日米の通訳事情はここが違う | カリフォルニア 会議通訳・翻訳会社 EJ EXPERT代表のブログ ザ・トランスレーター

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40歳過ぎて専業主婦からプロの同時通訳者と起業家に転身。会議通訳の仕事、翻訳や通訳スキルの習得、通訳翻訳会社の経営、独自のプロ養成コースなど、北カリフォルニアはシリコンバレーを中心に発信しています。

こんにちは、北カリフォルニアの会議通訳者、EJ EXPERT代表のブラッドリー純子です。

 

来月からまた忙しくなるので気持ちに余裕のあるうちに記事をアップしておりま~すウインク

 

これまで日本やアメリカで日本在住の通訳者とご一緒させていただく機会が多くありました。通訳というのはグローバルな仕事ですし、やはり他国の市場が気になります。

 

そこでよくお互いに情報交換をするわけですね。

 

シリコンバレーにおける視察通訳の様子。カジュアルなプレゼンもすべて2名体制の同通で対応しました。ピンマイクを持っているのは東京在住の通訳者さん。

 

私はアメリカだけではなく、日本国内の通訳会社に登録、またはエージェント間契約を結んでいることもあり、日本とアメリカの通訳事情を多少は把握しているつもりです。

 

すべては書ききれませんが、いくつか私見も交えながらお伝えしたいと思います。

 

日米の通訳事情の違い

 

❶ レートが違う

いきなりですが、日米では通訳料金、通訳者に支払われる通訳レートが異なります。

 

通訳の需要が高い東京、アメリカ西海岸や東海岸を基準に比較してみると、アメリカ国内は最低でも4割程度はレートが高い傾向にあります。つまり例えばの話ですが、日本で通訳者が稼ぐ一日のレートが7万円ならアメリカでは10万円というわけです。

 

考えられる要因としては、やはりアメリカの平均世帯収入が日本より高いこと。また、お金を払ってプロや専門家を雇うという文化が定着していること、その対価はちゃんと支払うという意識が高いように思います。

 

「簡単な内容だから学生とかバイトで通訳できる人いませんか?」という問い合わせは間違っても来ません。

 

さらに、日本語を話す人口自体もそうですが、通訳者の数が少ないこと、などがあると思います。

 

もちろんアメリカ国内でも中部と沿岸部ではレートが異なります。サンフランシスコやシリコンバレーよりも、ニューヨークはさらに1割~2割増しになります。

 

❷ 人数体制が違う

日本ではほとんどの場合、逐次通訳でも一日の案件だと2名体制、同時通訳だと一日で3名体制が標準です。

 

じつは、これはアメリカの通訳者にしてみるとかなり贅沢な話びっくり

 

これまで逐次は何日間の業務であろうと一名体制(司法分野は除く)、同時で一日8時間以上でも2名体制でしたね。

 

過去に一度だけ2時間の講演を3名以上でローテーションしたことがありましたが、その時は通訳チームの手が空いていて、私がコーディネーターだったのでできたことです。

 

❸ 日英、英日の需要が違う

会議通訳の場合だと、アメリカでは英語→日本語への通訳がメイン、日本では日本語→英語への通訳がメインというパターンが多いように感じます。

 

もちろんコミュニケーションは一方通行ではないので通訳者は日本語も英語も使用するわけですが、割合からいうとパターンが分かれると思います。

 

例えば、日本国内であれば講演や会議を日本語で進行するケースが当然多い。海外から訪れる外国の企業、または日本在住の外国人のために日本語から英語に通訳する機会がそれだけ多くなります。

 

その逆で、アメリカで講演や会議は基本的に英語で行われます。そこに日本から民間企業や政府機関などが訪れるので、英語から日本語への通訳のニーズのほうが高いわけです。

 

日本企業が自社のプレゼンを行うこともありますが、英語を話せる方が事前に準備した英語の原稿を持参していてそれを読み上げる、といったケースが多いです。

 

❹ 案件の数や内容が違う

日本国内、特に都内では通訳案件の数が絶対的に多い

そのため通訳者は圏内に集中しているわけです。世界的にみても日本語を理解する外国人は少ないですから、通訳と一言にいっても展示会のアテンドから専門的な内容の同時通訳まで、案件の内容も難易度もバラエティ豊か。

 

通訳経験が少なくても、簡単なお仕事から初めて経験を積みながら徐々にレベルアップができる恵まれた環境だと思います。

 

一方、アメリカでは通訳案件の数も日本国内に比べると当然少ない

しかも国土が広く、需要があるのは一部の大都市に限られるため長距離の移動が大変です。医療など英日のコミュニティ通訳も存在しますが、日本人の住んでいる地域でしか成り立ちません。

 

また、海外出張でアメリカにくる日本のビジネスパーソンには優秀な方が多いので、ある程度英語がわかるんですね。日常会話くらいはできるけど、ビジネス英語や専門的な内容になるとイマイチ、という方がほとんど。

 

講演内容も半分くらいはリスニングできるけど、時差ボケでつらいからとか、スピーカーが例えばインド訛りだから通訳を付けてほしいという方もいらっしゃいます。

 

なのでアテンドとか簡単なレベルの通訳案件が少ない。英日通訳者の数が足りないのに、新人が参入できる機会が与えられていないんです。

 

「それほど難しい内容ではない」といわれて行ってみるとめちゃくちゃテクニカルな内容だった、という例が多いです。

 

会議通訳者の数も少ないため、私は○○が専門なので・・・とか悠長なことをいっている余裕はなく、いわゆる「何でも屋」にならなければ生き残れないという感じはあります。

 

❺ 通訳会社のサポート体制が違う

私の経験からいうと、全体的に日本の通訳会社のほうがサポートが手厚いと思っています。ただし、アメリカ国内でも日本人経営の通訳会社(弊社を含む)は別ですよ!

 

資料提供から宿の手配まで、日本の通訳会社は丁寧すぎる(?)ほど丁寧に対応してくださいます。

 

アメリカの通訳会社はというと、残念ながらその点あまり期待できません

 

ま、ケースバイケースですが、資料は送ってきたらいいほう・・・滝汗 

大手でも対応がずさんだったり、同業者のなかで評判の悪いところもありますしね。

 

スタンフォード大学の同通ブース。とりとめのない話し方をする講演者だったので疲れました(汗)。

 

以上が私が分析した日米の通訳事情の違いですが、いかがでしたでしょうか。参考になればうれしいです。

 

じつは現在、ウン年ぶりにワークショップの準備をしています。

 

翻訳者向けのワークショップはセルフラーニング講座としてこれまで数百名の方が受講されてきました。

 

私自身、翻訳者としてスタートしたわけですが、当時は誰も教えてくれなかった業界の常識やフリーランスで収入を得るためのノウハウを惜しみなくすべて公開した内容になっています。

 

これほど反響があるとは予測していなかったので、コンテンツ作成は労力を要しましたが今思うとやってよかったな~と思っています。

 

じつは一年ほど前から、通訳分野でもセルフラーニング講座を提供してほしいという声をいただいてまして、やっと重い腰を上げた次第ですアセアセ 

 

翻訳の時と同様、プロとして稼ぐためのノウハウや情報がたっぷり詰まった内容になっています。

 

なるべく早くブログでも告知できるようにがんばりますルンルン