考察 RS前半戦得点パターン | Redの足跡 ~浦和レッズレディース~

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リーグ中断中に考察をいくつかやろうと考えていたのだけど、サボりモードに入ってしまい、この記事も8割方書いて放置状態だった。

破棄するのはもったいないので慌てて仕上げてみた。


レギュラーシリーズ前半戦のレッズレディース得点パターン分析。


なお、以下に特徴的なものとして抽出し考察していくが、過去のシーズンや他チームと比較したわけではないことをお断りしておく。



■得点数
9試合で13得点。
内訳は清家4点、吉良3点、岸川2点。

そして三知、長船、臼井、ハナが各1点づつ。
優勝争いが出来る成績ではないが、決して悪い数字とは思わない。
9試合で12失点の守備が1試合平均1失点以下に抑えられれば決して負け越すような得点数ではない。
もちろん攻守を切り離して考えることは難しいが、守備のリスクを負うような超攻撃的スタイルで失点しているわけでもないので、今の得点率をキープして失点を減らすことは非現実的な話ではないと考える。
しかしリーグ優勝へ向けてレギュラーシリーズ3位以上を目指すのであれば、さらに攻撃力の上積みも必要なのは間違いない。



■アシスト
こぼれ球に反応しての得点とPK,CK,FKを除く7得点中3得点を柴田華絵がアシスト。猶本、吉良、北川、ながふうが各1アシスト。
アシストではないが得点の流れに絡んだり、得点に繋がるセットプレーを奪取したものも含めると、柴田華絵は全13得点中7点に絡んでいる。
ハナのアシストはすべてペナルティエリア内の深い位置からのクロスであり、ここから見えてくるポイントは、ハナの守備の負担を如何に減らすかということだろう。

ただし、あくまで単純に得点を増やすならという話であり、ハナの運動量の伴った切り替えの速い守備は非常に効いており、ハナの守備の負担を減らすためにはもう一人ハナが必要な状態だ。

私はこのハナの守備能力は活かすべきと考えており、仮に1試合2得点平均を目標としてあと5得点をハナ以外で補うとすると、猶本にもう1アシスト、三知、千佳、サイドバックに1アシストずつ、セットプレーからもう1得点くらい期待したいこところだ。



■セットプレー
PKから2点、CKから2点、FKから1点。
PK以外の3得点は猶本のCKから長船の頭、栗島のFKから吉良の右足、猶本のCKのこぼれを臼井が押し込んだ形。
吉田監督が就任した当初はセットプレーの改善にも着手し、高畑が連続ゴールするなど大きな得点源となっていた。
しかし2014年シーズン後半辺りからその得点力には陰りが見え始め、高畑のゴールなんてもう長いこと観ていない。
直近では何本ものチャンスがありながら物に出来なかったベレーザ戦、高槻戦も印象に残っているところ。
キッカーを任されていた藤田のぞみが離脱したところから得点が減り始めているが、テクニカルには説明できない。
また今シーズンはここぞという時の勝負強さが光った堂園彩乃が引退し、大いに期待していた長船も離脱してしまった。

キッカーは栗島と北川に固定されつつあるが、可能性のあるシーンはほとんど観られず、何度か試みたトリックプレーは惜しいシュートの形までも至らなかった。
苦しい試合をものにしていくためにも、中断期間中にもう一度確認してもらいたいポイントだ。



■ペナルティエリア外からの得点ゼロ
元々ミドルシュートでの得点が多いチームではないが、1巡9試合を終えてペナルティエリア外からの得点がないのは寂しい限り。
チーム状態が良くないと大事に行きたいという気持ちが作用し、思い切ったシュートが出にくくなるのはよくあることだが、猶本や岸川の消極的判断にがっかりすることも何度かあった。
もちろんバランスが大事で、盛大に吹かしまくったり、しょぼいシュートが続けば、丁寧に繋げと言いたくなるのが外野の心情ではあるが、豪快なミドルシュートはサッカーの大きな魅力の一つだし、実際昨シーズンは開幕戦の猶本から始まり岸川や千佳、和田などに素晴らしいミドルがあった。

思い切ったシュートでスタジアムを沸かせて欲しいものだ。



■サイド攻撃からのダイレクトシュート
ここが一番特徴的に出ているところだ。
思えば今シーズンのオープニングゴールも、猶本のサイド突破からのクロスをハナが折り返し三知が押し込んだ素晴らしい得点だった。
全13得点中サイドを深くえぐってのクロスから4点、アーリークロスから2点、クロスのこぼれから1点、CK含むj横からのセットプレーから3点。
PKを除く11得点中10点が横からのボールを直接、またはそのこぼれからとなっている。
本当は一つ一つどのようにしてサイドを崩したか分類すべきだが、大雑把に言うとSBとSHで組み立てたというより、FWを絡めながら2列目からの飛び出しで裏を取ったイメージで、ながふうの飛び出しからハナがゴールした仙台戦の同点ゴールは象徴的なシーンだ。


サイド攻撃と関連して、PKを除く11得点中10得点がダイレクトシューであるのも非常に特徴的。
内訳はこぼれ球への反応が2点、セットプレーが2点、そして流れの中でピタリとクロスを合わせた得点が6得点ある。
こういう得点が奪えるのは繰り返しトレーニングを重ねた組織力の証明でもあると考える。
そのスピード、精度、コンビネーションをさらに磨いていってもらいたい。



