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上嶋 潤のブログ

なんとなく諦めてしまう話があって、愚痴を溢して楽になりたい時に書いてみます





ようやく俺たちのターンだ!

ターンだ!なんて変な言い方をしなくても良いんだが、勢いつけないと怖くて口ごもりそうになる見るからにヤクザとしか感想を持てない強面のデカさんが近寄って来た

普通ならマル暴や凶悪犯罪事件に出張ってきそうな刑事が来たので少し驚いた(ちびった)ケロだが、トラウマを抑えながら自分たちの潔白を話始めた

「やってません」
横でゆーきーがウケてるのは分かる
「ケロさま!出オチやしー」
それこそ自白並みの台詞が出た

びびってやってませんって、犯人の台詞だよ?ケロさま!
まさか、犯人を知ってるのは、自分が犯人なんてオチじゃないよね…不安そうな顔をこちらに向けている


簡単な尋問であっても所轄の取調室で行うものなのだが、一応密室風の殺人現場にあって互いに打ち合わせが行われる可能性が低い場合には、捜査の進捗状況を鑑みて省略されることもある
狭い店内から誰も動いていないし、物証を無くせる場所はない

通常、毒物は裸では持ち歩けないので容器に入れて所持されるが、トイレも調理台にも直接固形物が流れる構造には無く、それぞれに詰まりを防ぐ湾曲なり、小型のタンクを通って排水される

所持品として毒物を入れていたであろう物が見つかれば、それだけでめでたく犯人逮捕となる筈である

そこまで考えて、かなり余裕を持って笑いを狙う問答をする
ケロは笑いを生む法則の幾つかを知る男なのであります

パニックには強いケロだが、怖い人は苦手だ
強面のデカは木村と名乗り、事務的に「簡単な所持品の検査をしますし、何か見ていないか話しなさい」と声をかけてきた

口調は優しいし、名乗ったので驚いた

刑事が現場で名乗るなんてケロは知らないから、命令口調は黙殺した
デカが怖いのはいつものことだが、人間性は残っていそうなキムデカさんだ

しばらく知り得たことを話していると、所持品検査を受けていた後ろの荷物の中から注射器が見つかった

あのーそれ、ケロバッグなんですけど!?
いつの間にそんな物が入ったんだ?
あろうことか毒を入れていたであろう注射器がケロの鞄から出てきたようだ

「ケロさま!まさか!」
ここぞとばかり、ゆーきーが嬉しそうに騒いでるが、叫ぶの辞めて…疑問符忘れないで?
「やったと?」
後、その目は辞めて…厳し過ぎるから
目は口ほどに物を言うからさ
「ゆーきー?やりそうって、目がさ言ってるよ」

「えへへへ」笑ったら許されると思っとるんと、逆に聞きたいね
サラリーマン用語的な「逆に」だけどね

本当に九州の女は疑り深く、用心深いのが、こんな時にはよく分かる
「俺は悪いことはしないよ」
「良い子のみんなが信じてる限りはね…多分」

「だからケロさま好きー」
逆に、だからの使い方が違うからね


逆に程なく他の警察官と話していたキムデカが
「梅田先生、曽根崎署までご同行願います」
と真顔の強面で言ってきた

本当に言ったよキムデカさん!
それってテレビ用じゃないんだ

だが真犯人を知っている、無実の罪を着せられてる時間の余裕のないケロは、「ちょちょ待って下さい」と、慌ててキムデカを制止して指差した

「犯人はあいつです」

まあこれもみっともない容疑者の言い逃れにしか聞こえないが、伝えるべきことはあると信じて抗ってみた
何より毒物は注射器に入って運ばれていない
なぜならこの注射器は先程みゆに渡されただけなんだから!

