、2人のやりとりなどほとんど意識の外だった。



惣一はというと、観念して履いている物を下ろし、

風丘の膝の上にやっと乗ったのだった。


「はい、じゃあ30ね。いくよ。」


バシィィィィンッ


「ってぇぇぇぇっ!」

「仲良くしようとしてくれるのはいいんだけどね・・・。」


バシィンッ バシィンッ バシィンッ バシィンッ


「んんんっ ったぁぁっ ぎゃぁぁっ」

「ケンカしてどうするの。ケンカして。」


バシィィィィンッ バシィンッ バシィンッ バシィンッ バシィンッ


「いってぇぇぇっ! だって、あいつが、俺っ・・・せっかくっ・・・・うっっ・・・・」


バシィンッ バシィンッ バシィンッ バシィンッ バッシィィィィンッ

バシィンッ バシィンッ バシィンッ バシィンッ バッシィィィンッ


「あぁぁぁっ いぃぃぃっ くぅぅぅっ・・・うぇっ・・・・うぅっ・・・・」

「だからそれは良いの。

でも柳宮寺を怒らせるようなこと言ったの新堂でしょ?
それに関しての反省はないの、反省は。泣いてもダメ。言葉にしなさい。」


いつものごとく容赦のない風丘の平手に、惣一は早々に白旗を上げた。


「ごめっ・・・・ごめんなさいっ・・・・もう・・・しないっ・・・・」

「柳宮寺には?」

「ご、ごめんっっ!! 俺もっ・・・悪かったっ・・・」

「・・・・・・・・・。」

「うん。OK。あ、それから、

柳宮寺仲間に入れてあげようとする活動は続けてね。」

「・・・・・分かった。」

「はい、じゃああと10ね。サクサク行くよ。」

「ぅぇっ!? ちょっ・・・」


バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ

バシンッ バシンッ バシィィンッ バシィィンッ バシィィィンッ


「~~~~~~~~!!!」


最後の三発で、惣一は声を失った。


「うぅ・・・風丘の鬼・・・・馬鹿力・・・・」

「分かった分かった。ほら、タオル用意してあるから。 
俺は今度はあっちの困ったさんの相手しないとだから、

悪いけど今日はフォロータイム無し。ごめんね~」


「叩くだけ叩いといて・・・・」


惣一はブツブツ文句を言いながらも膝から降りて、

用意されていたタオルを乗せて、床にうつぶせに寝ころんだ。



「さて、柳宮寺。おいで。で、新堂と同じようにして。」


突っ立っていた柳宮寺を手招きする風丘。

はっ、と我に返って突っぱねる仁絵。


「!・・・・・・・・だ、誰が!」

「来なさい。」

「行くわけねぇだろ!」

「ふぅ・・・・・・」


風丘はため息をつくと、仁絵の元へ歩み寄った。

目を見つめながら言う。


「素直にしないと後悔するよ? 昨日の今日で。まだ痛いでしょう?」

「っ・・・・・・・」


確かにまだ痛みがある。

その上に叩かれる恐怖があることも確か。

しかし、図星を指されて、仁絵はまた悪い癖が出た。


「よけいなお世話なんだよっ!!」

「(あ゛~っ あのバカ・・・)」

「おっと・・・・・・・・・・・柳宮寺。」


その瞬間、仁絵はまた拳を風丘の顔に向かって放っていた。

どうしようもなくなると手が出るのは仁絵の悪い癖だった。
惣一までも呆れるほどのその行為。
その拳を受け止めて、風丘は仁絵を睨みつけた。


「よーく分かりました。柳宮寺はそんなに泣きたいんだね? 

