「超高層のあけぼの」(1969.5.14) | All the best for them

All the best for them

好きな人と好きな人に関連するあれこれ、好きな物、家族とのことを細々と、時間があるときに綴っています。





















 

17日にNECOで放送された「超高層のあけぼの」…

タイトルからして重々しそうで、しかも3時間近く。

こりゃ見るのに骨が折れそう~と思いました。

最初は、もう根上さんのところだけつまみ食いしようかなとも思っていたけど、

ずい~っと出演者が紹介され始めて、あらっ?思ったよりもグッドポジション?

ならば、と覚悟を決めて見始めました。



いわゆるオールスター映画で、

出演者欄には今も十分知っているような方々が名前を連ねています。

丹波哲郎さんに平幹二朗さんに、佐久間さんに新珠さんに、と。

でももう40年以上も前の映画じゃありませんか。

私が知っているのは今の顔なので、そりゃ40年も前となると、

目を凝らしていなければ、あ~あ~あの人~となってしまいます。

まあ、最初は根上さんがどこら辺で出てくるのか、

そこだけ見逃さないように注視していました。



まず最初に出てきたのが、中村伸郎さんの古川教授。

建築学の権威のようですが、

東大を勇退するってんでその最後の講義中なのかな?

彼はその昔、関東大震災に遭って、

その時にびくともしなかった五重塔に感銘を受けて

建築学を必死に学んで今の地位を築いた模様。

その過去話の際に、避難者を救助する医師が古川教授の兄役の

平さんだったというわけですね。

感慨深げに過去を思い出している古川教授のところに、

鹿島建設・会長がやってきて、副社長就任を打診してくるのです。

都市問題を解決すべく霞が関ビルの建築が計画され、

集まった面々は、新工事事務所所長に池部良さん演じる江尻に、

鈴木瑞穂さんの杉本所長代理、

そしてエンジニアとして木村功さん演じる構造設計課長・佐伯に、

課員が大原(MAT南隊員よ)、

ちょろっと挨拶に出てきたのが丹波さん演じるインドネシア駐在・木下工事部長。

で、ビル建設予定地が決まり…

場面は資金を出す側の三井不動産へと移ります。



はい、ここで早々に根上さんが登場でした。

鹿島建設と三井不動産のいわば初顔合わせの場面。

…「霞が関の敷地は5000坪でございます。

この敷地に見合う超高層ビルの計画、これを立てていただきたい。

日本で初めての超高層ビルを建てるに当たりまして、

私どもは並々ならぬ決意を致しております。

が、だからと言って無制限に建築資金を出すわけにはまいらんのです。

経済性の要求を念頭に置き、なおかつ地震にも打ち勝てるだけの

絶対安全の超高層ビル。私どもはそれを作っていただきたい。

では何階にすれば一番いいのか?

まっこれを鹿島建設の皆様および山下設計の皆様で結論を出していただきたい」



根上さん。40代半ばぐらいやんなあ。むむっ?思ったよりおじん?

いやこれは三井不動産の常務という役職上のことだろう、

頭に白いものも見えるし、眉間にしわを刻ませて、

ぐぐ~っと苦味走った表情を見せまくっています。

雰囲気としては、「家庭の事情」の落合課長がもっとひねた感じ。

髪の毛もがっちりセットされて、かなりシャープな印象でした。

三井側の重役の面々は、どちらかと言えばでっぷりとゆったり目な方ばかり。

その中にいて、ひときわ鋭い視線で挑み、独特の口調で相手の出方を探ってくる、

抜け目のない有能ぶりを発揮していました。



まあ結果、36階というのが鹿島の最終決断でした。



これを受けて又三井の重役さんたちが会議。

一人煙草を吹かして斜に構えているのが、根上さんの芝常務です。

「まあ、36階は理想的でしょうが、しかし180億円は大きいですな。

社運を賭けてまで手をつける必要があるかどうかですな」

真ん中にでんと座っているのが社長なのですが、

そんなの関係ねえって感じで、少々嫌味な物言いで迫る芝さん。

社長が、松本幸四郎さん。私ったら、松たか子さんのお父さんとばかり

クレジットを見て思い込んでしまっていましたが、よ~く考えたら

その又お父さんですよね~。この社長さんはとても温厚な好人物でしたわ。



「慎重に考えるべきでしょうなあ。戦後ようやく会社もここまで来た。

並大抵のことではなかった。

苦しかった時代を振り返ってそんな冒険をする必要があるかどうか

もう一度考えてみる必要があるんじゃないですかな?

