この「10」は、今後の話の展開に必要な短編、いわばつなぎのストーリーです。
かなり短い上、スパシーンが全体を通してほとんどありませんので、

ご了承の上読んでいただければ幸いです。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



6月最後の金曜。

惣一たち五人はすることもなく、ぶらぶらと校内を歩いていた。


「暇だよなー。なんかすることねーのかよ・・・」

「ないからこうやって歩いてるんじゃん。」


そんなとき・・・前方から、童顔の一人の男が歩いてきた。

背丈は夜須斗より少し高いくらいで、見た目は高校生ぐらいだ。
惣一たちは気にもとめなかった。

この中学は中高一貫で、

職員室や図書室、保健室は合同。(その分フツーより大きい)
高校生と校舎内で出くわす、というのはよくある話だからだ。

すると、その男がなんと話しかけてきた。


「ねぇねぇ、君たち。職員室って、どこか知らない?」

「「「「「は?」」」」」


職員室の場所を知らない在校生なんているわけない。


「ひっさしぶりに来たら忘れちゃってさぁ。

はーくんにでも会えたらいいんだけど・・・・」

「「「「「はーくん!?」」」」」

「ん? なに、はーくん知ってるの?」

「そりゃそうだよ。俺の生徒だもの。」

「「「「「!? か、風丘(先生)!?」


気がつくと、背後に風丘が立っていた。

そして、この風丘を「はーくん」と呼ぶということはそれはつまり・・・・


「風丘の同級生!?」

「そ。7月から、スクールカウンセラーになる

波江 海保(なみえ かいほ)。よろしくっ☆」

「そーいうこと。全く。

自転車放置してなんにも言わないで校内に入ってきたりしないの。 

魅雪が時間になっても来ないって文句言ってたよ?」

「あ、やば・・・・ 事務室寄れって言われてたっけ・・・」

「寄れも何も職員玄関の真ん前なんだよ? 

なんで・・・・・・・・ってもしかして。

生徒玄関から入ってきたの?」

「エヘヘ・・・・」

「もう。靴は?」

「適当に入れちゃった・・・・」

「・・・・校長や教頭、それと魅雪に来たって知らせてくるから、

靴を職員玄関に移動して。」


5人はこのやりとりを呆然と聞いていた。

この2人が同級生だなんてまるで思えない。

まるで子供の波江が、

『スクールカウンセラー』なんてのだなんて

とうてい信じることなんてできない。


「か、風丘ちょっと待てよ! マジで同級生なのかよ!?」


惣一が、さっさと職員室へ向かって歩き出した風丘の後を追って話しかける。


「え? ああ、童顔だからねぇ、海保。

でも、本人の前でそんなこと言っちゃダメだよ? 

怒って拗ねるから。」

「『拗ねるから』って・・・・」

「精神年齢低いし、俺や光矢や森都や魅雪と違ってひねくれてないから、

君たちにとっては話しやすいんじゃない?
すぐに『お仕置き』なんては言わないと思うよ。」

「マジ!?」


つばめがちょっと嬉しそうな声をあげる。

風丘の同級生・・・というのは、

たいがい自分たちにとってマイナスになる人物ばかりだったからだ。
雲居や霧山は容赦なくお仕置きする、という人物だったし、
氷村は叩くことはまだないが

ちょっとしたことで執ように風丘にお仕置きするよう直談判にくる。


「・・・・・ああ、でも報告はすると思うよ? 海保、俺には逆らわないから。(ニッコリ)」

「・・・・・・・マジ?」


同じセリフだが、だいぶトーンダウンした。

報告されるんなら、氷村と同じ。
結局は『お仕置き』につながるんだから。

つまり、波江も5人にとっては要注意人物になるわけで・・・・
5人(特に惣一とつばめ)はがっかりした様子で教室へと戻っていった。


ちなみに、翌日の朝礼で波江が紹介され、

晴れて波江海保はこの学校の一員となったのだった。





☆作者より☆

以下、ほぼ回想で進み、会話文がほとんどありません。

ご都合主義満載で読みにくく、

スパシーンもありませんので、ご理解の上読んでいただけると幸いです。





(雲居回想)


ほんま、偶然ってのは怖いなぁ。


はーくんの務めとる学校で俺が校医になって、
そこに魅雪やもりりんや挙げ句の果てに海保まで来てしもうて。
昔のいたずらグループ再結成、て感じやわ。

地田も金橋もおるしなぁ。


俺らがそろってこの学校に入学したんはちょうど10年前やな。

俺らは小学校んころからの遊び仲間で、

結構いたずらとかやってたんや。
あの頃から俺らはーくん大好きでなぁ。

いたずらとかやるときは、

まずはーくんの安全を確保する、ってのがセオリーやった。
今思ったら、なんでここまで、ってぐらい必死にかばってたで(^_^;)

まぁ、一人ぐらい首謀者ばれとらへん方が

立ち回りやすいってのもあったんやけど。

俺らの努力のかいもあって、

5月の終わりぐらいまで、俺らのグループがほんまは5人で、
しかもリーダーがはーくんやなんて誰も気づかなかったんやで。
このころから鬼ばばあ言われとった地田や金橋にもな。


