温泉と作家は深い関係にあることが多かったが、
一方で必要ないとした温泉もある。
カラオケやって、芸者をあげてさわぐか、フィリピンダンスショーを見せて、
宿酔いで帰せばいいという、マンモス温泉ホテルがそうである。
どうせ一夜の享楽だから、パーッと騒いで、ドンチャン騒ぎをやらせれば、
それでいい、と思っている。
しかし、温泉に来る客は、みな、作家気分になっている。
ここのところが大切なのです。
自分で小説や詩を書かなくても、気分は作家なのだ、
川の流れをみつめ、鳥の声を聞き、森の樹のざわめきに耳をそばだて、
一瞬の詩人になる。