(夜須斗視点)
「「いったぁ・・・・」」
さっき雲居に引っ張られた耳がまだジンジンしてる・・・
今、俺とつばめは雲居に腕を掴まれて校内を歩かされてるんだ。
つばめは正座の時のしびれもまだ残ってるみたいで、
すごく不機嫌そう・・
「だいたい何でおれと夜須斗が有無を言わさず光矢なのさっ!
別に惣一だって仁史だっていいじゃない!」
「そんなんお前ら二人が一番近くにいたからに決まってるやん。
他に理由なんてあるわけないやろ。」
はぁ!? じゃあ俺たちは雲居の近くにいたから
雲居にお仕置きされることになったわけ!?
・・・・だからといって風丘が良いってわけでもないけど。
「でも、どこでやるつもりなわけ?」
「? 保健室に決まってるやろ。俺が自由に使えんのあそこだけなんやから。」
「保健室って・・・あそこ防音完備・・・」
「な訳ないやろ? 保健室防音してどないすんねん。」
「じゃあ叩く音とか丸聞こえじゃん!」
「安心せぇ。保健室は表通りから一番遠い部屋やし、裏は山や。
まぁ、万が一聞かれたらドンマイやな。」
『ドンマイやな』じゃないだろ! 何だよそれ!
今にも文句を言いそうになったけど、その前に保健室に到着して、
俺とつばめは奥のベッドに、襟掴まれて放られた。
「ったい!」
「った・・・!」
「ほら、時間ないんやからさっさとやるで?
夜須斗、お前正座強いんやったな?」
「え、ま、まぁ・・・」
「せやったらそのベッドの上で正座しとき。最初はつばめや。」
「ええーっ!」
「『ええーっ!』やない! 早よせんと数増やすで?」
「・・・・わかったよぉ・・・」
つばめはもう泣きそうな顔をしながら雲居の前に立った。
俺は言われたとおりにベッドで正座をする。
柔らかいベッドの上だから、さっきのコンクリの上の正座よりはよっぽど楽だ。
「さぁ、やるで。」
「やぁぁ!」
雲居がそう言うと、
へっぴり腰になってるつばめの腕を引っ張って膝に乗せた。
あ、風丘は叩かない手で腰のあたりを上から押さえつけるけど、
雲居は手もまとめて腰の下に手入れて抱え込むんだ・・・
どっちがきついかな・・・って!
こんな悠長なこと考えてる場合じゃないし!
あ、もう全部下ろされてる・・・・やっぱ下ろすのか・・・
しかももう一発目が・・・
バッシィィィィンッ
「いたぁぁぁぃっ!」
えっ? 待ってよ、風丘の時より断然音デカイし!
つばめもう泣き入りそうじゃん!
雲居ってもしかして風丘より怖い・・・?
バッシィィンッ
「やぁぁ!」
「何で子供だけで花火すんねん! しかも学校で!」
バッシィンッ
「ひゃぁっ!」
「あのまま俺が来ぇへんで、火ぃ消えなかったらどないするつもりやった!?
火事になったらどうやって責任とんねん!」
バッシィィィンッ
「ふぇぇぇぇ・・・だって・・・だってぇ・・・」
「だっても何もないやろ、俺らにさんざ迷惑かけおって!」
うわっ もう真っ赤だ・・・まだ回数一桁台ですけど?
あー・・・俺もやられるんだよね・・・
泣きたくないけど、この調子でやられるんじゃ、ぜってー無理・・・
俺がそんなことを考えてるうちに、つばめは20発ちょいで終わった。
威力が強いぶん、風丘みたいに回数は打たない・・・のか?