それに、展開が大きく広がると書くのが面倒だからここで解決しないといけないプレッシャーがある
長引くのはケロの本意ではないから…



自信満々に犯人と指差した先に居るのは、マリアイーリスのメイド💓みゆ💓こと日吉 美優だった

みゆはM女子大の薬学専攻生で、マリアイの顔になりつつあるベテランメイドの一人、ケロとは何度か遊んだことのある娘だ
とても人当たりがよく、一度も怒った顔を人に見せていない極々メイドらしさを感じるメイドだ

「ケロさん…私を疑うなんて、ヒドイな」
女性にしては低目の鼻にかかる声で応える落ち着きぶりに慌てたところはない

しかし、周りのメイドも客も完全にみゆの味方という感じの視線ではなく、静かに反応を伺う緊張感を保っている
それが普段にみゆが周りに与える印象なんだろう

少しミステリアスな雰囲気と言う人も居るかと感じる

「東京土産は嬉しいが、犯行に使われてもいない注射器は必要ないので返すよ」

「へえーなんでそんなことが分かる?」
「うんそれはね、多分注射器に指紋が付いてない筈だから」

キムデカも今は静観して、会話を聞いている

誰から見ても一目で温厚と分かるメイドを真犯人と指差しているケロの方が余程皆が納得する犯人らしき人柄だろう

一般的に歯科医はSっぽい印象があるし、薬品、毒物の扱いにも長けていると思える怖いイメージがあるし、恨みを抱く者も少なくないのは事実だ

Sっぽい印象と言えば、以前に埋れた親知らずを抜歯した後に顔にかけたタオルを外して泣かれていたことがある
てっきり痛かったのかと勘違いして、謝罪と手を上げてくれと頼んだことを確認したら、「だって全然痛くなくて、丁寧だから」と言われて頭の中に?マークが並んだんだが

要は、もっとアクティブな抜歯を期待していたとの事だ…「お前は神聖ドMか?」
色んな人が居るものだと思うよ

「期待ハズレで悪かったな」


「それはさ、凶器は消えて無くなってるから、僅かな金属水銀があるだけだと思うし、どの道これは証拠になりにくい筈だからケロにパスしたんだろ?」
相変わらずみゆの反応は無い

「毒物の知識があって、無職が長くて、そして君とは違う考えの人が悪と感じたのかな」

本当の理由は他にもあるが、この場では伏せておく方が正しい気がしたので、今はいい


毒と簡単に言うが、歯医者が普通に手に入る毒はそう多くはない
水銀、ヒ素、無機シアン化合物(青酸カリ)くらいだし、敢えて加えるならフッ素化合物とアジ化ナトリウムだ

理科実験で怖いと感じていた塩酸、硫酸、硝酸は毒物よりもおとなしい劇物でしかないし、日常臨床では使われない

歯医者と言えば虫歯予防に安易に使われているフッ素化合物も本来は取り扱い試験を必要とする毒物だ

林真澄の毒カレー事件で一躍有名になったヒ素も、歯髄死を目的に歯科医は扱う毒物だが、急性毒性を示して人を毒殺するのは難しい

よく使われるヒ素で有名な物に、ネオアルゼンブラックがある
カレーと違ってヒ素を溶かして飲ませる類いのドリンクがマリアイには無い

毒殺と言えばやはり、毒薬に囲まれている歯科医の専売特許と思えてくるが、水銀なんて不確実且つ面白味の無い死に方をする物はケロなら使わない

楽しいことが好きなケロなら発癌剤を使う
発癌剤を飲ませたら一週間程で様々な消化器に癌が出来て、上下から血を出しながら苦しみ悶えて死ぬ様を見ながら、のんびりと声を掛けてるだろう
「大丈夫!治るよ!頑張ろ!」

何の根拠もない無神経な励まし程楽しいものはない
世間ではよく友達と言い合う関係性の人々が掛け合う言葉だ

血が出ていて大丈夫な訳はないし、癌が治るかは誰にも分からないし、痛みに耐えるとか、頑張る辛さは自分持ちだ…人は決して痛みを分かち合うなんて出来やしない

善意の皮を被った悪意も、治る方法があるのに教えない善意も同じだろうか?

