風丘から厳しいお仕置きを受けた後。
洲矢は、まだ少し赤い目を右手でこすり、
左手でお尻をさすりながら
保健室へと向かっていた。
「・・・・・・痛い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・雲居先生ー
終わったよぉ 次の人、風丘先生が呼んでる。」
「洲矢! おい、どんだけ叩かれた!?」
いの一番に惣一が聞いてくる。
「んー・・・・」
「こら、質問は後や後。次・・・せやな。夜須斗。お前行きや。」
「俺?・・・・・わかった。」
「ほな、頼むで。もりりん。」
「はいはい。じゃあ、行きますか。」
霧山は、夜須斗をつれて今洲矢が歩いてきた廊下を歩いて行った。
「洲矢は、ベッドにうつぶせになってケツだせや。
冷やさな痛いやろ。」
「うん・・・・・・。」
洲矢はベッドに横になると、
少し恥ずかしげにしながらもズボンと下着をずらした。
「あ~ 真っ赤っかやなぁ。 はーくん、いつもながら厳しいわぁ・・・」
「え~~ 洲矢でこんな真っ赤なのぉ!?
僕たちどんだけやられるんだよぉ」
つばめが洲矢のお尻をのぞいて大声をあげる。
「なぁ 洲矢ぁ 何発叩かれたんだよ?」
惣一が聞くと、
「ん・・・・先生は・・・30発って言ってた・・・・」
「さ、さ、さ、30!? マジぃ!?」
洲矢の答えに、惣一は声をあげた。
「こら、今日は手当が大変やわ・・・」
雲居はそう呟いた。
所変わって風丘の部屋。
霧山は「それじゃあ、よろしくお願いしますね。」と言うと、
とっとと夜須斗を置いていってしまった。
「おいで。吉野。」
「・・・・・。」
夜須斗が無言でソファーに座っている風丘の前に立つ。
「ゲームセンター・・・・行っちゃいけない場所ってことは
知らない・・・はずないよねぇ。」
夜須斗が無言で頷く。
「止めようともしなかったの?」
「いや、喧嘩は止めた・・・」
「でも、ゲームセンターに行くこと自体は止めてないでしょ?
それに喧嘩も始まっちゃったあとは参加したみたいだし。」
「いや、だって始まっちゃったもんは・・・
関係ない洲矢は逃がしたつもりだったし。」
「人呼ぼうとは思わなかったわけだ。」
「うっ・・・それは・・・」
「呼んだらゲーセン行ったことばれて、
後々面倒なことになるからー、とかよけーなこと考えたんでしょ?」
図星をつかれて、夜須斗の目が少し泳ぐ。
「それに、吉野は部活もサボったね?
なのに吉野、個人戦出るらしいじゃない。しかも先輩とのペアで。」
「それは・・・・。」
「ペアの動きの確認とか出来なくて、
その先輩相当困ったらしいよー。」
「うっ・・・・・・。」
「・・・・・・・・行っちゃいけないとこに行ったこと、
喧嘩のこと、部活サボったこと、迷惑&心配かけたこと・・・50発ね。」
「・・・・・・・っ。」
「ほら、さっさと始めるよ。」
「うわっ・・・」
夜須斗が黙っていると、
風丘が無理矢理夜須斗の腕を掴み、膝にのせた。
何度もさせられているはずのこの体勢だが、それでも恥ずかしい。
ズボンと下着をおろされると、
プライドの高い夜須斗はそれだけでも顔を真っ赤にした。
「じゃあ、50発。しっかり反省しよーねー」
バッシィィンッ
「っつ・・・」
バシィンッ バシィンッ バシィンッ バシィンッ
「っく・・・・っつ・・・んんっ・・・」
さすが叩かれ慣れてきている上に、
そう簡単に声を上げることを自身のプライドが許さないためか、
夜須斗は5発そこらでは声をあげない。
バシィンッ
「いっつ・・・」
