微かに薬品の匂いがする店内‥
しわしわの手が慣れた手つきで
古びたノート
〃滞在・住民帳簿〃を開き
「名はなんと申す?」
『二宮‥』
使い込んだ黒の万年筆で
さらさらと‥ 勝手に
「二宮‥金次郎な」
『違います和也です』
「金次郎はいつまでこの島に
滞在予定かの?」
『ねー、大野さんこの婆さん
耳が遠いかボケてらっしゃるのかな?』
「まだボケとらんわいっ
なんちゅー、失礼な奴じゃ!」
『ババア…
ちゃんと聞こえてんじゃねぇかよ‥』
初っぱなから相性最悪な二人に慌て
にののシャツの裾を引っ張り
「にの、この人この島の所有者で
やよいちゃんってーの! で、
やよいちゃんも前に話してた‥ あの、
これがオイラの‥にの、/ / / /二宮和也」
『ご紹介に与りました
これがオイラの二宮和也です。
やよいちゃん どーぞヨロシクね?』
いかにもおざなりに微笑むと
もぅこれ以上話す気がないって風に
おもむろに椅子から立ち上がり
店内を物色し棚に並んだ市販薬や
ドリンクを手にとって、
『へぇ~意外。超ド田舎のわりに
そこそこなんでもあんじゃん』
にのが棚の後ろ側に回り込み
商品を手に取る様子を眺めていた
やよいちゃんが
「随分礼儀を知らん嫁みたいじゃな」
「何時もはもっと礼儀正しぃのに
おかしぃな、ごめん悪気はないんだ」
「しかしまぁ、この様子じゃと
長くはもつまい」
「え?」
「あんな軟弱そぅでまっ白けの奴が
厳しい北の離島に耐えられるとも到底
思えんし‥それに何よりこの島があまり
お気に召さんよぅじゃ(笑)」
1ヶ月‥ 否、2週間がせいぜい
関の山だと呟きそれに返す言葉もなく
ただ青ざめるオイラを やよいちゃんが
訝しがるよぅにじっと見つめ
「お主‥ まこと金次郎はそなたと共に
ここで生涯暮らすと言うておるのか?」
「やよいちゃん、それは‥あの、、
にのは、、 … 金次郎じゃなくて‥」
痛いとこを突かれ
しどろもどろ口ごもるオイラに
ひょっこり棚の後ろから顔を出した
にのがホコリをかぶった小さな
茶色の小瓶を片手に大声で、
『じぇじぇじぇっ、
ちょ、大野さんコレ見て
2015年期限切れの夜は
ビンビン赤まむし
発見!!』
「…… 帰るぞ」