んで、つばめは膝から下ろされた。下ろされたんだけど・・・
「ほら、つばめ。座り込まんと。まだ終わりやないで。
そこで尻出したまんま立っとき。手は頭の上や。」
「ふぇ・・・やだぁ・・・お尻痛いぃ・・・・」
「やだ、やない。もう一回やられたいんか?」
「や、やだぁ! 立つ・・・立つよぉ・・・」
立たせる!? 本気で!? しかも尻出したまま・・
あー、つばめ本気で泣き入ってる・・・
俺も耐える自信はない・・・
「さてと。次は夜須斗や。足、大丈夫か?」
「別に。このぐらいの時間の正座なら、どうってことないし。」
平然とした口調で言ってみた。
言ってることは本当だ。
俺はつばめがやられてた10分ちょいの時間の正座ぐらい、どうってことない。
でも、平然を装ったのは強がりだ。
本当は俺だってめちゃくちゃ怖い。
声がふるえてんの、ばれないかな・・・
「ほんなら、つばめ見てたやろ。どうするかわかってんなぁ?」
「うっ・・・」
自分からこいってことだよね・・・・
結構それって勇気いる・・・・
でも、結局無理矢理引っ張られるんだし最終的には一緒か・・・
俺は覚悟を決めて、雲居の方に行った。
「夜須斗。お前やろ、いろいろ計画立てたんは。ちょいときつめにいくで!」
「ええっ!?」
きつめ!? きつめって・・・本気で?
俺がちょっとパニクった隙に、雲居は俺をさっきのつばめと同じような体勢にした。
そして・・・
バッシィィィンッ
「んんっ!」
いったぁ~!! やばい、絶対風丘の時より痛い・・・・
「計画立てたのはお前やんなぁ?」
バッシィィンッ
「くうっ! そ、そうだけど・・・・だからってこんな・・・」
バッシィィィンッ
「ひゃぁっ!」
「お前は確かに頭がええ。
せやけどそれをこんなことに使てどないすんねん!」
「別に・・・こんなことになるなんて想定外・・・」
バッシィィンッ
「ぎゃぁっ!」
「想定外やて?
花火振り回したらああなるっちゅうことぐらいちょっと考えればわかることやろ!」
「ううっ・・・それは・・・」
マジで痛い、マジで痛い!
雲居ってストレートに怒るから風丘とは違った意味で怖いし・・・
涙でないようにするのも必死だ。
結局俺はつばめより5発多めの25発ぐらいで終わった。
途中で暴れてカウントされなかったのもあるみたいだけど・・・
「夜須斗もつばめの横に並び。二人とも、そっから10分や。」
「ええっ!? 何でよ光矢! 俺ずっと立ってたよぉ!」
つばめがまた半泣き状態になりながら文句を言う。
そりゃ恥ずかしいもんね、こんなの・・・
「それは夜須斗が最初に正座してた時間の分や。
つばめは屋上の見とったら正座苦手みたいやから、
立つだけでええことにしてやったんや。
ほなら今からつばめは正座にするか? もちろん尻出したまんまやで。」
「ふぇ・・・光矢の意地悪ぅ~!」
「意地悪やて? 元はと言うたら、お前らがあんなことするからやろ!
反省してへんのやったらやり直すか?」
バッシィンッ
そう言うと、つばめを横抱きにして、平手が尻に炸裂した・・・
うわ、痛そ・・・
「やぁぁぁ! わかった、ちゃんと立つからやめてよぉ!」
「ったく・・・」
つばめはもうさっきから泣きっぱなしだ。目が真っ赤だな・・・・
雲居は、俺たちをほっといて仕事始めちゃったし、
この状態で沈黙ってマジで気まずい・・・ 早く終わんないかな・・・・
「よし、そろそろ10分やな。」
雲居がノートパソコンを閉じて、立ち上がった。
つばめが膝で止まってたズボンを上げようとすると・・・
「ちょい待ち。終わりなんて一言も言ってないやろ。」
「「え?」」
つばめとハモった。いや、文脈的にそれってまだやるって・・・・
冗談でしょ?
おいおいおいおい・・・
「仕上げや。こんなことまたされたらかなわんからな。
二人並んで、そこのベッドに手ぇつきや。」
ベッドに手をつく? 膝じゃなくて?
「待ってよ。なんかヤな予感する・・・」
「さすがは夜須斗。察しがええな。仕上げは平手やないで。これや。」
「「ええ~~~っ!?」」
またハモった・・・見せられたのは・・・
プラスチック製の分厚い靴べら・・・って!