「ゲーセン行っちゃいけないって知ってて・・・」
バシィンッ
「ったぁ・・・」
「どうして止めようとしないかなぁ・・・」
バシィンッ
「っぁっ・・!」
「吉野の意見、グループの中でも重要視されてるでしょ?」
バシィンッ
「くぅっ・・・」
「そこで止めてれば、みんなこんなお仕置きされることなかったのに・・・」
バシィンッ
「ぃいっ」
「どうなのかなー?」
バッシィィンッ
「いったぁっ・・・!・・・だって・・・
ノリ悪いとか・・・口うるさいとか・・・言われんの・・ヤじゃん・・・」
バッシィィィンッ
「ああああっ!」
「悪いことしてノリ悪いとかの問題じゃないんだよ。
まったく・・・そうやってミエはって、
よけーなことばっかり頭にまわって、それで一緒に喧嘩参加するとか・・・
困ったさんなんだから・・・」
「うるせぇよっ・・・」
バシィンッ
「いぁっ・・・!」
「それと、今日一番叱んなきゃなんないこと。
球拾いがイヤ、とかならまぁそれでも悪いことだけど・・・・まだしも、
先輩とペア組んでるのに部活休むなんて、
どういうつもりだったのかなー?」
バッシィィンッ
「ってぇぇっ! うっ・・・くっ・・・ふぁっ・・・・」
「(あー、泣いちゃった・・・ケッコー早かったカモ。。)
ほら。答えなきゃいつまでたっても終わらないよー?」
バシィィンッ
「うぁぁっ 別に・・・俺いなくても・・・
っく・・・ ストロークとかの練習なら・・・できるしっ・・・」
バッシィィンッ
「あぁぁぁっ」
「あのねぇ。吉野。これは元テニス部員として言うけどさぁ。
ダブルスってペアのコンビネーションが大事なんでしょ。
確かに個々の技術もそれはそれで必要だけど、
いざ本番ってなって、ペアの息バラバラだったら
いくら技術力あってもダメじゃない?」
「・・・・そう・・・だけど・・・・」
「とにかく! ペアの先輩にも迷惑かけたんだよ?
それも含めて、もうちょっと反省しよっかー」
「ふぇっ・・・・もう・・・いいよっ」
「吉野がよくても、俺は良くないの。」
バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ
「いったぁぁっ もういいってば! っく・・・わかったから!」
そんな夜須斗の訴えもむなしく、
残り5発までの30数発を連打され、夜須斗は更に泣いた。
連打の前はなるべく大声で泣き声をあげるのはよそう、
悲鳴はなるべくあげないように・・・などと考えていたが、
連打が終わった頃は、
そんなこと考えられる状況ではとてもじゃないがなくなっていた。
「・・・・もういいじゃん・・・ふぇっく・・・ひっく・・・もう・・・反省・・・したよ・・・・」
「ほんとかなぁ? じゃあ、なんて言うの??」
「・・・・・・・」
バッシィィンッ
「ひぃぃっ ご・・・・ごめんなさい・・・・」
「あともう一個。」
バッシィィンッ
「うぁぁぁっ も、もうしません・・・・・」
「よし、オッケー。じゃあ最後ね。。」
そう言うと、風丘はおもむろに足を組み、
バッシィンッ バシィンッ バシィィィンッ
「!?~~~~~~~~」
最後の足を組み、
その上緩急をつけた叩き方にはあまりの痛さに声を出せなかった。
「はい、もういいよーっ・・・てすぐ立ち直れるわけないっかぁ・・・」
風丘は、自分の膝の上に疲れ果てて突っ伏している夜須斗を見て呟いた。
いつもは終わったら恥ずかしさからか
とっとと膝から降りようとする夜須斗がそれをしないとは、
今日のは相当効いたようである。
「ほら、夜須斗君。立てる?
