夏休み直前の学校。
五人組はいつものように屋上にたまっていた。
「夜須斗~ 5時間目なんだっけっか?」
「厚化粧ばばあの数学。」
「うあ~~ たりぃー・・・・なぁ、ばっくれねぇ?」
「ダメだよ、ばれたらまたお仕置きされちゃうよ?」
洲矢が「もう!」と言いながら注意する。
「まぁ、あのばばあの数学じゃあ、
ばっくれてぇってのも分からねぇでもねぇけど・・・」
「確かに~」
仁史やつばめが少し同情する。
数学担当は、
1年2組担任の仁科 日美子(にしな ひみこ)という30半ば、
ばりばりの女教師で、
自分のクラスの生徒をかなり依怙贔屓し、
その上生徒からも人気がある風丘(とその友人)を
嫌っているともっぱらの噂なのだ。
その為、惣一たち1年5組の数学の授業は最悪だった。
もともとこのクラスは文系の生徒が多いのか、
数学の平均点が1年生のクラスの中で一番良くなかった。
それを引き合いに出し、
「たまたま」数学の平均点一番の自分のクラスと比べて
お説教をするのが恒例で、
夜須斗のように出来る生徒には触れず、
惣一のように勉強の苦手な生徒をいびるのがお得意だった。
とにかく、数学がクラスを通して苦手なのに、
風丘の担任のクラスということも相まって、
数学は1年5組の中で、最も不人気な授業だった。
特に惣一は目をつけられているようで、
毎回のように何か言われるのだ。
「ほら、あと5分で始業だけど。
遅刻なんてしたらそれこそあのばばあの思うつぼなんじゃない?」
「ちぇっ・・・しゃーねーな・・・」
元気のない惣一を含め5人は、授業のため、屋上を後にした。
授業は、いつも前回の復習問題から始まる。
ここで基本問題ではなく、一筋縄ではいかない応用問題を出し、
数学が苦手な生徒に抜き打ちで答えさせ、
答えられない生徒を含め、クラス全体をいびるのだ。
「さぁ、前回の復習から始めるわよ。今日はこの問題。」
プリントを配りながら、仁科が持っていた指し棒で黒板を指し示す。
「・・・・・・・の時、XとY、それぞれの変域を求めよ。
これを・・・・そうね、新堂君。」
「(・・・そーら来た)」
「前に出てきて解きなさい。」
「・・・・・・」
「新堂君? まさか分からないのかしら? これは前回の復習なの。
ちゃんと授業を聞いて、理解していれば3分で解ける問題のはずよ。」
「・・・・・あっ、そう。悪ぃけど、俺は分かんねぇ。
つーか、分かんねぇこと知ってて指してんだろ? 趣味悪・・・
夜須斗とか指しゃいいじゃん。3分どころか、1分で解けんじゃねぇ?」
「いいや、30秒だな。」
夜須斗が少し笑みを浮かべながら答える。
「・・・だとさ。」
クラス全員が「そうだ、そうだ」という雰囲気になる。
しかし、
「今は吉野君じゃなくて新堂君。あなたを指したのよ。」
と仁科は言う。
すると、惣一の中で何かが切れ始めたのか・・・
「・・・・そーかよ。じゃー言わせてもらうけど、
俺はあんたが出した問題、
どっかのわけわかんねぇ国の言葉に聞こえんだけど。
そもそもXとYってどれ? 変域とか意味不明。
それに、こう思ってんのは俺だけじゃないカモだし。」
まくし立てるように言い切った惣一に、仁科は眉をひそめながらも、
「そうなの、みんな?」
とクラス中に確認する。
その問いに、おそるおそるながらも首を縦に振る生徒が十数名。
それもそのはず、この復習問題は前回、
最後の授業で言葉だけ触れ、解き方など詳しいことは全くやってないのだ。
「後は教科書を読んで、自分で問題を解きなさい」と言われたものの、
授業で何の解説もないのに、
数学苦手な生徒に教科書だけで解けというのはいささか無理のある話。
しかし、仁科はそんなこと気にもとめずいつものようにお説教を始めた。
「全く・・・ 前回触れた内容でしょう?