せやけど、1年の、6月の頭ぐらいやったかなぁ。

どっかのアホが告げ口したかなんかで、
『あのいたずらグループにはまだ他に主犯格がおる』って情報が

先生の内で広まったらしいんや。

ほんで、いきなり地田がはーくん以外の俺ら4人を生徒指導室連れ込んで、

「他に仲間がいるんじゃないのか?」って聞いてきたんや。

せやけど、それであっさり口割ろうなんて、

まぁもちろん思わへんやろ?
それで俺らは「知らん」って黙り決め込んだんや。 
すごいやろ、ここまではーくんのこと守ろうとしてた・・・って

今考えたらちょっとアホみたいやけどな。(^_^;)

せやけど、その情報の入手源がずいぶん信用できる奴なんか、

地田も全くおれなくてなぁ・・・。

ほんで、地田が「お前たちは痛い目見ないと

こんなことすら言えないんだな。」って言いよったんや。・・・・・最悪やろ?


その日は一部の先生たちの用事で授業早く終わって部活やっとって、

俺らは部活始まってすぐ呼ばれたから、

あの地田のお仕置き受けながら

下校時刻のタイムオーバーまで持ってくんはそーとーしんどいし・・・
どないしよ・・・ってみんなで困っとって、

その間も地田が怒鳴って急かすもんやから、
しゃーないって思って、腹くくって準備しとったら・・・


「・・・もういいよ、光矢、みんな。もう十分。盛大にネタばらしといこう。」


ってはーくん部屋に入って来たんや。びっくりやろ? 

その場にいた全員がぽかーんや。
特に地田は、そんときまだ優等生で通っとったはーくんがこんなとこに来て、

俺らに「もういい」なんて言うから、頭の上 ?が飛び回ってたなぁ。

ほんではーくん、


「先生、先生が掴んだ情報、

『あのいたずらグループにはまだ主犯格がいる』。

その『主犯格』っていうのは僕のことです。
あとは僕が全部話しますし、お仕置きも受けますから、

みんなは今日はもう帰してあげてもらえませんか?」


って状況飲み込めてない地田にたたみかけるように言いよったんや。


「風丘。お前・・・こいつらの仲間なのか?」

「はい。例をあげてみましょうか? 

以前、この4人が休んでサボりだと先生が見抜き、お仕置きしたときありましたよね?
そのとき、1人『早退』がいました。

僕です。2時間目終わりの休み時間に保健室に行き、3時間目の途中で早退。
突然の何人も固まっての欠席者に気を取られて、

お気づきにならなかったでしょうけど。」

「・・・・・・・・。」


あんときの地田の顔は忘れられへんわ。

今だったら笑いこらえてたんやろけど、
このころははーくんのこと最優先やから、


「はーくん! 何で来んねや、ばれてもうたやん!」


って焦って言っとった(苦笑)。

そしたらはーくんが、


「あんまり無理しないで、ばれそうになったら言っていいよって言ったじゃない。
もともと、俺はそんなに一人だけ隠れてやることに賛成してなかったんだから。
今だって、俺がこうやって入って来なかったら、

お仕置き受けて、タイムオーバーになるまで待つつもりだったんでしょ?」


そんときは本気で「はーくん、ほんまええ奴や・・・」って思ってた(笑)。

で、それで地田は


「・・・・・・・・・雲居たちはもう行け。風丘は覚悟できてるんだろうな?」

「・・・・はい。その情報が出回ったって聞いたときから・・・

こうなることは分かってましたから。」

「はーくん・・・」

「大丈夫だから。ちょっと怖いけど・・・・あとでまた、ね。」


俺らが口々に心配して声かけたけど、はーくんにウインクしながらそう言われて、

何も言えんようになって、そのまま生徒指導室を出た。


でもやっぱ心配で、終わるまで4人で生徒玄関に座り込んで待っとったなぁ。

待っても待っても帰って来ぇへんし・・・・・

で、結局はーくんが玄関に来たんは、2時間ぐらい経った後やった。

さぞ大泣きしたんやないか・・・って思うやろ? 

せやけど、はーくん、全然泣いた後ないんや。

俺らは、毎回、涙目になるのに・・・。


「はーくん・・・泣かなかったん?


って俺が聞いたら、


「うん。途中から金橋先生も来て、

最後にスパートかけられた時は、さすがに目潤みそうになったけど・・・。
ああ、でも叩かれた方は真っ赤だよ? 今までのツケがあったしねぇ・・・・。」


って。せいせいした感じで言いよって。

ほんま、はーくん化け物やぁ・・・って思ったわ。

でもまぁ、

こんときからはーくんも交えて堂々といたずらできるようになって、
地田や金橋につかまるんはハンパなく増えたけど、

さらにグループの結束強まって、結果的には良かったんやけどな(^_^;)





そんな、俺たちの過去の話。。