とりあえず服はなおさなくていいから、ソファーまで行きな。」
「・・・・・・うん・・・」
何とかソファーに横たわる。
熱を持ったお尻には、風丘が冷やしておいたタオルがのせられた。
のせられた瞬間は、しみるのか顔をしかめる。
10分後ぐらいには落ち着き、服を整えていた。
「これからはちゃんと止めてよね。
じゃないと今回みたいにまとめて何人もやんなきゃなんなくなっちゃうじゃない。
『ノリ悪い』とか惣一とかつばめに言われたら、
俺がみっちりお仕置きするしねっ」
「んな告げ口みたいなことしないし・・・」
「そーゆーの、告げ口とは違うと思うんだけどなぁ・・・・ま、いっか。
じゃあ、ペア組む先輩にはちゃんと謝るんだよ?」
「はっ?」
「『はっ?』じゃないよ。言ったでしょ?
迷惑かけたんだよって。ちゃんと謝んな。
後で聞くからね。もし謝ってないなんて聞いたら・・・・」
風丘は、そう言いながら夜須斗の腰を抱えようとする。
「わ、わかったよ! 謝るから・・・・・・
あ、次の奴、呼べばいいんだろ? 俺、もう行くから!」
その脅しの効果はてきめんで、
夜須斗は顔を青くして部屋を出て行った。
保健室。お仕置きの終わった夜須斗が、報告に来た。
「雲居ー 俺終わった。 次・・・」
「おう、お疲れやな。よっしゃ、今、はーくんから内線あったんや。
あとの二人は罪状にあんまし違いあらへんから、
まとめてよこせってなぁ。」
「「ええっ!?」」
「て、ことで。もりりん、二人まとめて頼むわ。」
「はいはい。ほら、行きますよ、二人とも。」
「や、やだよ、なんで俺らだけ二人!?」
「お仕置き一緒なんてぜ~~~ったいやだからねっ!!」
「文句なら葉月にお言いなさい。僕が聞く筋合いはありません。
素直にいかないって言うなら、引きずって連れて行って、
葉月にそのことも報告しますが?」
こう言われたら仕方が無く、二人はうなだれながら風丘の部屋へと向かった。
「葉月。まとめて連れてきましたよ。いいんですか、これで?」
「うん。ありがとー その二人、ほっとんどお仕置きの内容に大差ないし、
めんどくさいし、一気にやっちゃおーって思って。」
「僕は別にかまいませんが、彼らは不満があるそうですよ?
ここに来る前に保健室で・・・・」
「わ~~~~~~っ!!」
「言っちゃだめぇっ!」
「なーに? どーせ行きたくないって抵抗したんでしょ。
そんなの隠そうとしたって無駄。お見通しだからねー
入ってきたときのふてくされた顔。わかりやすすぎだよ、二人とも。」
「「・・・・・・・」」
「おや、そうでしたか。それでは僕は用無しのようですね。失礼します。」
「うん。ありがと。森都。巻き込んじゃってごめんねぇ」
「かまいませんよ。それじゃ。」
そう言うと、森都はさっさと帰って行った。
「さて、二人とも・・・・。今回は、ずいぶん悪いこといっぱいしたねぇ?
ゲームセンターって行っちゃいけないって決まりのところにいったこと、
喧嘩したこと、ああ、それに喧嘩の原因は二人らしいねぇ?
不良っぽい高校生のおにーさんたちと言い合いになったって・・・」
「うっ・・・そ、それは・・・・」
「・・・・全く。まーだあるよ。
二人して、部活今週だけで相当な回数サボってること、
それに校内に入れようとしたら逃げようとするし、
森都の話だとここに来るのにも素直じゃない・・・。
迷惑、心配もいっぱいかけてるよねぇ? さーて何回にしようかなぁ・・・。」
「「・・・・・・・・」」
二人は、冷や冷やしながら何回になるかの宣告を待っていた。
風丘の口調からすれば、
簡単に許されようなことは断じてないとは分かった。
それでも、一発違うだけでだいぶ違う。
何回かということは、叩かれる側にとってとても重要なことなのだ。
「夜須斗君が50でしょ・・・。うーん・・・・・70回かな。」
「「ええええええっ!!」」
「なーに? 文句あるの? でもさぁ、フツーに考えたら、これぐらいでしょ?
