ここは、保健室。

そこから聞こえてくるのは・・・・


「いったぁぁぁぃっ!」


というつばめの悲鳴だった。といっても、お尻叩きをされているわけではない。

傷口に消毒液を塗られているだけなのだ。


「いたいぃっ もっと優しくやってよっ!!」

「ぎゃあぎゃあ騒がんといて。

だいたい、手当してもらえるだけ、ありがたく思ってほしいわ。

お、こっちにも傷が・・」

「いったぁぃっ!」

「光矢、さりげなくそれでお仕置きしてるんじゃないですか?」

「ピンポーン♪」


森都の問いに、笑顔で光矢が答えた。


「えええっ!? それでこのあと叩くつもりっ!?」


涙目になりながらつばめが聞く。


「せやなぁ・・・。逃げたお仕置きはせんとなぁ・・・

せやかて俺は手当もあるし・・・
そうや! 面倒もかけられたことやし、もりりん、お前やってや。」

「えっ? 僕ですか?」

「ええええっ それは・・・ヤダよぉ・・・・」

「別に僕はかまいませんよ? でも出来ますかねぇ・・・」

「出来るやろ。あんだけ昔から腹黒ドSキャラやったんやから。」


それを聞いて、


「(雲居に「ドS」って言わせるってどんだけ「S」だよ・・・)」


と、夜須斗は一人つっこんでいた。


「よっしゃ、つばめ終わったで。ほんなら、とっととやられて来ぃや。」

「ええ~~」

「じゃあ、来てください。」


森都がつばめの手を引き、そのまま腰を抱え込んだ。


「えっ、えっ、このカッコなの・・・?」

「ええ。今回はそんなにいっぱい叩くつもりありませんし。

あ、それとも膝の上で大泣きする恥ずかしいカッコのほうがいいですか? 
それならそれでも僕はかまいませんけど。」


「や、ヤダ! このカッコの方で・・・いい・・・」


「はい。それじゃあ5発で。ああ、忘れてた。脱がさなきゃダメでしたね。」


森都はそう言うと、つばめが履いていたズボンとパンツをスルッと脱がした。


「思い出さなくて良かったのにぃ~」

「ほらほら、よけいなこと喋ってないで。いきますよ、はい。」


ピシィッ


「いったぁぁぁぃっ!」


風丘とも、雲居とも違う痛み。鞭のように鋭い痛みが、つばめのお尻に襲った。

森都の動きは小さいが、スナップをきかせた平手打ちは、

ピンポイントにつばめのお尻のちょうど真ん中にヒットした。
そこだけが、一発だけなのにほんのり赤く腫れている。

ピシィッ


「やぁぁぁっ!」


1発目と全く同じ場所にヒットする。
そこだけがまた少し赤みを増す。


風丘は、いろんな叩き方を駆使して叩き、緩急もつけるため、

いろんな痛みがおりまざって、慣れることできず、痛い。
雲居は、とにかく力いっぱい叩くし、

手が大きいため、お尻全体に痛みが広がり、痛い。
しかし、この森都の、ある一カ所をピンポイントに叩く叩き方も、

前者に負けず劣らず痛かった。

そして、腰を抱えられた状態で、膝の上より避けやすいのに、暴れやすいのに、
それでも狙った場所を外さない森都がとても恐ろしく感じた。


ピシィッ


「いたいぃぃっ! その、その叩き方やめてよぉっ!」

「まだ三発ですけど? 

それに、力の弱い僕が、まんべんなく叩こうとしても効かないでしょう?
だったら同じ場所を何回も叩かないと。こうやって・・・」


ピシィィィッ


「あぁぁぁんっ」

「ほら、最後ですよ。はい。」


ピッシィィィィッ


「やぁぁぁぁぁぁっ! あぁぁん・・・・」

「全く・・・これしか叩いてないのに・・・・

こんなことで泣くぐらいなら、喧嘩なんてしないことですね。」


つばめは、このあとまた風丘に叩かれるのかと思うと、心底恐ろしかった。


の後、惣一も雲居のお仕置き代わりの手当と

森都のお仕置きをきっちり受けた。
ただ、惣一はつばめと違い、なんとか泣くのだけはこらえた。

それでも、悲鳴はしっかりあげたのだが。



夜須斗は手当だけで、こちらは我慢強く、

顔はしかめたが声はほとんど漏らさなかった。






所変わって風丘の部屋。

ここでは、洲矢が風丘にお説教されていた。


「ゲームセンター。行っちゃダメなとこって知らなかったのかなぁ?」

「・・・ううん・・・知ってた・・・」

「・・・・ふぅ。やっぱねぇ・・・・・じゃあ、わかってたのになんで行くの?」

「だって・・・いつも惣一たちが行ったときのこと話してて・・・

楽しそうだったから・・・」

「ゲームセンターに行っちゃいけないってのはねぇ、

今回みたいにそういう危ないおにーさんたちに喧嘩ふっかけられたり、
カツアゲされたりするのがあるから行っちゃいけないってことになってるんだよ。
そーゆーこと、佐土原分かってたでしょ?」

