円高が進行する中、中小企業などが為替デリバティブで生じた損害の賠償を
金融機関に求める「金融ADR」(金融分野における裁判外紛争解決)を
申し出るケースが急増している。
金融庁の調査では、メガバンクなどが2004~07年当時に販売した
為替デリバティブは約6万3700件。
このときの為替レートは1ドル=110円~120円。
それが現在の80円を割り込む円高局面で過大な損失を抱えている状態にある。
対応に苦慮した中小企業は、解約清算金の免除や損害の賠償を銀行に求めるため、
全国銀行協会の紛争解決機関に斡旋を申し立てるケースが急増している。
09年度の申し立て件数は36件だったものが、10年度に172件に急増し、
今年度は4~6月の3カ月で、すでに110件に達している。
一方、金融ADRを通じて和解に至ったケースは、
今年4~6月で50件と昨年の10倍以上に膨れ上がっている。
金融ADRには、裁判のような公開の原則がないため、
和解内容がどのようなものであったか詳細は不明であるが、
「1件当たりの和解で生じる銀行の負担は1~2億円程度。
解約清算金の全額と損害の半額以上を銀行が負担するのが大半で、
損失の7~8割の負担を強いられるケースも少なくない」
(メガバンク関係者)という。
その潜在的な負担総額は2兆円にのぼるとも試算されている。
背景には、04年~07年当時、「メガバンク間の公的資金返済競争」が影響している。
「公的資金を一番早く完済したところが勝ち組の先頭に立つと、
営業の現場で収益増強に発破がかけられた」(別のメガバンク関係者)という。
余波を最も受けたのが弱い立場にある中小企業取引で、
無理な為替デリバティブを組ませた実態があった。