夜須斗君が50で、二人は夜須斗君と違って逃げたりしたんだから。」
「「・・・・・・」」
「さーて、じゃあ始めますか。新堂、太刀川。」
風丘が名字で呼んだらお仕置き開始の合図。
二人は絶望的な気分だった。
「でも、いっぺんに二人膝にのせるのは、
さすがに俺でも無理なんだよねぇ・・。
どっち、先にやられる? それとも、ソファーに手ぇついて2人同時?
ああ、でもそれだと暴れたり体勢崩したらダメだけど。。」
「「・・・・・・・」」
そんなこと聞かれたって、自分から「俺からでいい」なんて言う奴いるか!
二人は内心そう思いながら、顔を見合わせた。
だからといって、体勢を崩さないで耐えられる自信もほぼ0に近い。
「・・・・・じゃあ2人いっぺんにやりますか。
お説教の内容、ほとんど一緒だから、
2回やるのもめんどくさいしねー」
と、ちょっと自分勝手な理由を言いながら、
風丘は勝手に決めて、
2人の腕をひき、ソファーの背もたれにつかせた。
「この手、離したら余分に叩くからねー」
そう言いながら、今度は2人のズボンと下着を下ろしてお尻を出す。
そのとき、風丘は不思議に思った。
その2人のお尻の真ん中辺りが、薄く桃色に染まっている。
「これ・・・どうしたの?」
「べ、別に・・・」
「この叩き方・・・光矢じゃないね、森都でしょ。」
「・・・・・・・・」
「ふーん、ちょっとはお仕置きされたんだー。ま、だからって回数減らさないけど。」
「「(減らさないのかよっ!))」」
「それにしても、叩き方って性格でるね。
集中的に真ん中叩いてる。痛いでしょ? 森都ってばドSだから・・・」
「「(あんたも十分ドSだっ!!))」」
「じゃ、俺からもいくよ? 1個っつ、ちゃーんと反省しよーねー」
バシィンッ バシィンッ
「いったぁぃっ」 「ってぇぇっ」
「ゲームセンター、行っちゃいけないとこでしょ。知ってたの?」
「・・・・・・・」 「・・・・・・・」
バッシィンッ バッシィンッ
「やぁぁっ」 「あああっ」
「どうなのかなー?」
「そ、そうだよぉ・・・」 「知ってたよ・・・知ってて行った!」
「あ、そう。」
バッシィィンッ バッシィィンッ
「ああああんっ」 「いってぇぇっ」
「知ってて行くとか、一番ダメじゃない。まぁ、君たちのことだから
今回初めてじゃないんでしょ?」
バシィンッ バシィンッ
「そ、そうだよっ!」 「しょ・・・小学校の頃からっ」
バッシィィンッ バッシィィンッ
「いやぁぁっ」 「うああぁぁっ」
「・・・全く・・・。とにかく、それは決まり破ってんだから、
保護者なしだったら、もう禁止。いいね?」
「・・・・・・」 「・・・・」
「い・い・ね?」
バッシィィィンッ バッシィィィンッ
「うぁぁぁんっ・・! ふ、ふぇっ・・」 「ぎゃぁぁぁっ!・・・うっ・・ひくっ・・」
「ほら、泣いてもダメ。聞いてるんだよ?」
「わ、わかったぁっ」 「もう・・・行かねぇよっ」
バシィンッ バシィンッ
「ふぇぇんっ」 「いぁぁっ」
「ホントに?」
「ほ、ほんとぉ!」 「マジで行かねぇって!!」
「・・・よろしい。じゃ、次。
それに、ただ行くだけだったらこんなにやらなかったのに、
喧嘩したよねー? しかも2人が原因だって聞いたけど?」
バシィンッ バシィンッ
「きゃぁんっ した! したよぉ!」 「ひぃぃっ 高校生にちょっかい
出されてっ・・誘いにのったっ!」
「夜須斗君、止めようとしたって言ってたよ?