■サイド攻撃以外のパターン。
サイド攻撃からほとんどの得点が生まれているということは、逆にその他のパターンがないということ。
サイド攻撃とセットプレー(PK含む)を除くと、自陣からのロングフィードに清家が抜け出した一本だけ。
ドリブルでぶち抜いたり、スルーパスやワンツーパスでの中央突破、ポストプレーの落とし、ゴール前での泥臭い粘りや相手のミスに付け込んだ得点はない。
またサイド攻撃も距離のあるクロスではなくペナルティエリア深くに侵入してのグラウンダーが多く、ミドルシュートからの得点がないことも踏まえると、得点するためにはペナルティエリア内まで良い形で侵入しなければならないことがわかる。

今後の攻撃力の上積みには中央からの崩しを期待したいところが、吉田監督は開幕前のトレーニングマッチから公式戦に入っても"狭いところに行かない"、"難しいことはしない"、"(サイドを)変えろ"という指示を徹底していた。
一方で、少し前のREDS WAVEで吉田監督は"中央を使うパターン"というニュアンスも話されていたので、中断明けの攻撃の狙いの変化にも注目したい。




■奪う位置、奪ってからの速さ
得点に至る攻撃が始まったシーン、守から攻への切り替えは最も重要な要素だと考える。
高い位置で奪ってからの速い攻撃は昨シーズンのストロングポイントの一つで、それを避けるためにベレーザさえもロングボールを多用する戦術を取った2014年シーズンRS第7節は衝撃的な試合だった。

統計的に今シーズンのこれまでの得点パターンがどうだったかは、なでしこTVがなくなったことで残念ながら分析が難しい。
印象としては得点シーン以外も含めて前線からの連動したプレスが機能した記憶は少なく、鴻巣でのベレーザ戦の前半に少しだけ良い時間帯があったか。

この中断期間中はまず走り込みから始めて、前線からの守備とそこからの速い攻撃を意識したトレーニングもしているとの情報もある。
ここが中断明けからの攻勢の重要なポイントだろう。



■個々の選手
個の選手の視点で見ていくと、清家は4得点しているが縦への突破力を活かした得点は1点だけ。第5節まで得点がなかった。
警戒されているのだから、受け手も出し手も昨シーズンより質の高いプレーが要求される。
昨シーズンのイメージで雑にでも縦パスを送れば清家が何とかしてくれるというのは通用しない。
また清家自身も昨シーズンを超える得点数を取ると宣言したのだから、さらなる成長を見せてもらいたいものだ。


上に挙げたサイドからの攻撃においてゴールにもアシストにも名前が出てこない千佳、猶本、白木。
千佳はボールのないところで中央寄りにポジションを取りSBのスペースを空けたり、高い位置でディフェンスラインと駆け引きする動きが目立つが、基本はワイドを取ってライン際で仕掛け、右サイドで組み立てている間にするするとペナルティエリアに入って得点するのが得意なパターン。
献身的にチームプレーに徹していることが逆に自身が機能しない要因になっている。
同じく個で仕掛けることが得意な北川との左サイドのコンビも含めて、ポジショニングと動き方をもう一度整理することが必要だろう。


猶本も悪い時の早く高い位置に入りすぎるパターンが多くみられる。
視野の広さと精度の高い中距離のキックが活きるポジショニングを基本とし、機を見て前線に飛び出す方が格段に活きるだろう。
気持ちが前に行ってしまう選手ではあるが、我慢する大人なプレーを期待したい。


白木は開幕戦こそ観客の心を掴む良いプレーを見せたが、その後はなかなか結果が出ない。
新加入の中では昨シーズンもプレーした平尾や清家、あるいは同リーグ内で移籍してきた長船とは異なり、高卒で宮城から出てきて高校生から社会人になり働きながらプレーしている。
即戦力との期待があるのは確かだが、ある程度我慢も必要だろう。
1ゴールでアシストゼロの後藤三知がなぜスタメンを張り続けているのか、常盤木の大先輩から学べるうちに大いに学んでほしい。




■時間帯別
ここまでの13得点中、試合前半での得点がどれくらいあるか。
答えは2点。
開幕戦のオープニングゴールとエルフェン埼玉戦でのFKからの吉良の同点弾のみ。
11得点を試合の後半に挙げている。
体力面で後半アドバンテージがあるようにも見えず、昨シーズンの清家のように交代の切り札が機能しているとも思わない。
また試合前半で2点しか取れていないことから容易に想像できるが、今シーズンリードして前半を折り返したことは1度もない。
イメージとしては点を取らなければならい状況になってようやく仕掛ける勇気が出始める印象だ。

後半に点が取れていることはポジティブではあるが、前半に取れていないこと、先に失点してしまうことの方が大きな課題であり、試合の入りのメンタルマネージメントはチームとして考えていかねばならない。



■まとめ

キーワードを抽出して並べるとあたりまえの軽い内容になってしまうのでやめておくが、私が重要だと考えるポイントは攻守の切り替えと仕掛けの勇気だ。

そしてその2つの言葉から直感的に思い浮かぶチームが1つある。

浦和レッズ男子トップチームだ。

守から功の切り替えが速く、中央への縦パスがズバズバ入る。ロストしても功から守への切り替えに自信があるから、勇気をもって仕掛けられるという好循環。

素晴らしい手本がすぐ近くにいる。

そして学ぶのは個の技術でもチーム戦術でもなく意識の部分だ。


レギュラーシリーズ後半は闘えるチームとして進化してもらいたい。

そして素晴らしい得点が数多く生まれ、良い結果に導いてくれることを期待する。


以上。