もう少し低いビルでいいんじゃないですか?」

思案中の社長に、芝さんは渋さ全開で、容赦なくたたみかけてきましたよ。



芝さんの懸念ももろともせず、計画は36階で実行に移され…



骨組みにH型鋼が採用されることになり、試験材を製造してもらう先が

今の新日鉄ですね、広畑事業所。ここの大型工場長・竹本が

「非情のライセンス」でもお馴染みだった渡辺文雄さんだった。

決断力があり実直そうなタイプ。

そしてエレベーター・ガラスとさまざまな実験が行われ…

古川副社長が、三井側に説明する席が設けられた。

…実験費、研究、開発費などの償却を全部まけていただきたい、と

切り出す社長。ここはやはりメーカー側は立場の弱いところですな。

その三井の重役たちの端っこにて

険しい面持ちでそれとなく存在感を示している芝さんがいました。



ところで、三井側にも問題が発生。

肝心の部屋の借り手がなかなかつかないのです。

大手企業から断られ、頭を抱える重役たち。

「これじゃあまだ中止するところが出るかもしれませんなあ」

芝さんも苦虫を噛みつぶします。

でも社長が前向き。東西石油に行ってくる。セールスマンだよ。

と自ら明るく出向くのでした。

芝常務は、社長退席後、別の重役から

70%しか部屋がふさがらなかったとして、何年間赤字になるのか

その赤字をどこで埋めるか試算してみてほしい と言われて 「はっ」と返事。



まあ、なんだかんだとありましたが、

ビルのほうは無事上棟式を迎えることとなりました。

紙吹雪が舞う中、最後のH型鋼がクレーンで吊り上げられて…

このクレーンのオペレーターを務めるのが、

ちょっとかっこつけだけど、イカした二枚目の兄ちゃん・

若き日の田村正和さまなのです。

そして、出席の鹿島・三井の面々の中に、芝常務もちゃんと座っています。

まぶしそうに空を眺めているの。

表情は最後まで崩れることはなかったけど、

きっと心の中は安どの息がもれているはず~



芝常務は、三井不動産側の人なので、

鹿島建設中心の物語の中、それほどの出番はありませんでした。

でもこういう重厚な映画の中でしっかりとアップを撮ってくれてるというのは

やはりスターであったゆえでしょうか。

男前度はピカイチであったよ。



根上さん以外でかっこいいなあと思ったのが、江尻所長。

体格も良くて度量もある、リーダーはこうでなくちゃというお手本のような

包容力ある人物。

彼を演じていたのが池部良さん、とおっしゃる方、というのは

どうも当時のイケメンスターだったようですが、

私は彼のことほとんど知らなくて…スミマセン!

で何歳だろうと思ったら、根上さんよりも年上なんだ。

映画の中では、根上さんのほうが年上にすら見えた…

そういや鳶のまとめ役的存在として仮面ライダーのオヤッさんも登場でした。




内容はざっくり言うと、霞が関ビルの骨組みを作るまでが第一部で、

構造設計課の佐伯課長を中心に話が進められていった。

第二部がその骨を組み立てていくところで、

江尻所長以下、田村さんの島村オペレーターの恋バナや

伴淳三郎さん演じる山形出身の星野のおっちゃんの家族愛など

現場で働く人たちの人間模様を交えながら、棟上げ式まで持っていく。

地震国日本に置いて、高層ビル建築が果たして可能なのか?

一つ一つのエピソードがもうハラハラドキドキで、

いつ怪我人が出て死者が出るのか、手に汗握って祈ってしまいました。

落雷がきたときの田村さんのおびえようが…

もうあかんわ~と思っていましたが、ああ、無事で良かった…

でも高層ビルを建てるのに、これほどの多くの人の苦労が

携わっているのかと思うと、ビルに踏み入れるのも恐れ多くなります。

そしてお金を出す側と作る側の駆け引き。

出す側は出来るだけ低予算で。

お金を出す方がいわばお客さんなわけで、

作る側メーカーは、予算内でいかに自分たちの納得できるものを作るか。

綿密な計画とそつない実行力。

建つビルには借りてくれる人がいないといけないし~ってことで、

あらゆる人が頭を悩ませながら、

一つの目標に向かって突き進む様子が、

メーカーで働くだんなに重なって、画面にくぎづけになりました。

男性陣が多い中、奥さまとして登場した、佐久間さんや新珠さんが

華を添えて。内助の功っていうのでしょうか?

言葉づかいも丁寧だし、外で働く夫をねぎらって尊敬して。

奥さまの鏡でしたわ。

高度経済成長期に突入しようとする日本で、頑張る日本人、

なかなかやるやん、と思わせてくれましたよ。