「みゆは、マムの友達だよな?」
「違うよ」
うん、違っても構わないか

「みゆはマムがどこの歯医者へ通ってるのか知ってるよな…そんな感じの話はマムから聞いてる」

「………」
みゆは黙って次の言葉を微笑んで待ってる
いつも癒される優しい笑顔だ
「そこで、マムが倒れた話を聞いてると思うんだけどな」

「そうなんだ…」まるで他人事の様な生返事が帰る

同じ生でも、嬉しくない方の生だな(΄◞ิ౪◟ิ‵)♡
「みゆも気にしてる銀色の歯を治す話もしてただろ?」

みゆの場合は、全部鋳造冠だが、マムちゃんの歯はアマルガム充填の話と少し違う

このアマルガム充填についての否定的な意見はよく見かけるようになっている
ネオアルゼンブラック、高濃度のフッ素塗布共に、近年更に注目されている歯科領域の毒物としてあるのはアマルガム水銀の毒性というのもある

錫、銀、銅を水銀(50%)を混和したアマルガム合金を歯に詰める治療はようやく無くなりつつあるが、10年前までは極当たり前の良い治療として行われていたが、それをマムちゃんは見える下の奥歯に沢山していた

歯医者の悪い癖だが、人の口元は必ず見てしまう
霊視はコントロールしていて、勝手に守護霊を視るとか、水子の数を確認したりは辞めたけど、口元は見てしまう

アマルガム充填も合金となれば物性は安定し急性毒性は存在しないとされているが、個体差の反応は無視出来ないのではないかとされている
近年は歯科的な症状がなくともアマルガム合金を除去して、レジン系の修復に変えられている症例もある

阪神淡路大震災の後の竹中工務店の様に迅速な対応は良いことと考えたい
決して隠蔽ではないと考えたい

ケロの存在自体の毒性は薄まらない
色んなネタを持ってるのが大人の生き方なんだろう
話は脇道に逸れて読みにくいのはお詫びしたいが、道草こそが人生の楽しみと思いたい


重要なのは、歯科用アマルガム合金中の水銀の毒性は気化した水銀が問題であり、定期的なメンテナンスをすることでこれは激減すること

更に口腔内の金属修復の問題点にはガルバニー電流の問題もある
アマルガム合金と貴金属を多く含む金パラ合金が対向関係にあり、噛み合う度に電位差から発生する電流が歯の神経を刺激する
また、腐食を加速させることでアマルガム水銀の溶出(錆)を早める問題がある

勿論、患者個人の常食する食べ物の酸性度や成分に因っても錆の進み方は変わる
カレー、コーヒー、一部のチーズなどではこのアマルガム水銀の溶出は早くなる
この3つはなるべく摂取しないことだ

責任の所在こそが社会のあり様なのだが、全てを歯科医に責任転嫁出来ないところにアマルガム論争の答えは出しにくいものはあるだろう


マムちゃんの場合の問題点は、寧ろ一気にこの合金を除去する際に発生する気化した水銀の吸入であり、時間をかけて一本ずつ除去されるべきであった点にある

「ケロさま~どゆこと?」
それまで犯人はケロだと思い込んでいた助手のゆーきーが口を挟んできた
形勢不利とみると逃げ、有利となると援護しだす様は、日本人的でいつも安心する

男は常に勝者を目指し、心正しくなければならない気がしてくる
実にネガティブな意味合いだが、励みにはなる

「マムちゃんはアホな歯医者で多数歯を同時にアマルガム除去したんだ」

「オペ室でなの?どこで?」
ゆーきーはアホキャラだが、仕事には基本真面目な方だから正しい質問をする

「普通に外したそうだよ…ウチなら考えられないようなことが、他所ではあるのが歯科業界の怖いところだね」

つまり

「みゆは亡くなったメイドのマムが歯科治療中にアレルギー性ショックを起こしていたのを知っていて、麻酔薬による中毒でないことも確認していたんだよ」

「ケロさま~それは、気化した水銀の中毒とは関係あると?」

「それは調べてみないと断定的ではないんだけど、単なる気化した水銀の大量吸入だけでは考えられない事象ではあるからな?」
「でも、経過の長いアマルガム合金自体のアレルギーの可能性が高いところに、吸入と嚥下による閾値を越えるアマルガム水銀の摂取ならば起こりうる現象だろうね」


