9月。
カレンダーを見ると、今年も残り4か月を切っている。
暑さは少しずつ和らいできたものの、
通勤電車の車内には、まだ夏の疲れが残っているような空気が漂っていた。
あなたは、
いつもの時間に会社へ到着し、いつものようにパソコンの電源を入れる。
メールを確認し、今日の予定を確認する。
特別な出来事は何もない。
良くも悪くも、いつも通りの朝だった。
そんな時だった。
隣の席の後輩が、少し緊張した表情で席を立つ。
手には一枚の封筒。
そのまま上司の席へ向かっていった。
なんとなく察しはつく。
しかし、まさかと思う気持ちもあった。
午前中が終わる頃。
社内には静かなざわめきが広がっていた。
どうやら後輩が退職するらしい。
転職先も決まっているという話だった。
驚いた。
まだ若い。
これから先も長い。
そんなことを思う反面、なぜだろうか。
心のどこかが少しだけ引っかかった。
昼休み。
コンビニで買った弁当を広げながら、何気なく窓の外を眺める。
後輩が辞める。
ただ、それだけの話だ。
珍しいことでもない。
実際、今までも何人もの人が会社を去っていった。
それなのに今回は妙に頭から離れない。
理由は分かっていた。
後輩は今の仕事に大きな不満があったわけではない。
人間関係も悪くなかった。
給料だって極端に低いわけではない。
それでも、自分の将来を考えて転職を決めたらしい。
その話を聞いた瞬間、ふと自分自身のことを考えてしまったのだ。
入社して何年が経っただろう。
毎日忙しく働いている。
気づけば役職も付いた。
後輩もできた。
責任も増えた。
決して悪い会社ではない。
けれど、
今の仕事を続けた先に、どんな未来が待っているのかと聞かれると、
すぐには答えられない。
午後の仕事が始まる。
会議。
電話。
メール対応。
気づけば定時が近づいていた。
忙しい一日だったはずなのに、頭の片隅にはずっと後輩の言葉が残っている。
「今じゃないと挑戦できないと思ったんです」
帰宅途中。
駅へ向かう人の流れに身を任せながら歩く。
夕暮れの空は少しだけ秋の色になっていた。
後輩は自分の未来を考えて動き出した。
では、自分はどうだろう。
今の仕事に不満があるわけではない。
会社を辞めたいわけでもない。
それでも、このままで良いのだろうか。
そんな考えが頭をよぎる。
自宅へ帰り、
夕食を終えて、ソファへ腰を下ろす。
テレビはついている。
スマホも手元にある。
しかし、内容はほとんど頭に入ってこない。
今日一日、何度も頭の中で繰り返していた言葉がある。
「今じゃないと挑戦できないと思ったんです」
その言葉の意味を考えながら、あなたは静かにスマホを手に取るのだった。
Believe in your possibility.
( 後編へ続く )