「・・・・・・・・・うん。」


風丘に見つめられ、洲矢は消えそうな声でそう答える。

教師に問いつめられ、シラを切り通せるようなタチではない。


「確信犯、かぁ・・・・。・・・・・まぁ、部活サボったわけじゃないし。

行っちゃいけないとこに行った、
人に迷惑&心配かけた、ってとこで30発かなぁ・・・よし。おいで。」

「う・・・・・」


風丘が洲矢を抱き上げる。

洲矢はうろたえた。

洲矢は、こういう完全なお叱りムードで風丘に叩かれるのは初めてだ。
以前の家出騒動でのお仕置きは、

自分から申し出たことでそれなりの覚悟ができていたし、
風丘も元々叱るつもりではあまりなかったから、

「叱る」というよりは「諭す」といった感じだった。


しかし、今回は違う。完全に叱られる・・・・。

そう思うと、洲矢は怖かった。

もともとあまり叱られるタイプではないから、

惣一たちのように、叱られ慣れもしていない。

しかし、風丘はそんなこと全く気にせず、洲矢を膝にのせた。

洲矢のズボンと下着を下ろしたら、


「それじゃ、反省タイム。いっくよ~」


と宣告し、手を振り上げ・・・


バッシィンッ


「んんっ!・・・ったい・・・」


洲矢のお尻の真ん中あたりに一発目をおとした。

洲矢は我慢をするタイプだから、

声をあげたり暴れたりはしない。
それでも、平手の跡がお尻にくっきりついていてかなり痛々しい。


バシィンッ


「やっ・・・・」

「たまにやんちゃしたくなるのはわかるよ?」


バシィンッ


「うっ・・・」

「学校じゃ佐土原、いっつも良い子にしてくれてるしねぇ。」


バシィンッ


「ぃっつっ・・・」

「でも、それとこれとは話は別!」

バシィィンッ


「いたいぃぃっ!」

「ダメってわかってるとこになんでわざわざ行くのかなぁ!?」


バシィィンッ


「やぁっ! 先生痛いぃっ!」

「痛いのは当たり前。 

危ないから行っちゃだめってことまでわかってて・・・」


バシィィンッ


「痛いぃぃっ! 先生、もうやめて・・・・」

「やめない。終わってないもん。 

それで行って喧嘩に巻き込まれて、何かあったらどうするつもりだったの!?」


バッシィィンッ


「いたぁぁぃっ! 先生、ごめんなさいぃ・・・ふ、ふぇぇぇ」


いっそう強くなった平手に耐えられなくなったのか、

洲矢は「ごめんなさい」を言って泣き出した。

もともと洲矢は素直で「ごめんなさい」とすぐに言える。
だが、数を宣告したのにまけるわけにはなかなかいかない。


「森都があのとき助けてくれなかったらどうなってたかわかってる?」


バッシィィンッ


「やぁぁぁっ! ふぇぇっ・・・け、怪我してたぁ・・・」

「そう。そうなったら?」


バッシィィィンッ

「ったぁぁぃっ! ひっく・・・・ん、んと・・・先生たちに・・・

えっく・・・迷惑とか・・ふぇぇっ・・・心配・・・かけるぅ・・・」


「ピンポーン♪ それは・・・?」


バッシィィンッ


「うぇぇぇんっ! わ、わるいことぉっ!」

「またまた正解。だから・・・・・?」


バッシィィィィンッ


「やぁぁぁっ! ごめんなさぃぃっ もうしなぃぃぃっ」

「よしっ。 反省はできたみたいだね~ でも、今日はもうちょっと我慢。
しっかり懲りようね。」

「ふぇぇ・・・もう痛いの・・・やだぁっ」

「言ったでしょ? 最初に30発って。

その数だけはちゃ~んと我慢しよーね。
・・・・よし、じゃあ早く終わらすために連打にしよー!」

「やっ それもや・・・・」


バッシィィンッ


「いたぁぁぁぃっ!」


バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ


「やっ・・・あっ・・・やだぁ! 先生、痛いぃぃっ」


バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ バシンッ


「もうちょっと。あと3発。」

「ふぇっ・・・・や、やだぁ! 先生、もうしないぃ・・・」


そう言いながら、風丘はなんと足を組んだ。


洲矢は最初のお仕置きの時に足を組まれ、

相当痛い思いをしただけあって、この体勢はちょっとしたトラウマだ。
しかも、今まさに連打をされたばかり、熱を持ってジンジンしているお尻に、
足を組んでお尻を高く上げた状態で、平手がふってくるのかと思うと、

洲矢は恐怖でいっぱいだった。

確かにきつめをする、とは宣告されていたが、

まだお仕置き2回目の洲矢にこのお仕置きは、いささか厳しすぎるものだ。

だが、非情にも風丘は手を振り上げた。


バッシィィィンッ


「やぁぁぁぁぁぁっ」


バッシィィィンッ


「いたぁぁぁぃっ」


バッシィィィィィンッ


「!?・・・・・・ふぇぇぇぇぇんっ・・・・」


最後の一発は、痛すぎて洲矢は何も言えず、数秒後に大泣きをし始めた。


「ほら、終わったよーってあらら。そんなに大泣きして・・・」

「だって・・・ひくっ・・・先生が・・・」

「しょーがないでしょ。洲矢君が悪いことするから。

それに、洲矢君は今回、いっちばんお仕置き少ないんだよ?」

「えっ・・・?」

「このあとの方がきついのもらうんだから・・・ねっ」

「でもぉっ・・・ふぇっ・・・痛かったぁ…」

「あー、はいはい。よしよし。痛かったねぇ・・・・」

「・・・・」


子供をあやすような風丘の言い方に、

洲矢は恥ずかしかったが、黙ってお尻を撫でてもらっていた。

冷やしたタオルものせてもらい、10分後ぐらいには
だいぶ落ち着いた。


「よし。もう大丈夫?」

「・・・うんっ。」

「もうあんなとこ行っちゃダメだよー? まぁ、トラウマになったかもだけど。
じゃあ、保健室に行ってて。次の人を呼んでるって伝えて。」

「うん。」


洲矢はちょっと笑って返事をすると、部屋を出て、惣一たちにとっては
地獄行きの言葉を伝言しに保健室へ向かった。