"Popin' in Paris"は2024年10月に購入したCDの中の一枚です。偉大なアルトサックス奏者キャノンボール・アダレイが自身のクインテットを率いて1972年のパリ・ジャズ・フェスティバルに参加した時のオランピア劇場でのライブ。パーソネルは、ジュリアン・キャノンボール・アダレイ(アルトとソプラノ・サックス)ナット・アダレイ(コルネット)、ジョージ・デューク(キーボード)、ウォルター・ブッカー(ベース)、ロイ・マカーディ(ドラムス)。このアルバムはフランスの名プロデューサー、アンドレ・フランシスがORTF(フランス放送協会)と録音していた未発表テープを「ジャズ界のインディ・ジョーンズ」と評されているゼブ・フェルドマンがリマスターしてエレメンタル・ミュージックからCDとヴァイナルで2024年に公式リリースした作品です。
キャノンボール・アダレイは私の好きなプレイヤーです。彼のリーダー・アルバムとして真っ先に浮かぶのはブルーノートの”Somethin' Else"ですが、これはマイルス・デイヴィスがコロンビアとの契約で自分名義にできなかったので、キャノンボール・アダレイ名義として出したということになっています。しかし、キャノンボール・アダレイのショーピースもあり、彼とマイルスが対等な立場で作ったアルバムと私は信じています。ただ、冒頭の「枯葉」でのマイルスの存在感があまりにも強烈で、これがこのアルバムの価値を不滅のものとしていることも事実です。
この"Popin' in Paris"を買おうと思ったきっかけは、NHK-FMのJAZZ TONIGHTでパーソナリティの大友良英さんが紹介していたのを聴いたことです。この日は前述のフェルドマンがプロデュースした近作を特集していて、このアルバムの演奏が私の好みに合うエレクトリックを取り入れたモダン・ジャズでした。大友さんのコメントにもジョージ・デューク(私の好きなプレイヤー)の存在が、このアルバムの魅力の一つと言われていました。
ここでのキャノンボール・アダレイは、”Somethin' Else"から14年くらい後のものですが、相変わらずフレージングが力強さと美しさを兼ね備え、ロック調のビートでも違和感を感じさせない素晴らしいものです。また、パリでの演奏だったからでしょうか、ここでも「枯葉」を取り上げていますが、弟のナット・アダレイがコルネットを吹いているので、マイルスの演奏とは対極のアップテンポのスリリングな演奏となっているのが面白かったです。買って良かった。
総合的な評価 録音 4/5 演奏 4.5/5 装丁・リブレット 5/5
注 なお、同じフェルドマンがプロデュースしたORTF録音の1969年のライヴ”Burnin' In Bordeaux”もリリースされています。こちらは未聴ですが、キーボードがジョー・ザヴィヌルなので、きっと良いと思います。