薬学専攻生のみゆはアレルギーと毒物の知識はあるが、針をいきなり人に突き立てる事は無いだろう
それに素人が人に針を刺して、水銀を注入するのは簡単ではない
コナン君の様には絶対にいかない

水銀の毒性に意識が行くと見落としてしまうが、毒劇薬よりもアナフィラキシーショックを示すアレルギー反応の方が怖い
そして何がアレルゲンとなるのかは神のみぞ知る世界である

「注射器の金属水銀の残りは罠だな…本当の凶器は気化した水銀」
アレルギーこそが真犯人なんだろう

表面性状が安定しているアマルガム合金ならば水銀の気化もほぼ問題が無いものだが、それを危険なものだからと一気に外しにかかった為に水銀の中毒症状が起きたのだろう

勿論それはマムちゃんが幼い頃に処置したアマルガムの影響があって、アレルギー反応を起こす状態に陥っていたのは想像される

アマルガムは確かに良くない点があるが、治療の内容が難しいインレーによる保存処置よりも簡単なアマルガムは子どもには使い易い

全ての子どもが満足な治療を受けられる訳ではない
親のデンタルIQが低かったり、ネグレクトもある
お金や通院時間が無いと言い訳する人も居るし、上手く治療が受けられないで暴れる子どもも多い

スタッフのレベルが低く、先生だけでは難しい処置が完璧に行えない場合も多い
保険の治療点数と処置の実情が一致しないのが歯科の保存処置全般にあるから、横着する心理も働く

全く世界は推理小説向きに出来ている
一般的に…悪いことだけど、認められていることには何か多くの不具合が絡まり合って起きているのが世の常だ

「恐らくは…立証されないが、問題は今も何処かに水銀を隠していることなんだけど」

「ゆーきーなら、どこに隠す?」このお店の中にあると良いんだけどな
ゆみを犯人にはしたくない気持ちもある

国家権力に安易に美人を渡すなんて、エロの沽券に関わる問題だ
一応は自称ヒーローだからな

ややこしいこと、悲しいこと、こんな場合は初めから関わらないことだ
47年生きていて逃げ道はどこにでもあるものだといつも感じる

アマルガム一つからも多くのことは学べる
それが今は一知半解、ネットで得た程度の軽い知識で大騒ぎして、結果彼女はアレルギーを起こし、それを利用して殺されることになった

ある意味自業自得だ
学びの本質を理解し、情報の価値を図る訓練をしていない為に死は起きている

患者の浅はかな知識を真に受けて、自分も知識もなく多数歯を同時に処置した歯科医にも問題はあるのは間違えない

さて、みゆの殺人の動機はなんだろうか?
これはケロには分からない

なぜなら彼女は頭を使わないタイプの人間だからだ
いや、勿論使う範囲は使っているが、他者の意志と自分との意志を擦り合わせることに頭を使わない
超簡単に言うと相手の考えを読まないから、相手もどう読まれてるのかの考えが読めないと言うだけだ

最近の身勝手で、無計画にも見える無差別殺人とは、他人から見るとそう見えるだけで、本人は案外と考えてのことだったりしてると感じる

ただ前頭葉の退化した現代人は、その機能である未来予測が苦手で、他人の考えが読めず、話の文脈が分からないだけだが、それなりに人とコミュニケーションらしきものは取れているが、明確な行動予測は出来ないので、あの様な犯行様式となる

社会維持の為の法よりも、個人の心の声に素直に従う法を全て否定したくない…そんなおかしな意識が治療を通して感じることがケロにはある

普通の推理小説なら、みゆの自白を促して終わるんだろうな
だが、美優はASだ
状況説明は行えても、動機について語ることは出来ない