2016なでしこリーグ開幕戦 浦和レッズレディース vs 日テレ・ベレーザ | Redの足跡 ~浦和レッズレディース~

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■試合結果
2016年3月27日(日)13:04キックオフ・味の素フィールド西が丘

日テレ・ベレーザ 1‐1 (前半0‐1) 浦和レッズレディース

得点:7分 後藤三知、74分 隅田 凜(日テレ)



■スタメン
予想通りのスタメン。
岸川の抜けたボランチには栗島、左SHには筏井が入る。

サブでは臼井が外れて遠藤優が入ったところが想定外。


     吉良 後藤


   筏井      柴田
     栗島 猶本


北川 高畑 長船 乗松

        池田


サブ:平尾、長嶋、遠藤、長野、塩越、加藤、白木



■途中交代
68分:筏井 -> 白木
白木をトップに入れ三知を左SHへ移す。


76分:栗島 -> 長野
同ポジションでの交代。


84分:後藤 -> 塩越
同ポジションでの交代。



■得点シーン
7分:後藤三知
左サイドから中央に仕掛け、2次攻撃で空いた右サイドへ展開。
走り込んで受けた乗松が低いクロスを送ると、ニアの競り合いが抜けてきたところを中央の三知がワントラップしてシュート。
ジャストミートしなかったがGKの届かないゴール左に飛ばして吸い込まれる。


74分:隅田 凜(日テレ)
中央バイタルエリアからドリブルで仕掛けられ、寄せが甘くズルズル下がると右サイド裏へスルーパス。
切り込まれてシュート気味にグラウンダーのクロスを入れられると、中央の混戦から押し込まれる。



■試合内容
試合前、ピッチに現れた選手たちは非常にいい表情に感じた。
硬くなり過ぎず緩過ぎず、ちょうどいいといった印象。


また久しぶりに集うサポーターの雰囲気も上々で、選手のウォーミングアップが始まると恐らく初披露であろう池田咲紀子へのぎこちないチャントから始まり、今シーズンから変えたのかチャントがある選手には歌っていくスタイルで非常に良かったと思う。


さらに筏井に対してはジェフ時代と同じ独特のリズムのコールが引き継がれ、チームを出て行った選手のコールが変わって寂しい思いをするところに粋なはからい。
しかもどすの利いた2発目まであって筏井本人も照れ笑いをしているように見えた。


コーチが石原さんに代わり選手たちのウォーミングアップメニューもやや変わったが、一番変わったのは選手にしっかりと声を出させること。

元気な声を出した後に笑顔がこぼれるなど外からコーチを連れ来た良い効果であり、期待した変化をもたらしてくれた。


最後に両チームサポーター同士の掛け合いでスタンドにも笑いがこぼれると、選手もサポーターも久しぶりの公式戦キックオフに向けて心身のウォーミングアップ完了といったところ。



さて、前置きが長くなったがようやくキックオフ。


レッズレディースはキックオフ直後から非常に最終ラインを高くし、コンパクトな中から猛烈にプレスをかける。
中盤も4枚フラットに並び、特に栗島朱里の運動量と恐れずに突進していく姿勢が目立った。

時にCBが相手陣内でアタックするほどの押し込み具合で、あたふたしたベレーザに繋ぎのミスが起きるなど、飛ばし過ぎの感はあるものの上々の立ち上がり。


勢いのまま7分に先制点を奪うとその後もしばらく攻勢が続くが、時間を決めていたのか先制したからか15分ぐらいから徐々にペースを落としていく。


しかしこのペースダウンにより形成が一気に逆転する。


コンパクトさは保たれてるもののブロック内に入ってくるボールに対し球際の対応がルーズになりパスを繋がれ始める。
加えてベレーザは阪口選手が最終ラインまで降りて組み立て始め、プレス回避のため長いボールを混ぜながらセカンドボールに前向きにアタックする戦術転換をしてきた。