ただでさえ罪状はケンカだけじゃないのに・・・。
昨日の今日だからって手加減するのも考えたけどやめた。」


「うぁっ、ちょっ・・・・」


言うが早いか、風丘は掴んだ仁絵の腕を少し乱暴に引っ張り、

ソファーに座るとそのまま仁絵を膝の上に引き倒した。
掴んだ腕は背中に縫い止め、手早く履いている物も下ろしてしまう。


「とりあえずケンカの分は惣一君と同じ30回。

でもその後謝んないとケンカの分も終わらないからね。」


厳しい声でそう言うと、一発目を振り下ろした。


バシィィィンッ


「・・・・・んっ・・・・・・」

「全く・・・・昨日あんなに痛い思いしたのに懲りないの?」


バシィンッ バシィンッ バシィンッ バシィンッ


「っ・・・・・んっ・・・・・ぅっ・・・・・」

「惣一君は仲良くしようとしてくれたんでしょう? それをなんで突っぱねるの。
柳宮寺だって仲良くしたくないわけじゃないでしょ。」


「・・・・・・・・・」


バシィィィィンッ バシィンッ バシィンッ バシィンッ バシィンッ


「ぅっ・・・・・っつ・・・・っ・・・・・・」

「(すっげぇ・・・全然声出さねぇ・・・・)」


惣一が感心するほど、仁絵は声を全くあげず、耐えていた。声を押し殺し、
ただ涙だけをポロポロと零している。

そう、この前と同じように。


バシィンッ バシィンッ バシィンッ バシィンッ バッシィィィィンッ

バシィンッ バシィンッ バシィンッ バシィンッ バッシィィィンッ


「んっ・・・・んぅっ・・・・・っっ・・・・ぅっ・・・・」

「ほら、返事は? それにそんなに息詰めてるともたないよ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「はぁ。(苦笑)」


あまりに無言で耐え続ける仁絵に風丘も思わず苦笑した。

さすが、だてに『女王様』と呼ばれていない。
そのプライドの高さは本物だ。


「(なんでこんな綺麗に泣くんだよ・・・・ バカじゃねぇの・・・)」


いつも自分たちが泣いてわめいて叫んで暴れて・・・

クールな夜須斗すらそうだというのに、
ここまで耐えるなんて意味が分からなかった。
いくらプライドがあるからと言って、ここまで痛みを耐え続けられるのか?
自分は最初にされたときから無理だった。


バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ

バシンッ バシンッ バシィィンッ バシィィンッ バシィィィンッ


「・・・・・・・・っ・・・・くぅっ・・・・んんんっ・・・っ・・・・・」

「・・・・はい、30。ごめんなさいは? 

言わないなら1ダースずつ増えるよ?」

「・・・・・・・・・・・」

「まだこれ以外に俺以外の授業まともに受けなかったのと、

先生に暴言吐いた分があるんだよ?
ここで意地張っても後大変だよ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


無言を貫く仁絵。風丘は息をつくと、


「・・・・ほんとにお馬鹿だねぇ・・・。」


風丘は本当は分かっていた。

この前と同じ状況なら、仁絵だってそろそろ崩落していただろう。


ただ、今は惣一がいる。

それが仁絵を素直にさせない原因なのだ。

だが、このケンカの分は惣一の前で謝らせなければ意味がない・・。

風丘がそう思って、また手を振り上げたときだった。


「もういいって・・・・。」

「え?」


服を整えた惣一が、立ち上がってそう言った。目を丸くする風丘。


「お前・・・・バッカじゃねぇの。泣くときまでカッコつけかよ。」

「・・・・・・・」

「さっすが『女王様』だな。

俺風丘にケツ叩かれてそんな耐えられたことないし。」

「・・・・・・・」

「惣一君・・・・?」

「いつもこんなむかつく奴にケツなんか叩かれて、

泣き声なんてあげるもんかって思うんだけどな。」

「むかつく奴って・・・・」

「結局無理。気がついたら泣いてわめいて、叫びまくってる。

『ごめんなさい』ってな。」


苦笑いする惣一。


「・・・・だから・・・何?」


やっと言葉を発した仁絵。その声は震えている。


「だから?って・・・・んー・・・やっぱお前すげぇよ。

さっきのケンカだって、俺あんなマジでやって負け気味だったの

かなり久しぶりだったし。」

「・・・・・・・・・・」

「頭だってめちゃくちゃいいしさ。

風丘はダメだって言うけど、あのばばぁにあそこまで言えるし・・・
あれ、聞いててめちゃくちゃ気持ちよかったぜ。」

「惣一君!」


「っいいじゃん、そんくらいっ・・・・

俺さ、短気だし喧嘩っ早いからすぐ突っかかるかもしんねぇけど・・・その・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「夜須斗とも仲いいじゃん? 

