皇后杯4回戦 vs AC長野パルセイロ・レディース | Redの足跡 ~浦和レッズレディース~

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ほんの数分だったが、試合中に雪が舞う皇后杯らしい真冬のサッカー。

 

システムは4-2-3-1。

先週のリーグ戦で負傷交代した柴田がベンチ外で栗島が塩越とダブルボランチを組み、同じく先週の試合で痛めた様子のあった清家もサブから。菅澤のワントップの下に左から植村、猶本、島田が並ぶ。

またサブに佐々木が復帰し、伊能が日体大SMG横浜の選手として今大会にエントリーしているためGKの控えには天野選手兼GKアシスタントコーチが入る。

 

序盤から盤石の良い入りをみせるレッズレディース。

開始早々に右サイドから裏へ流れて飛び出した菅澤が高い位置でキープし、相手二人を引き付けたところで中央へ走り込んだ猶本にグラウンダーのパス。ペナルティエリア手前で受けた猶本がワントラップでエリア内に侵入し、ゴールやや右から右足を振り抜き逆サイドへと突き刺す。

 

その後もレッズレディースが主導権を握り続ける。

長短のパスを中央へサイドへと散らしてギャップを作り、これまでより裏への意識も強く感じられる。

 

特に目立ったのは菅澤、猶本、島田のコンビネーション。

ワントップの場合FWは中央に張って起点になるのが一つのセオリーではあるが、この試合の菅澤はツートップの時以上に前後左右に動き回り、菅澤が空けたスペースを猶本と島田が効果的に使っていく。3人の距離感も良く少ないタッチでパスが回り、そこにタイミングよく遠藤も絡んで相手を翻弄する。

狭くなったら一度下げて逆サイドへ展開するのは楠瀬監督になってから改善された点だ。

 

18分には中央からの浮き球のパスに菅澤が抜け出し右足で冷静に流し込み追加点。ゴール後には大怪我をして以来のスタメンボランチ出場でアシストを記録した栗島へと選手たちが駆け寄り祝福するシーンも見られた。

 

守備面でも攻守の切り替えが速く、加えて対人でのフィジカルでも上回るので長野は全くと言ってよいほど形を作れずレッズレディースが完全に試合をコントロールする。

 

パーフェクトな前半で折り返すはずだったアディショナルタイム、自陣深く右サイドから横パスを入れられると、ペナルティエリア手前を横切るように逆サイドへとボールが流れ、フリーで上がってきた奥津にペナルティエリア外からシャープに振り抜かれて失点。本当にもったいない失点で1点を返されて後半へ。

 

 

後半に入るとやや状況が変わる。

大宮戦、神戸戦とここ2試合のリーグ戦ではいずれも後半に入ると雑さが目立ったが、この試合でも同じような兆候が見られる。

雑というよりも相手の出方をみながら慎重に時計を進めるのか、アグレッシブに止めを刺しに行くのかチームとしての意思統一が感じられず、攻守が分離して間延びした様な状態となり、追加点を期待する中でやや焦れる様な時間が続く。

 

ただ、地力の差があり長野に主導権を譲るまではいかず、60分には再び栗島の縦パスに菅澤が今度はフィジカルで相手ディフェンダーを振り切り抜け出すと、得意のループシュートで追加点を挙げ2点差に。

 

ここでようやくレッズレディースも落ち着き、前半とは逆の左サイドが活性化。植村が何度か良い形で抜け出すも仕留めることはできず。

 

交代策はノックアウト方式のトーナメント初戦とあってかやや慎重で遅めとなったが、西尾と丹野にチャンスを与え、怪我から復帰の佐々木も慣らすことができた。

 

後半唯一のピンチも福田がナイスセーブで弾き出し、90分通してみると盤石の危なげない内容で皇后杯初戦を突破。

 

3-1の勝利。

 

 

前半の完璧な戦いぶりを追いながら、ようやく森前監督(前総監督)が蒔いた種が開花し始めたという思いが頭を巡っていた。

単なる流動性ではなく流動的な動きのコンビネーション、弱気なボール回しではなくゲームを支配するためのポゼッション、切り替えの意識だけでなく奪い切る守備。

3戦連続での後半の戦い方は改善する必要があるが、それでも大崩れすることはないだろう。

だからこそ今更ながら先週の敗戦は力及ばずではなくもったいないと言わざるを得ない。

 

 

2アシストの栗島とそれを決めた菅澤は言うまでもないが、選手個々にもスポットを当てたい。

まず抜群の存在感でタクトを振るったのは猶本だ。パスでもドリブルでもシュートでもチャンスを作り出し、さらに守備でもフィジカルで制すシーンが多くあった。やはりこの選手は中央が適正ポジションだと言ってよいだろう。

 

逆に目立たなかったことで存在感を示したのが塩越だ。

柴田不在の中でボールを良く触ってシンプルに散らし、守備でも的確にスペースを埋めて下支えした。

シュートゼロ、ドリブルで仕掛けるシーンもペナルティエリア内に走り込むシーンもほとんどなかったのは本来なら塩越らしくないのだが、よく我慢して役割を全うした。

 

それから驚きに近かったのは右SHでスタメン出場した島田だ。

ついこの間までは悪い意味で一人だけ浮いて見えていたのだが、この試合はチームに完全にフィット、狭い局面でも落ち着いてプレイし、守備でも良く戦えていた。この試合だけ見ると計算できるという印象を与えてくれた。

 

入団以来もっとも長いプレイ時間となった植村も特に後半になると得意の飛び出しやしつこい守備で存在感を示した。惜しいシュートもありチーム内の序列を考えると目に見えた結果が欲しかったが、左利きの左サイドとして可能性は示してくれた。

 

 

さて、難しいノックアウト方式の初戦、ホッとしているというのが正直な感想だ。

しかし今週末にはまたリーグ戦の上位対決が待ち構えており、ホームで勝ち切らなければならない試合だ。

自信と、同時に厳しさを持って臨んでもらいたい。

 

以上。