マジ!? ほんとにそれでやるつもり!?
「やだやだやだやだやだやだやだやだ!
そんなんでやったらお尻壊れちゃう! 死んじゃう! やだぁ!」
「1回壊れといた方がええんちゃうか?
そうすればしばらくいたずらせえへんやろ。
それに尻叩いたぐらいじゃ死んだりせえへん。俺は医者やで?」
「別にこの期に及んでそんなの使わなくたっていいじゃん・・・」
「俺ははーくんと違て叩き慣れてないから、
これ以上手腫らしたら、明日仕事できへんやろ。」
そう言って雲居は軽く赤くなった手のひらを見せてきた。
だからって靴べらって・・・・・・
「ほんじゃ、さっさとそこのベッドに手ぇつきや。5発。それで終わったるから。」
「うぅぅぅ~」
「・・・・・・・・」
結局、雲居の目に見えないオーラに負けて俺らはベッドに手をついて、
尻を突き出すみたいな恥ずい格好になった。
「いくで。つばめからや。」
ヒュン
ベッシィィンッ
「いやぁぁぁぁっ!」
おいおい! 今、空切る音したじゃん!
ちょ、ちょっと待てよ・・・
「待ったはなしやからな。 いくで。」
「えっ、ちょっ・・・!」
ヒュン
ベッシィィンッ
「いってぇぇ!」
マジで痛い、マジで痛い!
これ5発とかほんとに死ぬって・・・・
「ほら、つばめ2発目や。さっさと立てや。」
つばめはさっきのをくらったあとから、ずっと尻さすってうずくまってる。
そりゃあな・・・俺も手はなさないのがやっとだったし・・・
「立て言うてるやろ!」
「やぁぁぁ! 痛いもん! やだぁ!」
「ったく・・・・しゃあないな、つばめは後や。・・・・てことで夜須斗?
お前、こっから4連チャンや。」
「・・・・・はい?」
や、やめろそんなことしたらマジで・・・!
ヒュン
ベシィンッ
ヒュン
ベッシィンッ
ヒュン
ベッシィィンッ
ヒュン
ベッシィィィンッ
「ぎゃぁぁぁぁっ!」
死んだ・・・・俺は終わった瞬間、その場に崩れ落ちた。
いったぁ・・・マジで無理だ、これ・・・
「ほら! つばめ!」
「やぁぁぁぁ!」
つばめはまだぐずってる・・・・
雲居の機嫌これ以上悪くしてどうするんだよ・・・
って、だからって素直にいけなんて言えないけどさ。
「ったく・・・世話のかかるやっちゃ・・・」
「!? やぁぁぁぁっ!」
雲居はため息をつくと、つばめの腕をつかんで机まで引っ張ってって、
背中を押さえつけた。
まさか・・・
「ほら、いくで!」
ヒュン
ベシィンッ
ヒュン
ベッシィンッ
ヒュン
ベッシィィンッ
ヒュン
ベッシィィィンッ
「いやぁぁぁぁぁぁっ!」
つばめも終わった瞬間、へたり込んで大泣きした。
目が真っ赤だよ・・・俺は大泣きはしてないけど、目潤んでるんだろうな・・・
「ほら、二人ともベッドにうつぶせになれや。ほれ、アイスノン。」
いや、アイスノン投げ渡されても・・・・
雲居って終わった後のフォローが下手だ・・・
仕方なく、ベッドに横になって尻にアイスノンをのせる・・・
ってぇ・・・想像以上に腫れてるし・・・
「ふぇ・・・風丘は・・・こんなに・・・しないのにっ・・・!」
つばめが涙目で雲居に抗議してる。
「そんなん、はーくんが本気ちゃうからやないか。
今回ははーくんもかなーりご立腹やから、
お前らよりひどいめにあってるんちゃう? 惣一たち。」
「そんなのウソ!」
「信じひんでも別にええけど。 今日はもう遅いからそこで寝や。」
「「・・・はい」」
学校に泊めてまで叩く必要あるのか、っていう質問は、
これ以上叩かれたらたまったもんじゃないから黙っといた・・・