家で各自問題を解くように、と指示も出したはずよ。
それなのに、理解してない子がこんなにいるなんて・・・
レベルの低さに呆れるわ。
わたしのクラスだったら絶対無いわよ、こんなこと。」
「今はてめーのクラスの授業じゃねぇだろ。」
惣一がほぼキレかけて発言する。
「お黙りなさい。だいたい、分からないにしろ、
授業中にいきなり、教師に向かってあの態度は何?
風丘先生は目上の者に対する態度も教えてくださらなかったの?
ああ、そういえば風丘先生はあなたたちにため口を許してらっしゃるそうね。
先生がそんなだから、あなた達みたいな生徒ができるのかしら。
小学校から折り紙付きの問題児だったあなたの担任なんて、
荷が重すぎたのね。」
立て続けに風丘を非難するようなことを言われたとき、
ついに惣一がキレた。
机の上にあった配られたプリントを丸め、仁科に投げつける。
「なっ・・・・」
「人の担任の悪口言ってんじゃねーよ! このばばあ!
授業の半分はてめーのクラスの生徒の自慢と
俺らクラスと担任の悪口じゃねーか!
くっだらねぇ、こんな授業、受けるだけ無駄だ!」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
惣一は、そう吐き捨てると教室を出て行ってしまった。
「惣一・・・」
つばめが心配そうに後を追おうとする。
「よせ。これ以上騒ぎ広げたら、後で困んのは風丘だろ。」
「でも・・・・」
「先生、もう授業半分過ぎてるんじゃない?
とりあえずその問題は惣一の代わりに俺が解くよ、『30秒』で。」
夜須斗が笑みを浮かべながら自信たっぷりにそう言った。
飛び出していった惣一を、目撃していた人物がいた。
それが風丘だ。
授業中の1年3組の前をふてくされた様子の惣一が通ったのを、
ふと廊下に目をやった風丘が見たのだ。
「紫式部と同じ平安時代、
随筆『枕草子』を著したのが清少納言・・・・・(ん? 惣一・・・君?)」
「・・・・先生?」
「ああ、ごめんごめん。
それでこの2人はライバル関係にあって、すっごく仲が悪かったんだ。
お互いの日記に悪口を書いたりしてね。」
「「「「「「へぇぇぇ~~」」」」」」
「(今授業中なのに・・・また何かあったな・・・)」
惣一はと言うと、当然ながら行くところもなく、屋上で座り込んでいた。
そして、今更ながら、飛び出していったことに対して少し後悔していた。
「あ~~~っ! 文句ぶちまけるだけで止めときゃ良かったかぁ・・・・
飛び出すのはやり過ぎだよなぁ・・・・
チクショー、まーた風丘にケツ叩かれんじゃん・・・・」
最近、何をするにも風丘のお仕置きに対する恐怖が先走り、
以前よりいたずらや悪事を働くことが少しだが減った。
しかし、今日はそれを忘れるほどにキレてしまった。
元来、短気で頭に血の上りやすい惣一は、
一度キレると簡単におさまらないタチなのだ。
そのころ、授業は終わり、風丘は早々に教室に戻ってきた。
授業中も、出て行く惣一の姿を目撃してから、
気になって少し上の空で授業をしてしまった。
「あっ、先生来たよ!」
洲矢が風丘の姿に気づき、夜須斗を呼ぶ。
「風丘!」
「夜須斗君! 授業中、廊下で惣一君見たんだけど・・・」
「それがさぁ・・・・・」
夜須斗は、ここまでのいきさつをかいつまんで説明した。
「・・・・・なーるほど。そういうこと・・・・学級委員!
