レッズレディースの2014年シーズン振り返り。
今回はボランチについて。
猶本光と藤田のぞみでスタートした今シーズン。最終的に岸川奈津希と柴田華絵で終えることになろうとは。
のんについてはレギュラーシリーズ第6節までスタメンフル出場しリーグ序盤の好成績を牽引。勤務先であるサイデン化学特別協賛の国際親善試合バレンシアCFフェミニーノ戦にもフル出場してPOMとなるなど順調なシーズンの滑り出し。
猶本も開幕戦での2得点から始まり素晴らしい活躍でアジアカップの代表にも呼ばれた。
一方で岸川はプレシーズンのスタメン争いに敗れ開幕からリザーブでスタート。最初の3試合は短い時間ながら途中出場していたが、第4、5、6節と出番なし。
リザーブの中でも栗島の序列が高まり始めていた。
吉田監督はボールをシンプルにテンポよくさばける選手、運動量があり機動力も高く、動きながらしっかりとボールを扱える選手を好み、そういう面では岸川よりのんと猶本の序列が上なのは受け入れなければならない現実であった。
加えて岸川は大学を卒業し社会人になる年だったはずで、環境の変化からくるストレスも全くなかったとは言えないだろう。
しかし、アジアカップのブレイク明けとなった第7節のベレーザ戦で状況が一変。のんが欠場し岸川にスタメン出場の機会が巡ってくる。
加えてこの試合ではCBでフル出場を続けていた乗松も欠場。
さらに栗島が1点リードの後半途中に投入されるも、アクチュアルプレイングタイムおよそ3分で負傷退場。
リードしてはいたが、嫌な雰囲気に包まれる。
そんな中で存在感を見せたのが岸川。
栗島が退場して6分後の82分に2点差に広げる貴重な清家の追加点をアシスト。1得点に絡み、無失点勝利に貢献した。
この頃は季節もちょうど暑くなり始めで気温への身体の適応が難しい時期でもあり、加えて岸川にとってはこれまでリーグ戦は途中出場のみで最後の出場から2ヶ月近く空いていたのだが、90分間よく戦い抜いて結果を出した。
その後、栗島はそのベレーザ戦の怪我で離脱。のんも仙台戦で途中出場したものの再び離脱。
ボランチのポジションは猶本と岸川の2枚に託されることとなる。
それから本格的に暑い季節に入り、相手チームも首位レッズレディースを研究して立ち向かってくる中で、チームは苦しみながらも首位をキープ。
吉田監督は運動量が求められるボランチを頑なに岸川と猶本の2枚で固定して戦い続けた。
しかし、またも岸川に大きな試練が訪れる。
レギュラーシリーズ優勝を最終節でさらわれて、悔しさを胸に臨んだエキサイティングシリーズ初戦。
神戸を1点リードして迎えた最終盤。あのスローインからの流れで取られた岸川のハンドによるPKだ。
94分に同点ゴールを奪われ、気持ちを新たに臨んだエキサイティングシリーズ初戦を後味の悪いドローで終える。
相手チームのアンフェアなプレーと審判への憤りでスタンドが騒然となる中、岸川は自らのPK献上に人目をはばからず涙を流した。
だが、ここでも岸川は自身の力でその試練を跳ねのける。
その次のベレーザ戦で先制点をあげ勝利に貢献。
ペナルティエリア外からハーブボレー気味で突き刺したシュートは"気持ちでねじ込んだ"としか例えようがないゴール。その気持ちを理解するチームメイトたちから祝福を受けるシーンはとても感動的で、今この記事を書いていても鳥肌が立つ。
その後も岸川はスタメン出場を続け、シーズン終盤になるにつれ調子も上がり、猶本も離脱してしまう中でリーグ優勝、ネスレカップ3位、皇后杯準優勝に貢献。
終わってみれば全公式戦でのボランチとしての出場時間はチーム最長。チームはリーグ最少失点。自身は公式戦6ゴールを挙げるという活躍。
皇后杯ではながふうがユースチームに登録されたことにより、唯一最後まで残ったボランチとなった。
もしも岸川がいてくれなかったら今シーズンのレッズレディースはどうなっていただろう。
逆にもしのんや栗島、猶本が怪我なくシーズンを全う出来ていたら、岸川の今シーズンはどれほどのものになっていただろう。
怪我した選手たちは本当に残念だが、これも一つのドラマ。
それを生んだのはボランチ岸川奈津希の意地に違いない。
以上。