気が付けば鯉の季節も終わろうとしている。プロ野球の開幕を待たずして、この季節は何かと滅法強いイメージがあるだけに悔やまれる。
しかしようやくプロ野球の開幕も正式に決まり、一安心といったところ。気になるのは、これだけ公式戦が短縮化されたことで、選手の通算成績が野手なら2000本安打、投手なら200勝といったプロ野球殿堂入りの条件をクリアできない可能性が僅かながら生じてしまうこと。選手も一社会人である。プロ野球という華々しい世界に飛び込んだからには、そこに自分の名前を刻み込みたいはず。
競馬では、明日、31日、日本ダービーが開催される。プロ野球のみならず、地元東京開催だった東京オリンピック・パラリンピックの延期、春の到来を告げるセンバツ高校野球や大相撲の中止、そしてアマチュア大会でもインターハイも中止になるなど、プロアマ問わず多くのアスリートが悔しい思いをしている中で、競馬は無観客で決行されるのはもはや見慣れた光景といえるかもしれない。
福永祐一がダービーを初めて勝ったのは2年前のこと。その年、皐月賞を勝ちながらも5番人気と人気を落としたワグネリアンの手網を取っていた。
そのときの翌日のスポーツ紙には自宅で見守っていた御家族の様子がこと細かく書かれてあった。
天才ジョッキーと呼ばれていた福永洋一でさえ成し遂げられなかった快挙に、母と妻は涙を浮かべながら抱き合い、洋一はベッドの上でレースが終わってもテレビ画面をじっと見つめていたという。
当の本人は嬉しいというよりも何処か気恥しさでテレビカメラが設置した、恒例になっているカメラのレンズフィルターにそそくさとサインをするや検量ルームへ行ってしまった。
ああ、あれから2年か。もう2年も経つのか、それともまだ2年しか経っていないのか、自分でも時の早さが遅いのか早いのか掴みようがないのだが、2年前のことを覚えているのだから、2年という月日はさほど大したものではないのだろう。しかし、祐一にとっては、まさか2年後にもう一度ダービーを狙えるとは思ってもいなかっただろう。
枠順も味方になっている。その上、父ディープインパクトが持つ無敗の2冠の偉業も、コントレイル自身が父の記録に追いつこうとしている。
先週のオークスに続いて馬券を買うには面白くない。熱心なギャンブラーは2着3着に入線する馬を着順通りに予想、若しくは注目の馬を敢えて無視して大穴を狙うチャンスでもある。
外れてもたかだか数千円程度の賭け金が、ひょっとしたら何十万何百万といった高配当がつくかもしれない。勝負の世界、何が起こるかわからない。
ディープインパクトが現役の頃はディープが勝つのは概ねわかり切っているので、ディープに単勝何十万も賭ける人も珍しくなかった。僕が知っている風俗嬢はそんな買い方をしていた。彼女とはコスモバルクの話しで盛り上がった
コスモバルクは地方競馬所属でありながらエリート馬が集結する中央の舞台に挑んだ。メディアは「オグリキャップの再来」と謳い、数々のドキュメンタリー番組で取り上げられた。
当時、他に地方競馬を賑わせていた高知競馬のハルウララを引き合いに「比べられちゃ困る」と関係者は取材に応じていた。
そんな、僕にとってディープインパクト以上に夢を感じて堪えきれず、惜しくも前走皐月賞では2着に敗れたコスモバルク見たさに東京競馬場へ足を運んだ。もちろんコスモバルクが勝つと思ってコスモバルクを軸にした馬券を買った。鞍上の五十嵐騎手もコスモバルクと同じく道営競馬の騎手だから、北海道の方々は僕よりも彼らに夢を託していたと思う。結果、前走NHKマイルから変則ローテーションで出走したキングカメハメハにダービー馬の称号を奪われた。そのときの鞍上は言うまでもなく、アンカツこと安藤勝己騎手。彼もまたかつては地方競馬所属の騎手だった。
馬券を買うなら決して高配当を狙えないので美味しくはないが、夢を共有する意味で買う馬券と利益目的のそれとは似ているようで全く意味合いが異なる。だから、競馬はパチンコパチスロと違って外れても余り痛い思いをしない。それにそんなに投資しない。
「競馬の浪漫など依存症患者の屁理屈」と笑われるかもしれないが、それはそれでいい。ただ真っ直ぐに生きている命の躍動を感じたいだけなのだ。