つばめや洲矢もきっとOKするし・・・・
俺らと・・・その・・・つるまねぇ? 

仲間に入る、なんて、んなたいそうなもんじゃねぇけど・・・。」

「惣一君・・・・・。」


照れくさそうに言う惣一に、風丘が感動の声をあげる。


「・・・・・・・・・・」


「ま、なーんか様子見てて長引きそうだったから先に言っちまいたかっただけっ
風丘~ 俺、もう良いだろ? 

ちゃんとケツも冷やしたし、この部屋に長居なんてしたくないっつーの!」

「えっ、でもまだ柳宮寺・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・つるんで・・・やってもいい。」


「え?」「おっ」


「さっきは・・・・悪かった。」

「ほら! 謝った! 『ごめんなさい』じゃないけどさ、

女王様が謝ったんだぜ、いいじゃん、それで!
つーか、俺はそれでいい! だからケンカについてはおしまいっ」


「え、う、うん・・・・」


珍しく惣一の勢いに押される風丘。


「じゃあ仁絵! 仁絵でいいよな! 

明日、夜須斗と一緒に学校来いよ、途中で俺らも一緒に行くから!

あ、あと残りのもがんばれよ! 

俺は悪くないと思うぜ、あのばばぁの事は!

あー、そんな睨むなって風丘!」


ハイテンションで部屋を出て行く惣一。

そして、部屋を出る時こう言った。


「あ、あともう俺いなくなるから、思う存分泣いていいからな!」


「クスッ・・・・」
「っぅ・・・バカ・・・・・」


知ってか知らずかそんなことを言って去っていく惣一に、
思わず笑う風丘と呟く仁絵。


そして、仁絵にとっての第2ラウンドが始まる・・・。











「さぁ、お馬鹿さん。第2ラウンド、始めるよ。」


「っ・・・・・・・・・・・・・」


惣一が出て行くのを見届けると、

風丘は膝の上で小さく震えている仁絵にそう告げた。


バシィィンッ バシィィンッ バシィィンッ


「ぅっ・・・ぇっ・・・・ふぇぇっ・・いたぁぃっ・・・・」


3連打に、いとも簡単に仁絵の涙腺は崩壊した。

『惣一が居る』という、

仁絵のプライドを支えていた唯一の理由がなくなり、

前日と同じように仁絵は人が変わったように泣き出した。


バシィィンッ バシィィンッ バシィィンッ バシィィンッ バシィィィンッ


「ふぁぁんっ いたぁぁぃっ・・やだぁっ・・もうやだぁぁっ・・やめてよぉっ・・」


「ダーメ。まだ言うこと言ってないでしょ。終わらないよ。」


昨日はその変わりように驚かされた風丘だが、もう動じない。

狙ってるのか無意識なのか分からない(恐らく後者だろう)
仁絵のすがるような泣き声をあっさりかわすと、風丘はまた手を振り上げた。


バシィィィンッ バシィィィンッ バシィィィィンッ


「うぁぁぁんっ! もうしないぃっ・・・ごめっ・・・なさっ・・

けんかっ・・・しないからぁぁっ・・・」


「ふぅ・・・・・・・・・しかたない。ケンカのぶんはこれでいっか。」


「・・・・おしまい?」


それを聞いて、真っ赤な目を風丘に向ける。

泣きじゃくってもその綺麗な顔は変わらず、ともすれば誘惑しているような風景だ。


「・・・・・・・いけません。まだお話ししなきゃいけないこといっぱいあるんだよ。」


「ふぇ・・・・」


きっぱり風丘がそう言うと、仁絵の目からじわっと涙が溢れ出る。

しかし、風丘は目と同じく、

いや、それ以上に真っ赤に腫れているお尻に手を置いて、

次のお説教を始めた。


「今日の授業、俺の授業以外一日中寝てたでしょ?」


