改めて今シーズンもよろしくということで、久しぶりに観戦記を書いていきたいと思うが、"今シーズンも"と書きながら違和感があるのは、もちろん今年からプロリーグであるWEリーグに参入するからだ。
チーム名も三菱重工業株式会社をネーミングライツパートナーに迎え三菱重工浦和レッズレディースという呼称になり、また昨シーズン女王という表現も正しくはない。
新たなステージの幕開けだ。
プロフェッショナルとして個人的にはクラブも選手も昨シーズンの延長線上という意識で臨んでほしくはないと考えている。
その観点ではウォーミングアップでピッチに出てきた選手たちが、一堂に笑顔でキラキラした目をしてしっかりと挨拶をしてくれたことには非常にポジティブな印象を受けた。
さて、プレシーズンマッチということで色々な視点で見るべきものがあるが、まずは試合自体に触れていきたい。
スタメンは年明けに全治8ヵ月の大怪我と発表された清家のところに長嶋を入れた以外は昨年なでしこリーグで戦ったガチガチのレギュラーメンバーだ。
監督交代は言うまでもなくライセンス都合であり、この試合もテクニカルエリアに出てピッチに指示を出すのは森総監督で、前半は楠瀬監督と頻繁にコミュニケーションをとる様子が伺えたが、後半の楠瀬監督はコーチの一人にしか見えず、やるサッカーとしても昨シーズンからの継続路線で間違いない。
試合の入り、緩さの感じられるレッズレディース。
繋ぎのミスが多く、奪われると仙台のシンプルな裏へのボールに突破を許し、あわやのシュートを池田の好セーブに救われるシーンも2度ほどあった。
これで中盤の重心が下がってしまい、後方でボールを保持するも菅澤との距離が遠くなり、厚みのある攻撃に繋がらない。
それでも仙台の左サイドの守備が甘いところを突いて右サイドからチャンスを作ると、相手陣内でのセットプレーも獲得しながら徐々に押し返し、試合は一進一退の膠着した展開へ。
新監督を迎え即戦力の補強も行った仙台は、攻撃では中盤でのショートパスで揺さぶって裏で勝負、守備では下がらずに前から奪いに行く戦い方が垣間見える。
繋ぎのサッカーならレッズレディースの成熟度が上でボール保持率は高いが、序盤に下がってしまった重心がなかなか前に向かず、単発で何本かの良い攻撃もあったが相変わらず厚みは出ない。
PKを菅澤が決めて先制すると、若干重さは取れた様に感じたものの、大きく流れを引き寄せるには至らずに前半終了。
後半頭から両チームとも選手交代。
個人的にはこの交代策がこの試合のハイライトだと考えるのだが、レッズレディースは右SBを長嶋から遠藤に、仙台は対面する左SHを福田から船木にスイッチ。
両チーム対面するサイドでの交代だが、レッズレディースは前半攻撃の糸口となっていた右サイドをバランス型から攻撃的にし、仙台は守備のときに単独で食い付いてマークの受け渡しがうまくできなかった福田のところに修正をかけた。
結果的には仙台の方に軍配が上がった形で、遠藤も何度かテクニックとスピードで見せ場を作ったが、結局追加点どころか右サイドを崩してのシュートシーンさえ作れなかった。
その後もレッズレディースは交代策を切るが、メッセージが伝わらずに良化しないのは昨年のなでしこリーグ時代からの最大の課題で、逆に仙台にミドルシュートや綺麗な崩しで決定機を作られ、ついには同点に追いつかれる。
最後は猶本が負傷し交代枠(回数)を使い切っていたため10人で戦うしかなく、低調な後半のまま試合終了。
1-1のドロー。
プレシーズンマッチはプレシーズンマッチ。代表活動でチームを離れていた選手も多く、チームとしても直前まで合宿を行っており、コンディションはベストとは思わないし試合勘もこれから上げていく段階で、技術的なミスや判断の遅れも多かったのは確かだ。
しかしそれは織り込んだ上で、試合の狙いや期待値に対しどれくらい達成できただろうか?
しかるべきチャレンジをして次に繋がる課題と収穫が得られたか?
打倒浦和で研究してくるライバルチームを凌駕するためのさらなる成長のプロセスは組み立てられているか?
何よりプレシーズンマッチと言えどもコロナ禍の中でチケット代を払って駆け付けた1500人の観客に対し、プロフェッショナルとして魅了するパフォーマンスを発揮できたか?
冒頭にも触れたが、昨年までの延長線上ではないという意識で、魅力的な選手へ、チームへと己を磨いていってもらいたい。
以上。