確か、学級会を開いて欲しい、って
主任から連絡入ってたから、6時間目はそれをやって。
終わっても俺が戻って来なかったら、
掃除・帰りの会も適当にやっててくれないかな?」
「「はい。」」
「じゃあ、後は任せるよ。」
風丘はそう言うと、教室を出て行った。
屋上。
惣一は、戻るタイミングを失い、悩んでいた。
「これからどうすっかな・・・・戻るに戻れねぇし・・・・」
戻れば確実に風丘に叩かれに行くようなものだし、
かといって誰にも見られずに帰るのは不可能に近い。
ここにずっといるわけにもいかないし・・・・
そんなことを惣一が思っていた時だった。
「やーっぱりここにいた。探したんだよ? 惣一君。」
風丘が屋上に現れた。
「か、風丘!」
「話はゆーっくり部屋で聞こうかな。行くよ。」
「・・・・・・・」
「ほら、立って。それともお姫様だっこで行きたい?」
「だ、誰が!」
惣一は慌てて立ち上がり、
風丘はそれを見るとちょっと笑って、部屋へと歩き出した。
部屋につくと、風丘は
「座って。」
と、惣一にソファーに座るよう促した。
自分もソファーに座ると、
「さて、だいたいの事情は夜須斗君から聞いたよ。
仁科先生の授業でキレて、散々怒鳴ったあげく、教室飛び出したんだって?」
「や、夜須斗がそう言ったのかよ?」
「んーん。ちょっと脚色♪」
「・・・・・・」
「ほんとはちゃんと聞いたよ。
仁科先生が自分のクラス贔屓っぽいこと言って、
いらっとして惣一君が怒鳴って、
その後俺の悪口みたいなことになったら、キレて教室飛び出したって。」
「・・・・・ん。」
「まぁ、ここだけの話。
仁科先生のちょっと贔屓っぽい、ってのは結構噂として広まってるからね。
別に驚いてないよ。
それにしても、お馬鹿だねぇ、惣一君。
せっかくクラスの悪口っぽいところは怒鳴るだけで・・・まぁそれも問題だけどさ。
耐えたのに、俺の悪口のところなんかでキレちゃって。
惣一君だって言ってるじゃない。
俺のこと、意地悪だ、とか最低だ、サド教師とか・・・・。」
「俺の悪口とあのばばあの悪口が一緒だってんのかよ!
違ぇだろ! あのばばあのには「あくい」・・・?がある!
俺らのとは違う!」
「・・・・・・うん。知ってる。分かるよ。言いたいこと。」
風丘の冷静な相づち。
それに余計いらだったのか、
勢いに任せて惣一は思いの丈をぶちまけていた。
「・・・・っ 風丘は悔しくないのかよ!?
イヤじゃないのかよ!? 自分のことくそみそに言われてんだぜ!?
自分の受け持ったクラスのことだって!」
「・・・・別に。」
「なっ・・・!」
どんなに怒鳴っても冷静な態度を崩さない風丘に、
惣一はいっそう驚きと苛立たしさをあらわにした。
そんな惣一を見ながら、
風丘は口を開き、ゆっくり言い聞かせるように話し始めた。
「別に良いよ。自分のことは他の人がどう思うと勝手だもの。
いちいち他の人の目なんて気にしてないよ。
特に、俺の場合、お仕置きするような教育方針だし。
それに、クラスのことだってそう。
他の人・・・まぁ、今回は仁科先生だけど。
少なくとも、その人よりは自分のクラスのこと、生徒のこと、
分かってるし、知ってるつもりだよ。
だから、自分よりクラスのこと知らない人に、
クラスのこと言われたってどうとも思わない。
その人より、自分の方がクラスにいる時間は長いし、
みんなと喋ってる時間も長いしね。
そこに関して自信、プライドは自分なりに持ってるよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・あんたってすげぇ。」
「・・・・・・そう? オトナなら、みんなできるんじゃない?
まぁ正直、悪口言われて百パー平気、なんて人ほとんどいないと思うよ。
大概、どっかでカチンとくるときだってある。
でも、そこでキレるかその感情を押し殺すかがオトナと子供の差だね。
そんなことでいちいちキレてたら、仕事なんかできないよ。
仕事していく上で、合わない人ってのは必ず1人や2人いるしね。
つ・ま・り! こーいうことでキレちゃう惣一君は、
まだまだ『お子様』ってことだよ。」
風丘はそう言って、惣一のほっぺを突っつく。
「う、うるせぇ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さて。『新堂』。」
風丘が、突然表情を変え、惣一に向き直った。
しかも、呼び方が名字に変わっている。これはもう・・・。
「それにしても、今日はいろいろやったよねぇ?
まず先生に対しての言葉遣い。
いくら嫌な先生だからって、『ばばあ』はないんじゃない?