でもそのころにはもうお互い興奮してたって・・・
とにかく、喧嘩はダメ。
特に高校生となんかやって、自分たちの体格とか考えたの?
森都が、自分が行った頃にはものすごく劣勢で、
もし自分が通りかかってなかったら洲矢君もやられて
大惨事だったって言ってたよ?」
バッシィンッ バッシィンッ
「ふぁぁぁんっ もうしないからぁっ」 「くぅぅぅっ もう喧嘩しないっ」
「(お、『もうしない』が出た。でももういっこのほうがなぁ・・・
そっちのほうが出させるの大変なんだよねぇ・・・)
次。部活何回サボるつもりなの?
新堂も太刀川も、1年なのにメンバー登録されてるらしいじゃない。
それなのに部活でないで、練習サボって。」
バッシィィンッ バッシィィンッ
「やぁぁぁんっ ごめん・・ごめんってばぁ」「ひぃぃっ ごめん・・ごめん!」
「顧問の先生や、先輩・・・いろんな人に迷惑かけてるんだよ?
それで本番、何か失敗したりしたらどう責任とるの?
ちゃーんと部活に出てても、
実力の問題で出れない人、いーっぱいいるんだよ?
なのに、選ばれた君たちが部活サボって、
本番出て、ミスったの見て許すと思う?」
バシィィンッ バシィィンッ
「ふわぁぁぁんっ」 「やぁぁぁっ」
「感じ悪いでしょ? ウザイって思うでしょ?
自分たちばっか良い思いして、それで許されるわけないよね。
その上お仕置き素直に受けようとしないしさぁ・・・・」
バッシィィィィンッ バッシィィィンッ
「いやぁぁぁぁっ ごめんなさいぃっ」「いだぁぁぁっ ご、ごめんなさい・・・」
「・・・・・反省してる?」
「し、したぁっ!!」 「すっげぇしたからっ!!」
「そっか・・・。」
これで終わる・・・? 2人がそう思ったときだった。
「ねぇ・・・。『反省してからが本当のお仕置き』って知ってる?」
風丘から発せられた、お仕置きを受けてる身としては耳を疑うような言葉。
「・・・・ふぇっ?」 「な、なんだよそれ・・・」
「まぁ、簡潔に言うとまだまだお仕置きは終わんないってことだねっ♪」
「「えええええええっ!?」」
「な、なんでぇ!? 『ごめんなさい』って言ったっ!」
つばめが目を潤ませて必死で反論する。
「だからやっと反省したってことでしょー? 『反省してからがお仕置き』。
それに、70発って言ったよねぇ? まーだ12発しかやってないんだよ?
半分どころか、三分の一どころか、五分の一ぐらいしかいってないんだよ?
ここで終わるわけないでしょー。」
風丘が恐ろしい事実をさらっと告げる。
「ま、まさか残りきっちり叩く気・・・・」
「もっちろん♪」
惣一のおそるおそるの問いに、ノリノリで答える風丘。
「・・・・ん~でもねぇ・・・時間結構かかるし、選択タイム☆」
「「・・・・・はぁ?」」
「一つめ! このあと平手で60発叩かれる、
「ちょっと数増えたけど一発一発の負担は少なく、時間はかかるよ」コース☆」
「「・・・・・」」
「二つめ! 物差しで30発叩かれる、
「数はちょっと増えて、時間も減るけど痛みはビミョーに倍増したよ」コース☆」
「「・・・・・・」」
「三つめ! 靴べらで10発叩かれる、
「そーとー痛いけど、手っ取り早くておすすめ☆」コース☆」
「さ、最後だけビミョーになんかちがくない?」
つばめが小声でつっこむが、そんなの聞いてもいない。
「回答時間は30秒です。レディー・・・」
「「えっ、ちょっ・・・」」
「ゴォ!」
2人は困惑した。
平手で回数増やしてまで、しかも長時間叩かれたくはないし、
物差しで30発なんて、想像しただけでぞっとする。
だからと言って、靴べらなんかで叩かれたら・・・・・死ぬんじゃないか。
