配送会社からの2度目の請求を振込み明細書を写真で送った。
入金を確認したら連絡する、と返事が来た。
翌日返事がきた。
嫌な予感はしていたが的中した。
荷物に大量のお金が入っている、100万円超えたら違法になるのを知っていましたか?しかし、政府関係者からのようで理由を書いた書類もある。しかし、日本の税関は厳しくなかなか荷物を出してくれない。そのためにまたお金が420万円必要と。
これが最後の支払いだというから本当かと聞くと本当だ、荷物は安全な場所で管理している。
そのお金を払えばすぐに送ることができると。
私は男にどういうことだ、こんな話聞いてない、と激怒したが、私にもわからない、どうして私だけがこんな思いをするんだ、運が悪いんだと、そしてお願いだからそのお金を、振り込んでほしいと。
私はさすがにもうお金はない。母に借りるか警察に話すしかない、と言ったが、どうか言わないでほしい、でないともう終わりだ、と。
毎日、どうやってお金を捻出しよう、そればかり考えていた。
人は窮地に落ちるといろいろ考えつくようになるものだ。
自分が将来楽しみにしていた投資商品を仕方なく現金化したりして何回かにわけて振り込んだ。
配送会社に振り込んだと連絡すると、税関は土日は休みだから、週明けに連絡すると伝えてきた。
ほんとにこれで最後なら…届いたお金は実際どうしよう、もし男が銃撃でも受けて死んだら息子は私が引き受けるしかないのか、そんなことを考えていた。
男はもうすぐここから解放されて帰ることができそうだから、そしたら息子と一緒に日本に行き、私のところにも会いにくる、といった。
だから、それまでもう少しだけ頑張ってくれと。
週があけた。
配送会社からトドメの連絡がきていた。
今度は日本税関が調べたら金貨銀貨がたくさん入っている。
それに対しての関税572万円が必要だと…さすがに血の気が引いた。
何も考えられなくなった。
支払いの準備ができたら連絡をくれ、口座を教える、と。
すでに現金なんぞ空っぽ。
保険や国債にまで手を付けたくなかったし、すぐには現金化でになかった。
私はとうとう母から預かったお金と息子の貯金に手を出してしまった…
そのお金は2箇所のATMから3日にかけて振り込む予定だった。
そして、2回目の振込みのあと銀行から電話がきた。
ATMから毎日多額の現金を振り込んでいるようなので何のお金なのかと思い電話しました、と。
私はとうとうバレた…という気持ちで正直に話をした。
そして、明日で最後の振込みなので誰にも言わないでください、お願いします。と言った。
銀行員さんは、わかりました、一度電話切ってまた折り返しますので、と言って電話を切った。
その数分後、玄関のチャイムが鳴った。
警察の方が二人訪ねてきた。
銀行から連絡が入ったのだろう。
私は「…終わった…」と半分悔しく半分安心した気持ちだった。
振込明細書と通帳を見せた。
そして警察の方がこう言った。
「ロマンス詐欺ですね」
なんとなく聞いたことはあった。
他人事だと思っていた。
私はその詐欺に遭ったのだと気づくまで時間がかかった。
もはやなんの感情も沸かなかった。
警察の方が振込先の銀行の口座をすくに止める手配をしてくれた。
被害届も出した。
ラインの内容も全部データとして取り込んでいた。
あなたが悪いのではない、騙すほうが悪いのだから、自分を責めないで、変なことを考えないでくださいね、と言い残して警察の方は帰って行った。
私はなにをどう考えればいいのかわからなくなっていた。
ここまでなってはじめて詐欺だと気づいた自分って一体…