それでもやる必要がある。先に進むにはまずこの難関を乗り越える必要がある。避けることはできない。逃げることはことさらできない。ここは、白閃流奥義の一つで答えるのみ。
いつの間にか、6本に腕を増やした朱紗丸が、その分、つまり6つの毬を投げつける。距離は50メートル程、それが到達するのはほんの数秒だ。不規則な動きで襲い掛かる球体、しかも、こちらに殺意があるとしか言いようのない動きをしながらこちらに向かってくる。不規則にかかわらず、だ。
でも、彼には勝機があった。己の剣を信じて抜く。
山本「白閃二刀流奥義の一、白竜。」
そう言い放ちて3秒後。全ての毬は切断され、両鬼の首は切断された。
鬼の二人は、余りに長い三秒間だっただろう。山本の剣の動きは、二人を食らう白き竜のごとしだった。あまりに美しい動きをする、無駄のないそれは、まず毬を食らった。右手と左手、それぞれで毬を3つ切り落とす。ここまでで2秒。次に、片腕ずつで両鬼を斬る。ここまでで合計三秒。
これが、奥義白竜。強力な踏み込みと同時に連撃を放ち、相手に死をもたらす白き竜を見せる技。これにて、一つの決着がついた。
桃白白【何が起こった?隙を見てどどん波を撃とうと思ったが…出せなかった。あれを見た瞬間、体が動かなくなっただと。】
仕方がないだろう。この技を見た者は、己の死を感じ取り、動きが止まってしまうのだ。その竜に巻き込まれれば、すなわち【死】あるのみと。