その上、人に向かってモノ投げて。
しかも授業飛び出しちゃうし。ぜーんぶ悪いことだよね?
悪い子はどうなるんだった?」
「・・・・・・・っ」
惣一は顔を赤くした。
想像しただけで恥ずかしいんだろう。
「分かってるみたいだね。じゃあ・・・・」
風丘はソファーから立ち上がると、
ピアノの椅子を引っ張ってきて、そこに座り、膝を叩いた。
「今日は新堂がまだまだお子様だってことが再確認されたし。
自分で脱いでここまで来てもらおうかな。」
「なっ・・・・! だ、だれがんな恥ずかしいことするかよっ!」
思えばいつも強制的に膝に乗せられ、強制的に脱がされていた。
自分からやる、なんてことは初めてだ。
「早く。回数増やされて・・・・・道具使われたくなかったらね。」
「ううっ・・・・・」
「見てるのは俺だけなんだから早くしな。」
「・・・・・・・・・・・・」
「じゃあ分かった。新堂はそんなに厳しくされたいんだ?
物差しで100叩き、そのあとお尻出したまま1時間ぐらい立ってる?」
「そ、そんなの・・・」
「だったら早くしな。
・・・・・・・・仕方ないなぁ、だだっ子なんだから。
完全に脱げとは言わないから、
膝まで下ろして、俺の前まで来なさい。それならできるでしょ?」
風丘に散々脅され急かされ、ハードルも下げてもらって、
ようやく覚悟を決めたのか、
惣一は準備万端の風丘の前まで行くと、
制服のズボンのベルトを外し、ホックも外した。
そして下着ごと膝までやっとのことで下ろし、風丘の横に立った。
「・・・まぁ、良いでしょ。よくできました。」
「うわっ」
風丘はそう言うと、グイッと惣一を引っ張り、膝に乗せた。
いつもはソファーでのお仕置きだから、
お尻が少し突き上がるだけだが、今回は普通の椅子でのお仕置き。
頭が床ぎりぎりまで下がり、
足は宙にぶらぶら浮いているような状態になった。
「・・・んしょっと。」
「や、やめろこの体勢・・・やだっ」
その上、風丘は足を組んだ。
お尻の位置は更に上がり、惣一は風丘に抱えて、押さえててもらわないと
地面に頭から激突してしまいそうな格好になった。
「頭に血が上っちゃうから、とっとと行くよ。
まぁ、この体勢、いつもより痛いから、30で許してあげる。
その代わり、思いっきりだからね。ほら、行くよ。いーち。」
風丘の手がふりあがった・・・・
バッシィィンッ
「ってぇぇぇぇっ」
乾いた、かなり大きい音。
しかも、その音相応に、かなりの威力だった。
「悪口や贔屓に対して怒りたくなる気持ちは分かるよ。
それは正しい感覚だから別に怒ってない。」
バッシィンッ
「ったぁぁぁっ 怒ってないんだったら・・・は、放せって・・・・」
「まだ終わってないでしょ。
・・・・でも、だからって先生に対して暴言吐いたり、
授業中にいきなり飛び出してっていい、なんて理由にはならないの。」
バッシィィンッ
「ぎゃぁぁっ 」
「もう少し我慢することを覚えなさい。」
バッシィンッ
「あああああっ」
「この先こんなことでいちいち騒ぎ起こしてたら、
何回授業放棄になるか分かんないじゃない。」
バッシィィンッ
「いてぇぇぇっ だってっ・・・悪口言われたらっ・・・むかつくじゃんかぁ!」
バッシィィィンッ
「うぁぁぁっ!」
「だから、悪口に対して『むかつく』とか思うことに対して怒ってるんじゃないの!
そうやって思ったことをすぐに口に出して、
ふて腐れて授業飛び出してっちゃうことに問題があるんでしょ?」
バッシィィンッ
「くぁぁっ!」
「ちょっとは我慢しなさい、って言ってるの。」
バッシィィンッ
「ったぁぁぁっ!・・・・無理だって・・・俺短気だし、喧嘩っ早いし・・・・」
「そんなこと、4月の終わりぐらいから知ってるよ・・・
何も、全部飲み込めって言ってるわけじゃないでしょ?」
バッシィンッ
「んんんっ!」
「時と場合を考えなよね。
もし不満がたまったら、夜須斗君たちとかにぶちまければいいじゃない。
皆、聞いてくれると思うよ?
