2008年6月10日
9:15
自宅を出た。
2泊分の最小限の衣類と、ケータイとサイフと文庫本だけを持って。
あて先は不明。計画なし。ガイドブックなし。
ただ、未踏の県だけは頭にあった。
10:10
東京駅着。
駅構内の書店で小型の時刻表を購入し、まだ中を見ない。
駅弁とお茶を購入する。Suicaで何でも買える。とても便利な世の中。
時刻表のページをめくる。
北方面の未踏県に向かうことにする。
まずは、秋田までの「こまち」のチケットを購入する。
発車まで時間がある。
時刻表の地図で秋田までのルートをたどってみた。
途中に、田沢湖がある。秋田の先には白神山地がある。
海沿いの五能線が有名だ。
平日だと、ジジババの皆様でごった返しているのだろうか?
それはできれば、避けたいものだ。
が、平日の旅では避けて通れないはずだった。
ただ、やり過ごすのみ。
10:56
東京駅発
一番前の車両。けっこう空いていて静か。
11:45頃
宇都宮駅通過
麦畑が黄金色で刈り入れを待ち焦がれて、そわそわしている。
左手に山がせまる。男体山?山頂付近が吹っ飛んで、
いびつな形になっている。
空高く、絹層雲がカタツムリの歩速で止まっている。
田植え直後の田圃でも、大きな盆地町を囲む山の壁でも
どれも緑が青空に映えて、
東京の色彩と同じなんて言い出す奴は誰もいないはずだった。
13:00頃
北上川通過
意外と小さい印象だった。
奥州平泉を思い始めた。どうやったら行けるのか?
東京駅で買った前沢牛のお弁当を食べた。
石灰による発熱装置付きのやつだ。こういう機械モノに弱いのだ。
東京へ折角稼ぎに行ったのに、また新幹線で戻りつつあるこのお弁当の
心中は穏やかではないだろうと想像しながら、ありがたくいただいた。
14:30
田沢湖駅着
山深い在来線と共用の単線をクネクネと進んできた。
真冬にこんな線路本当に走れるのだろうか?
改札で駅員さんに、ここで降りたら秋田までの残りの特急券は
無効になりますけど、よろしいですか?と念押しされた。
職務に忠実なのか、親切なのか、いずれにしても
こちらは、あてのない旅で多少のロスは覚悟しているのだった。
「はい分かりました。結構です。」と答えた。
バスでのどかな山里の中を移動すること10分。
田沢湖が見えてきた。
雲ひとつなく、風もほとんどない。
湖畔の食堂で、湖の景色を見ながら缶ビールをいただいた。
真夏になってしまったような日差しが、
湖面にピカピカと反射して眼の奥にチカチカと緑の星を残した。
観光客もまばら、遊覧船も寂しそうな航跡を残して沖へ向かった。
店員さんもお土産屋さん観光客も、時間なんか気にしていないような
自分固有の速度と順序にのみ忠実にしているように見えた。
自然の中で自然と区別がつかないくらい本来の人間の姿に戻っていた。
ひょっとしたら、自分もそう見えたかもしれない。
これくらいの、スピード感と弛緩感が人間には
元々丁度良いのではないか。
あっという間に、缶ビールの中身が無くなった。
やっと、次を考える時になったようだった。
さてさて、本日の終着はどこにしようか?



