こんばんは、今日の記事はマンガの感想をお届けします。
今回は武田一義さんの「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」です。
このブログで紹介する作品としては初の現在連載中のマンガです。
まずは作品の基本情報です。
「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」
著者:武田一義
出版社:白泉社(ヤングアニマル誌 連載中)
コミックス:ヤングアニマルコミックス2巻まで発行(続刊予定)
まずペリリューについて10行以内で説明したいと思います。
ペリリューは南太平洋のパラオの島です。
ここで太平洋戦争末期の1944年9月から11月にかけて日本軍と米軍との間で地上戦が行われました。
この戦いで日本軍は、いわゆるバンザイ突撃による戦法を取らず島を要塞化して徹底した持久戦を行いました。
その結末として日本軍は壊滅したものの、長期的に米軍を苦しめた戦術は後の硫黄島の戦闘へと引き継がれていきます。
もちろん、このような簡便な解説でお伝えできるような、あっさりとした出来事ではなく、ほとんど狂気のような戦場がそこにはあったわけです。
この作品では、その戦場を描いています。
(1)リアルな絵柄では無理だろう
武田一義さんの絵柄はキャラクターが三頭身の「ちんまい」デフォルメで描かれています。
この絵柄だから成立する作品だろうと思います。
戦場をリアルな絵柄(極論すれば写真)で伝えようとすれば、おおよそ公共に公開するにはあまりにも過激で現代人の相当な割合の人が拒絶しかねないものになるだろうと思います。
なので、ある程度リアルな絵柄では(公開する作品としては)描けないモチーフが沢山あるだろうと思います。
デフォルメは、その問題を解決するための一つの手法になっていると思います。
(手前味噌で恐縮ですが、僕の作品は、あの絵柄でもなお「全ては描けない」と判断しておりまして、それゆえに読者の想像力を頼るというポリシーを取っています)
(2)そう言えば・・・
この作品、登場人物がほとんど全員男じゃないか!?
女性はペリリュー島の先住民として1コマくらいには出てきたと思いますが、あとは兵士だけです。
(3)死亡フラグをへし折る理不尽
死亡フラグって言葉があります。
もともとはゲーム用語から派生した言葉でして、キャラクターが死ぬ条件を満たしたことを「死亡フラグが立った」などと言います。
良くある例は「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ」と言ってた同僚は死ぬというパターンで、「俺、この戦いが終わったら結婚する」ってセリフを言った時点で"死亡フラグが立った"となります。
無粋な言い方ですが"ありがちな(もっと乱暴に言えば陳腐な)ドラマ"の展開を揶揄してたりもします。
だからこそ、最近の作品では「死亡フラグ」を立てて読み手に「この人死ぬな」と思わせつつ、実は死なない・・・っていう展開も見かけます。
"死亡フラグを折る"などと言ったりします。
前置きが長くなりました。
「ペリリュー」でも、主人公の同僚が、死亡フラグとも思われるセリフを言います。
ややネタバレしますと、そこから連想される死亡フラグは「折れ」ます。
でも・・・その後起こるのは、まことに理不尽な出来事です。
(4)理不尽がドラマをぶち壊す
第一巻の時点で登場するキャラクターは個性的でクセが強い者が多いです。
そして、これだけクセが強いキャラが揃えば、少年向け作品だとチームが結成されたり対立が起こったりしてドラマが生まれそうなのですが、この作品ではドラマが・・・生まれるんだけど展開しません。
何故かと言うと、ドラマとかが深化する前に「死んでしまう」から。
しかも、おおよそドラマチックとは言い難い死に方をする。
なお、主人公をはじめ何人かは第一巻の時点では死にません。彼らがこれからドラマを繰り広げるのかもしれませんが・・・
ここで疑問・・・
果たしてドラマは展開するのだろうか?
というのも、この作品はドラマがなくても成立してしまっている。
現実の戦争ではドラマみたいなことは起こらない。
むしろ理不尽が空間を征している様に思われるんです。
著者はあとがきで「戦場のリアルを描く」をテーマにしていると述べています。
理不尽がドラマをぶち壊す・・・これもその一環なのかなと考えました。
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