オリンピック開催都市の条件?
オリンピックが開催される都市の特徴には大きく2つあり、一つは「時代性」、一つは「民族性」。
時代性とは、例えば1964年の東京など。1960年代は日本の高度経済成長の時代であり、この時期に最も勢いのある国でオリンピックが開催されることは時代の象徴となる。1988年の韓国、2008年のペキンはこのパターン。2014年のリオもこれに該当するだろう。1980年代は「ハンガンの奇跡」韓国の高度経済成長、2000年代はまさに中国が躍進し世界2位の経済大国になった時代。2010年代は原発事故や原油価格高騰を受け、バイオマス先進国ブラジルが世界をリードする時代となる。
民族性については1992年のバルセロナがわかりやすい。バルセロナが位置するカタルーニャ地方はスペイン国内でも独自の言語(方言)が用いられているなど、民族性が異なる地域。中央政府に対する反発心が強く、それを国際社会に訴えるためにオリンピックが誘致された。1972年のミュンヘン、1976年のモントリオールが典型例。ミュンヘンはドイツ南部バイエルン州の州都だが、プロテスタント教徒が多いドイツにおいてバイエルン州はカトリックが多く、独自の文化を持っており、民族の独自性が強い。サッカーのバイエルンミュンヘンが強豪であるのもこれが理由。前法王はミュンヘン出身。モントリオールはカナダ東部の都市で、この地域は(英語国カナダにおいて)フランス語が使用されている。ヨーロッパ的な文化を持ち、北米大陸の例外的な地域となっている。
上で述べたもの以外も含め、整理してみよう。
1964年;東京 日本の高度経済成長の時期。
1968年;メキシコ
1972年;ミュンヘン プロテスタントが主であるドイツにおける、カトリック地域バイエルン地方の中心都市。
1976年;モントリオール 英語使用者が多いカナダにおける、フランス語地域ケベック州の中心都市。
1980年;モスクワ 冷戦時代。「東」の大国ソビエト。西側諸国ボイコット。
1984年;ロサンゼルス 冷戦時代。「西」に大国アメリカ。東側諸国ボイコット。
1988年;ソウル 韓国の高度経済成長の時期。「ハンガンの奇跡」。
1992年;バルセロナ 独自の文化をもつカタルーニャ地方の中心都市。
1996年;アトランタ 史上初の黒人人口の割合が高い地域のオリンピック。
2000年;シドニー もう一つの大都市メルボルンがかつてオリンピックを開催しているため、ライバル都市であるシドニーでも開催。
2004年;アテネ 近代オリンピック100年記念。
2008年;ペキン 2000年代中国経済成長。大国の仲間入り。
2012年;ロンドン
2016年;ブラジル ブリックス諸国の台頭。バイオマス先進国ブラジル。
2020年;イスタンブール(?) 初のイスラム圏。2020年代はイスラムの時代になるだろう。
この流れの中で2020年東京っていうのはどうもしっくり来ない。っていうかダサい。いかにも日本が空気を読んでいない感がある。2022年にカタールでサッカーW杯も開催されるわけで、2020年がイスラムの時代になることはすでに予言されている。アラブの春による西アジアにおけるアメリカの求心力の低下、さらに日本におけるインドネシア人の増加など、イスラムの時代への実感は世間一般にも十分意識されるものになってきていると思う。
さらにいうならば、G7がG8にそしてG20になった現在、今後オリンピックを開催するべき都市はすずなりになって名乗りをあげてくるはず。シンガポール、バンコク、クアラルンプールの東南アジア勢は十分に開催能力はある。「ボリウッド」といえば今や世界ブランドなのだから、ムンバイは世界都市である。ワルシャワやブダベストなどはEUの支援があれば候補に上がってくるだろう。「ロシア」初のモスクワも大きな選択肢になる。サッカーW杯を成功させた南アフリカのケープタウンやヨハネスバーグも近いうちに注目されるはず。
東京なんていうおっさんが今さら若い振りをしてがんばっちゃってもカッコ悪いから(笑)、若者である発展途上国に花を持たせてもいいんじゃない?実は陰でサポートしてました、みたいなクールな役回りがこれからは似合う年代に、日本はなってきているんじゃないかっていう気がする。
追記
アトランタがちょっと強引かな。でもこの10年後に初の黒人大統領オバマが誕生したことは偶然ではない。アメリカにおける黒人の地位の向上という背景がやはり1990年代からあったのだと思う。