「ふぅぇっ・・・・・・」


「寝てたでしょ?」


バシィィィンッ


「ふぇぇぇっ!・・・寝てましたぁっ」


「寝てるってのはサボってることと一緒だよ。

それに、俺の授業は寝ないなんて・・・ずるいことしないの。」


バシィィィンッ


「いったぁぁぃっ・・・・分かったっ・・・分かったからぁっ・・・」


「ほんとに分かったの? 

だいたい柳宮寺は授業内容が分からないわけじゃないんだから、

ちゃんと受けなさい。
少しぐらいの授業態度の悪さとか、

うとうとするくらいなら夜須斗君とか他のみんなもあるから大目に見てあげるけど、
最初から寝倒すなんて完全授業放棄は許しません。
次、先生方から報告されたら、

その報告された回数×20回、お尻ペンペンだよ?」


「やだぁぁっ・・」


「だったらお約束。いーい?」


バシィィンッ


「ふぁぁんっ・・・はぃぃっ・・」


「あともう1つ。仁科先生に暴言吐いたでしょ?」


バシィィィンッ


「たぁぁぁぃっ・・・はいたぁっ・・・」


「惣一君は喜んでたけどそれもダメ。

自分の立場悪くするだけだよ? 

もう先生に対してひどい暴言は吐かないこと。お約束は?」


バシィィィンッ


「はいぃっ・・・・できますっっ・・・」


「・・・・・よし、じゃああと最後の3発。

惣一君の前で謝れなかったお仕置き。いいね?」


ここまできてなんて非情な。仁絵はただ泣くだけ。


「ぅぇぇぇぇっ・・・・」


「い・い・ね?」


「ふぇっ・・・・」


仕方なくコクリと首を縦に振る仁絵。

しかし、風丘はそれでは満足しなかった。


「お返事は?」


バシィィンッ


「うぇぇぇんっ・・・はぁぃっ・・・」


「よし! 行くよ。」


バシィィンッ バシィィィンッ バッシィィィンッ


「うぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」


「よし、おしまいっ 頑張ったね~」


風丘はそう言うと、大泣きの仁絵を抱き起こして、そのまま抱っこする。


「ふぇぇぇぇっ・・・ばかぁっ・・・痛すぎっ・・・」


仁絵は風丘の首に手を回してしがみつく。

そんな仁絵の頭をポンポン叩いてあやしながら、風丘は言った。


「当たり前でしょ。授業は寝倒す、先生に暴言は吐く、ケンカはする、

あげく謝らないで散々意地張って・・・。
ほんとにおバカさんなんだから・・・。」


「うるさぃぃぃっ・・・・」


「はいはい。それにしても、惣一君たちのグループ入るんでしょう? 

これからお仕置きされることもないとはいえないし、
惣一君達くらいには、その本性見せ・・」


「やだっっっっ」


即答の仁絵。あまりの子供っぽさに風丘は吹き出す。


「クスッ そーですか。まぁ、お仕置きされなきゃいいんだしね。
さ、ほら、お尻冷やさないとでしょ? いったんソファーに・・・」


「やだ。」


ピトッとくっついて離れない仁絵。いったい精神年齢はいくつなんだろうか・・?


「でも離れてくれなくちゃお尻冷やせないよ?」


「あとでいい。」


「もう~~~ 仁絵君はお仕置きの時よりお仕置きの後が大変だなぁ・・。」


風丘は苦笑しながらも、仕方なくそのままだっこして髪を撫でたり、

背中や頭をポンポンと叩いたりと、
まるで赤ちゃんを相手にするかのように仁絵をなだめた。




そこから仁絵が泣きやんで、そのまま泣き疲れて眠り、

やっとソファーに寝かせてお尻を冷やし、
再度起こして何とか帰らせた頃には、日もとっぷり暮れていたのだった。