対するレッズレディースは球際の甘さに加え自陣ゴール前で味方同士が譲り合うようなシーンが何度も起こり、何とか掻き出すので精一杯の状態。

ベンチからはしっかり声を出せとの指示が飛ぶがピッチ内はなかなか修正できずに中盤もズルズル下がり、逆に三知と吉良が単独でフォアチェックに行くから中盤とのギャップをいいように使われ、セカンドボールも拾われる。


これに対してもベンチから「(単独で)追いすぎるな」「(FWの1枚が中盤の位置まで)落ちろ」との指示が飛ぶが修正できず。

30分くらいからガス欠の兆候も見え始め、攻撃に出る余力は全くと言っていいほどなくなる。


いつ失点してもおかしくない状況を何とかしのいで前半が終了。


後半が始まるとFWと中盤の分離は修正され、さらに左右もコンパクトにしてブロックを作る。

しかし1枚上手だったのはベレーザの方で、左右のコンパクトさを見透かしたように両サイドがワイドに開いて横の揺さぶりをかけてくる。


左右のスライドでスタミナを奪われると、緩んだバイタルエリアで前を向かれるようになる。


交代策として白木を準備するが、直後に栗島が足を痛めたような素振りを見せて一旦ウエイト。
代わりに長風を準備させるがスタッフ陣がすぐに投入と勘違いして交代用紙を提出。
監督はあくまで準備をして様子を見るつもりだったようで交代が取り消される。


その後、栗島に「ダメだったら言え」と声をかけながらしばらく様子を見て、ようやく予定していた白木を投入。
筏井を下げて三知を左SHに据える。

しかし、フォワチェックでバテバテの三知は気持ちに身体が追いつかない様子。


流れを変えられずに同点に追いつかれると、ここで長風を栗島に代えて投入。
長風にどんなプレーを期待したか不明だが、中盤全体が押し下げられた状態では活きない。


さらに三知に代えて塩越を準備するが、ここでも投入直前に北川が痛んでウエイト。
トレーナーから×が出て、塩越を北川との交代に変更し、指示を送ってタッチライン際まで出るが、×が出たはずの北川が立ち上がってピッチに戻る素振りを見せたのでもう一度ウエイト。
トレーナー陣の対応が曖昧で苛立ちを見せる吉田監督が北川に「やれるなら早く入れ」と叫び、北川が入るのを見て再度交代用紙を三知に書き換えて塩越を投入。


それでも流れは大きく変わらず押し込まれる状況が続き、北川や塩越の個人の推進力で何度かチャンスを作りスタンドも沸いたが、試合終了間際の塩越の突破からのクロスも、大外から飛び込んできたハナのシュートは力なく防がれ試合終了。


先制して同点にされたというより、逆転されずに何とか勝点1は死守したという内容。



■まとめ
非常にコンパクトな陣形からのプレスはプレシーズンの終盤に取り組んでた内容で、ある程度機能してベレーザを押し込み先制点も奪えた。


課題はまず球際の甘さだろう。
ベンチからも修正の指示が飛んだにも関わらず対応できなかったのは反省材料で、ピッチ内での修正力はここ3年間ずっと課題のままだ。


次にハナと筏井の両SHがあまり目立たなかったように思う。
要因を分析するとサイドで起点を作るより奪って縦に速く攻める狙いが優先されたこと、1週間前のTRMで前半早くに退いたハナのコンディションとジェフ時代はあまりなかったであろうコンパクトな中での細かい繋ぎに対する筏井の適応、そして大きな要因は両サイドへ大きな展開を作っていた岸川の抜けた穴だ。

岸川の役割は猶本光に期待するが、猶本は広い視野とキックの精度を持ちながら、気持ちがゴールへ直線的に向かう選手なので、チームとしてどうマネージメントするかが問われる。


