衝撃的なニュースが舞い込んできた。

日本人は外国ならどこでも行けると思っている人が多いが、観光ならともかく、いざその地で働きながらしばらく生活したいとなるとビザ(査証)が必要になり、そう思った途端ほとんどの国で実はかなり難しいということを知っている人は少ない。例えば、「アメリカやシンガポールで数年働いてみたいなあ」と皆さんが憧れたとしても、実際にはほとんどの人が不可能だということを知らないと思う。しかし、それが事実なのだ。ましてや他の国々の人たちならなおさらである。

そういう状況に対して、ものすごく先進的で画期的で挑戦的な制度を生み出そうとしている国がある。エストニアだ。

デジタル機器を仕事道具に、自分の住みたい場所へと移動しながら働くスタイルの人々を「デジタルノマド」と呼ぶが、そんな21世紀の新しいライフスタイルを志向する人々に対してエストニアが新しいビザを発行しようとしているのだ。その名もズバリ「デジタルノマド・ビザ」。

"The aim of a ‘Digital Nomad Visa’ is to enable digital nomads to work and travel in Estonia for up to 365 days. The visa would also give these digital nomads access to the Schengen Area (a zone comprising 26 European states that have officially abolished passport controls), thereby allowing them to travel in other EU Member States for up to 90 days."

「『デジタルノマド・ビザ』の目的は、デジタルノマドがエストニアで最大365日間働き、旅行できるようにすること。 そして、デジタルノマドが「Schengen Area(パスポートコントロールのない26のヨーロッパの地域)」を自由に行き来できるようにし、EU加盟国を最大90日間旅行することができるようにする。」

これがどういうことを意味するかわかるだろうか。これは明らかにEU以外の国の人々を対象にしているのだが、デジタルノマドを実践するような先進的な人々に対してエストニアを拠点に、EU内をかなり自由に行き来することができる「資格」を提供しようとしているのだ。

これは、類まれなる才能や能力と、世界で活躍したいという情熱や大志を持つが、たまたま生まれた国と行きたい国との間の移動の制約によってそれができずに歯がゆく思っている先進的な考えを持つ人々に対して、世界を股に自由に活躍する環境への門戸を開くことを意味する。

もしこれが実施されたら、世界中のそういった状況にある超優秀な人々が、エストニアに殺到するようになるのではないかと思う。

エストニアは人口140万人の小国だが、世界で最も進んだ電子政府や「e-residency」と呼ばれる世界のための電子国民制度/法人登記制度などで他の国々を圧倒している。その上にこのデジタルノマド・ビザが施行されると、もう一段さらに先を行くことになる。もはやワープと言っても過言ではない。

エストニアの人たちと話をすると、彼らの先進的なコンセプトにいつも頭がクラクラする。彼らは間違いなく21世紀に生き、これから進むべき未来がハッキリ見えているのに対し、エストニアにいる時の僕は、その中で20世紀に取り残されたままの浦島太郎のような気持ちになる。

エストニアは世界の先進的で超優秀な人々が所属したくなる環境を整備することによって、国を興そうとしている。彼らには未来がハッキリ見えているからこそ、このような大胆な政策を打ち出すことができるのだ。その証拠に、彼らはこのアイデアの発表をエストニア建国100周年のタイミングにぶつけてきた。

この差は今後、強烈な差になっていくだろう。エストニアから目が離せない。刮目して見るべし。

 

https://www.enterprisetimes.co.uk/2018/02/27/estonia-plans-digital-nomad-visa/

孫 泰蔵さんFB記事より

https://www.enterprisetimes.co.uk/2018/02/27/estonia-plans-digital-nomad-visa/