そんなことを考えているうちに・・・・
「はい、しゅーりょ~ 結局決まんなかったねー。じゃー、三つ目で♪」
風丘は、もう靴べらを持ってきてスタンバイ。
ただ単に、早く終わらせたいだけのようだ。
すると、つばめが火のついたように泣き出した。
「やだぁぁ! 靴べらはやだぁっ!」
「お、おいつばめ?」
惣一が心配するぐらいの大泣き。
しかし、風丘は・・・
「あぁ、つばめは光矢から靴べら経験あるんだっけ。
まぁ、大丈夫だよ。」
「(な、何が大丈夫だよ・・・・)」
「ほら、じゃあ新堂から行こうかな。ソファーに手ついて。」
「・・・・マジでやんの・・・・」
「追加、ほしい?」
「や、やだいらないぃっ!」
惣一は、飛びつくようにソファーの背に手をついた。
「お説教も終わったし、時間とりたくないから連続で行くよ。はい。」
ビシィィンッ ビシィィンッ ビシィィンッ ビシィィンッ ビシィィンッ
ビシィィンッ ビシィィンッ ビシィィンッ ビシィィンッ ビシィィンッ
「ぎゃゃゃぁぁぁぁぁっ!!!!」
惣一は、絶叫してその場にしゃがみ込んだ。
風丘は、その様子に目もくれず、
大泣きしているつばめの腕を引っ張り上げる。
「ほら、これで終わるんだから。とっととやるよ。太刀川。」
そう言いながら無理矢理ソファーの背に手をつけさせる。
その間も、つばめは大泣きして抵抗している。
しかし、今の今までお仕置きされ、体力を消耗している上に
この体格差。無情にも、同じように靴べらは振り下ろされた。
ビシィィンッ ビシィィンッ ビシィィンッ ビシィィンッ ビシィィンッ
ビシィィンッ ビシィィンッ ビシィィンッ ビシィィンッ ビシィィンッ
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!」
つばめも耳をつんざくような大声をあげ、その場にへたり込んだ。
風丘は靴べらを置くと、
今までしていたどこか怖い顔はどこへやら、穏やかな優しく微笑むと、
2人を一人はソファー、一人は小さなベッドにうつぶせにさせ、
水を絞った濡れタオルを2人の真っ赤に火照ったお尻にのせた。
「ほら、よく頑張ったね。良い子良い子。」
まるで赤ちゃんのような扱いだったが、
今回ばかりは抵抗できず、されるがままになっていた。
それどころか、ぼさぼさになった髪の毛を
撫でるように整えてもらっていた時、
気持ちよかったのか2人ともなんと寝息を立ててしまったのだ。
「・・・・全く。お子様なんだから・・・」
風丘が笑いながら見ていると、
「はーくん、時間かかりすぎや。
夜須斗と洲矢、帰らしてもうた・・・って何や、
2人寝とるんか?」
「うん。まぁ、そーとーやったしねぇ・・・泣き疲れと、叩かれ疲れ?(苦笑)」
「喧嘩して、お仕置きとなったら抵抗してるときには
想像つかない姿ですねぇ。」
「精神年齢低すぎやろ、海保みたいや。」
「まーたそんなこと言って。
そーいうこと言うから、海保が拗ねるんじゃない。」
「事実でしょう、それは。」
「全くお気楽なもんやなぁ・・・
ケツしばかれた教師の面前でよだれ垂らしながらおねんねできるとは・・・」
「僕たちの頃は、
とにかく早く目の届かないところに行こうと必死でしたものねぇ。」
「ほんまやで。俺らの頃よか、比べものにならへんほど幸せもんやわ・・・」
「ああ、そーいえば、海保、スクールカウンセラーとして赴任するらしいよ。」
「おやおや。魅雪もいますし、勢揃いですか。」
「地田も金橋もおるし。嫌やな、無理にでも思い出しそうや。」
「アハハ・・・・」
寝息を立てる2人を見ながら、
和やかに談笑する大人組だった。