さらにツートップのコンビネーションについても動きの約束事がなかなか見えてこない。
後で触れるがベレーザはオフザボールの動きの連動が非常に巧みであり、その差がそのままシュート数の差に表れたと考えてよいだろう。


そして最も課題と感じるのは守りたい時の交代策。
残り10分を切れば5バックという引き出しがあるが、70分から80分くらいの時間帯をしのぐために中盤を固める策がなく、この試合でもその時間帯に失点した。

登録選手を見渡しても中盤で守備力の高い選手は見当たらず、どんなケースでも長風を投入するしかないのが現状だ。

中盤を5枚にしたり、乗松や北川を中盤に上げてSBを投入する策なども考えてもよいのではないか。


今は我慢しようと思って我慢できるチームではなく、攻撃的交代で押し切る方が目先の勝点を奪える可能性が高いかもしれない。

しかし、シーズンを通して上を目指すなら、我慢するサッカーにもチャレンジして身に着けていくべきだろ。
そして取り組むなら開幕してすぐの今から始めなければ昨シーズンの二の舞となる。


この試合での選手交代についてはカードを切ろうとしたところに怪我が起きるという不運が続き、予定通りに交代カードが切れなかった事情は察するが、予定通りにカードが切れたら本当に試合の流れを変えられたかは冷静に見定めなければならない。
しかしながらデビュー戦となった塩越が気の強いプレーでチャンスを作ったのは好材料で、今後も大きな武器になることを期待させる活躍だった。


一方で北川の怪我に当たっての対応は非常に不満だ。
トレーナーが一度×の診断を下した後、曖昧なままピッチに戻ったように思う。
北川本人はガッツのある選手なので当然続行したい気持ちを示す。
監督も怪我のためにカードを切ることはしたくない。
ここは一度×を出したトレーナーがその判断に責任を持つべきで、すなわちピッチに戻るのを止めるか、続けられるならはっきりと○への変更を示すべきだった。
選手生命を預かる立場であることを自覚いただきたい。



さて、ベレーザについても触れておきたい。
試合開始直後こそプレスに苦しんだが、すぐに阪口選手が組み立てに入り、対応が緩慢なレッズレディースの最終ラインに長いボールを入れ始めた。
リズムを停滞させていた上辻選手をハーフタイムでスパッと代え、後半さらにコンパクトにして一枚岩になろうとするレッズレディースを横の揺さぶりで翻弄した。
選手たちの足元の技術も然ることながらオフザボールの連動が非常に洗練され、トップが裏へ引っ張り空けたバイタルアリアで他の選手が何度も前を向き、タッチライン際に釣り出したSBとCBの間に選手が走り込んで深いエリアに何度も侵入してきた。
このオフザボールの連動の差がそのままシュート数の差として表れていると言ってよい。


敵の状況までしっかりと把握した上での戦術転換と、下部組織からの一貫した育成によるチームコンセプトの浸透による連動性は我々も学ぶものがあるだろう。



冷静に分析すると収穫より課題を並べたくなるが、ベレーザとの対戦はいつも特殊な噛み合わせになるので、この1試合をもってチームの仕上がりや今シーズンの目指す方向性を判断するのは難しい。

1ステージ制に戻った今シーズン、昨年女王から勝点を奪えたことをまずは良しとして次節に繋げたい。



■その他
この試合、両チームのゴール裏に「女子サッカーを盛り上げ続けよう!!」という横断幕が掲げられた。
聞いた話ではサポーター同士の呼びかけで各スタジアム自分たちのチームカラーの同じメッセージが掲げられたとのこと。


話題となった宮間あや言葉の意図するところは異なると思うが、こういったことを足並みをそろえて瞬発的に出来るのもなでしこリーグに根付く文化の一端ではなかろうか。


いい時もあれば悪い時もある。
それは前進と後退ではなく浮き沈みと捉えるべきで、沈みながらも必死で浮かぼうとする、それもまた大いなる前進と呼びたい。



以上。