風丘と社会だけを重点的に勉強し望んだ惣一、
いつものようにパーフェクトに勉強をし望んだ夜須斗、
一夜漬けにかけたつばめ・・・・などなど、
いろんな生徒が一斉に取り組んだ中間テストも終わり、
その日の放課後・・
テストの終わりの安心感で、
惣一をはじめいつもの5人は教室でぼーっとしていた。
「あーっ! 終わったぁ~~~!」
惣一は大きくのびをする。
「うるさいって。さっきから・・・・」
夜須斗はテストのことなど忘れたように本を読みながら答える。
「夜須斗みたいに、昨日は余裕で『後は寝るだけ』なんて感じじゃないんだよ、
僕たちはさぁ・・・」
つばめは、昨日の一夜漬けがたたったのか、大きなあくびをしている。
「俺ぁ最初から投げ出してっからな。体育はちっとは頑張ったけど・・・
洲矢は?」
仁史はスポーツ推薦を狙っているのだ。
だからといって、勉強できなくていいというわけではないが・・
「う~ん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかんないや。」
ニコォッと笑いながら洲矢が答える。
このどこか抜けたのが、洲矢独特のペースなのだ。
ただ、ここにはある重要な(であるはずの)ことを忘れている人物が二人いた。
それを思い出させるべく、ある人物が教室に入ってきた。
「新堂君、太刀川君!
今日までには集金出すって約束したでしょ、持ってきたわけ!?」
長髪をゴムで束ね、チェックのシャツとベージュのパンツを履いた、
事務員らしき人がすごい剣幕で入ってきた。
「集金・・・? ・・・・やっべ!」
「僕も・・・・アハハ・・・」
「あんたたちねぇ、もう一週間ほったらかしなのよ! いい加減にしなさいよ、
どれだけあたしがこの取り立てに労力使ってると思ってんの!?」
「そうヒス起こすなよ・・・・」
夜須斗は、本から顔を上げて文句を言う。
「・・・・誰、こいつ?」
仁史が洲矢に聞く。
「事務員の氷村 魅雪(ひむら みゆき)先生。
そっか、仁史って先生とかあんまり興味ないもんね~」
マイペースに洲矢が答える。
そこに・・・
「う~ん、テストの○付けって楽しいけど疲れるよねぇ・・・・
って、あれ?魅雪?」
「あら、葉月!」
「「「「「ええええええっ!」」」」」
親しげに呼び合う二人に、五人は驚いた。
そんなこと微塵も聞いたことはない。
五人が驚いているのも全く気にせず、氷村は怒りを葉月にぶつける。
「ねぇ、葉月のクラスの新堂と太刀川!
どうにかしてよ、もう一週間も滞納してるのよ!?」
「わかったわかった。知ってるよ。大丈夫。だから落ち着いて。
そんなに大声上げないで。大丈夫だから・・・ねっ?」
「ん・・・・・」
「惣一君、つばめ君?」
「・・・・・」
「今日は家に置いてきたの?」
「そ、そうだけど・・・・」
「なら、取りに行っても保護者に迷惑かけないね。
今から20分以内に事務室に届けられなかったら
お尻ペンペン50回。」
「「ええええええっ!?」」
「魅雪の取り立て無視し続けてた罰。
運動部なんだからいいトレーニングになるよ。ほら、もう1分過ぎるよ~!」
風丘の血も涙もない言葉に、二人は転がるように教室から出て行った。
「じゃ、魅雪。たぶん間に合うと思うから。」
「ええ。ありがと葉月。」
氷村も安心したように教室を出て行った。
「なぁなぁ、あいつ、風丘の彼女?」
「・・・・え?」
「『葉月』『魅雪』だって!」
この手の話大好きな仁史が風丘をちゃかす。
だが、当の風丘はポカンとしている。
「何言ってるの? 魅雪は・・・」
「ほら言ったろ。ただの中学時代とかの友達だって。」
夜須斗が仁史に反論する。
だが、風丘のその後の言葉は・・・
「魅雪は『男』だよ?」
「「「ええええええええっ!!!!!」」」
風丘の衝撃的発言に教室にいた3人は大声をあげる。
「だ、だってロン毛じゃん! ポニーテールだしっ」
「俺だってロン毛だし、夏の暑いときは邪魔だから髪束ねるよ?」
「名前「みゆき」じゃん!」
「別に「みゆき」は女の名前って法律で決まってるわけじゃないしねぇ。」
「・・・・女言葉は?」
「あー、魅雪の昔からの癖なんだよね。
オカマじゃないし、ゲイでもないって本人は言ってるけど・・・・」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
衝撃的な事実に、3人はまさに「開いた口がふさがらない」状況だった。
この事実を後々のメールで知る二人はというと、死ぬ思いでダッシュして、
何とか風丘の『お尻ペンペン50回』はまぬがれたのだった。