ひとりの打者とも対戦せずに勝利投手?(プロ野球の珍しい記録投手編①) | 尾林衡史のクイズブログ

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プロ野球には珍しい記録が数多くありますが、その中で投手にまつわる珍しい記録を取り上げます。

 

 

①対戦打者0人勝利

 

プロ野球で「1人の打者とも対戦せずに勝利投手」が記録されたことは2例あります。

1例目は2000年7月2日、千葉ロッテの小林雅英投手です。

同点で迎えた8回裏の2死1塁の場面で登板すると2球目を暴投、この時に3塁を狙った1塁走者のオリックスのイチロー選手をアウトにしてチェンジ、9回表にチームが勝ち越したために勝利投手が記録されました。

 

2例目は2013年5月3日、東京ヤクルトの久古健太郎投手です。

同点で迎えた8回表の2死2塁で登板し、4球投げたのちに2塁にけん制し、2塁走者の阪神の大和選手をアウトにしてチェンジ、裏の攻撃で勝ち越して勝利投手を記録しました。

 

2人とも対戦打者は0人ですが、0球ではありません。

ちなみに日本では「0球セーブ」は記録されていますが、「0球勝利」はいまだありません(メジャーリーグではあり)。

 

久古健太郎投手とは引退後に私が主催した「スワローズクイズ」のゲスト解説にお越しいただきましたが、非常に誠実な方でした。

 

 

 

②1試合で勝利&セーブ

 

1試合で勝利&セーブは過去に1例のみ存在します。

1974年8月18日の近鉄戦で先発した高橋直樹投手は5回を投げ切って勝利投手の権利を獲得すると6回2死の段階で、いったんサードに守備変更し、中原誠投手がワンポイントリリーフで登板します。

中原投手が抑えてチェンジになると7回から再びマウンドにあがり9回まで投げ切ります。

 

規定により勝利投手とセーブの両方の条件を満たすために、高橋投手には両方が記録されました。

なお、この試合がきっかけで翌年よりセーブの条件には「勝利投手の条件がないこと」という条項が加わったため、ルール変更されない限り史上唯一の記録となります。

 

 

③勝利投手が翌日に変更

 

プロ野球の記録は基本的にその試合に立ち会った公式記録員が決定します。

微妙な当たりのヒットorエラーの判定や、暴投or捕逸などの判定は公式記録員の判断にゆだねられるため主観によって決まるケースがあります。

そのため、その後振り返った際に、その時の公式記録員の判断が適切でないとされて変更されるケースはままあります。

 

しかし、勝利投手が変更されるという非常に珍しい事態が2022年に発生しています。

 

2022年9月13日の阪神戦で、広島は4回表に2点を挙げ、そのままリードを保って6-3で勝利しますが、先発の九里亜蓮投手が4回3分の1で1点を失い、なお1死1、2塁で降板、引き継いだ森浦大輔投手が後続を断ってこの回を切り抜けます。

すると6回から、松本竜也(1回)-ターリー(1回)-矢崎拓也(3分の1回)-栗林良吏(1回3分の2)と継投で逃げ切ります。

 

公式記録員は5回のピンチをしのいだ森浦投手に勝ちを記録しますが、翌日セ・リーグは松本投手に勝利投手を変更、森浦投手はホールドに変更されました。

 

野球のルール上、先発投手が5回を投げ切れず、かつその時点でのリードを保ったまま逃げ切った場合の勝利投手は

 「救援投手が勝投手として記録されるには、その投手が最低1イニングを投球するか、試合の流れ(スコアも含む)の中で試合を決定づけるアウトを奪うこと(攻略)」

とあるため、どちらの投手でもよい(むしろ、この試合においてはもっとも負担のかかった栗林投手でも良いと思われますが、セーブをつけることを優先したと思われます)のですが、1イニング投げた松本投手を優先したようです。

森浦投手は無死の段階でリリーフして1イニング投げていれば間違いなく勝利投手でした。

 

 

クイズに参ります。

テーマは「投手の記録」です。

 

【問題】

① 日本プロ野球の投手の通算記録で最多勝利は金田正一(400勝)、最多セーブは岩瀬仁紀(407セーブ)ですが、最多ホールドは誰でしょう?

 

② 1968年9月18日、阪神の江夏豊投手が当時のシーズン奪三振のタイ記録と新記録を共に王貞治選手から奪った際、わざと三振を奪わないようにしたとされる9番投手は誰でしょう?

 

③ 日本シリーズで、通算19試合ともっとも多く先発投手を務めた阪急の投手は誰でしょう?

 

④ これまでに「新人王&MVP」を受賞している3人の投手は2023年の村上頌樹(阪神)、1990年の野茂英雄(近鉄)と誰でしょう?

 

⑤ 2021年から23年にかけてオリックスの山本由伸投手が投手4冠(最多勝、最多奪三振、最優秀防御率、勝率1位)を記録しましたが、彼の前に達成している投手は誰でしょう?

 

 

【正解】

 

① 宮西尚生…2023年終了時点で393ホールドです。

 

② 高橋一三…これは、江夏投手自身が「タイ記録と新記録両方を王さんから奪う」と公言したため、三振しない球を投げたといわれます(結果はセカンドゴロ)。

 

③ 足立光宏

 

④ 木田勇(日本ハム・1980年)…22勝を挙げ投手4冠を達成しています(ただし、最多奪三振は当時公式タイトルではありませんでした)。

 

⑤ 斉藤和巳(ソフトバンク・2006年)…田中将大投手が2013年に24勝0敗を挙げたときは最多奪三振は金子千尋投手に及びませんでした。