思ったことをすぐ口に出して。
そうやったら、結局損するのは自分だって分からない?」
風丘は、お仕置きを続けながらお説教をする。
「とっととやる」と言いながら、ペースはすごくゆっくりで、
痛みが広がってから次が来るし、
体勢のせいもあり、惣一のお尻はもう真っ赤、といえるぐらいになっていた。
バッシィィンッ
「ふぁぁぁっ」
10発に到達する頃、さすがの痛みに惣一は泣きそうになってしまった。
それでも、今更泣いたからってどうにかなるわけではもちろんない。
風丘の平手は止まらず、
また惣一のお尻に炸裂する。
バッシィンッ
「ったぃぃっ!!」
「ねぇ、これから先、もっと嫌な人とか事とかあるんだよ。
ちょっと悪口言われたぐらいで、
ここまで大騒ぎにしないの。 感情をコントロールすることを覚えなさい。
分かった?」
バッシィィンッ
「あぁぁっ!」
「分かったの?」
「ふぇっ・・・・・ふぇぇ・・・・」
少し威力の強い一発が降ってきたとき、ついに泣いてしまった。
しかし、もちろんそれで風丘の態度が変わるわけではない。
だいたい、今まで何回も風丘は惣一たちを泣かせてきてるんだから。
バッシィンッ
「やぁぁぁっ 痛いぃぃっ・・・」
「お返事は? どうしたのかなー?」
バシィィンッ
「わ、分かったぁ! もうしないっ・・・しないからぁ・・・」
「今回のこと、反省してる?」
バッシィィィンッ
「うわぁぁぁんっ」
「こら。泣いてばっかりないで、ちゃんとお返事。聞いてるんだよ?」
バッシィィンッ
「したぁ! してるってぇ・・・・・」
「そっかぁ・・・じゃあ、後は残りの14回、
ちゃーんと受けて身に染みなさいね。」
「や・・・やだぁっ もう無理ぃっ・・・ご・・・ごめんなさいぃっ・・・」
「・・・・・・うーん・・・ごめんなさい、って
ちゃんと言えたのは偉いんだけどねぇ。。
・・・・・本当は、もうちょっと厳しくするつもりだったんだけど。
しょうがない、軽いのの連打にしてあげるよ。」
「ふぇぇっ・・・数・・・減んないの・・・?」
「それはダーメ。ほら、行くよ。」
風丘がそう言った瞬間。
バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ
バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ
「いたいぃぃぃぃっ!」
「はい、さーいご。」
バッシィィィンッ
「ふわぁぁぁぁんっ・・・・・!!」
「はい、おしまいっ。ほーら、もういいよー」
「ったぃぃぃっ・・・・」
「あらら、もう・・・しょうがないなぁ・・・・」
風丘は、苦笑しながら惣一を抱き上げると、
ソファーにうつぶせに寝かせ、
アイスノンで赤くなったお尻を冷やした。
「んんんっ・・・」
最初は涙を拭きながら、
痛そうに顔をしかめていた惣一も、しばらくすると落ち着いた。
そんな惣一を見ながら、ふと風丘がこう漏らした。
「まぁ、こんなこと言っちゃダメだけど、ちょっと嬉しかったけどねー。
俺の悪口に対して怒ってくれたこと。」
それを聞いた惣一は、顔を真っ赤にしながら大声で言った。
「か、勘違いすんじゃねぇ!
あんたが悪口言われてると、
その生徒の俺らも悪口言われてるみたいじゃん・・・だから・・・その・・・」
「照れちゃって~ 可愛いなぁ、やっぱり。」
「き、気持ち悪ぃからそーいうこと言うな!!
だいたい、そう思ったんだったらこんな叩かなくていーじゃねーかよ!!」
「あ、そんなこと言えるんだったら、
さっきの『ごめんなさい』は口からでまかせだなぁ?」
「ち、ちげぇよ!!」
「クスッ・・・やっぱりお子様だねぇ、惣一君は♪」
「うるせぇ!!」
結局、終始もてあそばれてばかりの惣一だった。