BLACK GATE  デラックスT&Tレビュー翻訳② ルールブックの内容 | TRPG読み専の隠れ家

 ◆ルールブックの内容

 

よろしい。さて、最初に、デラックス・トンネルズ&トロールズはデラックス(豪華)です。 それは分厚い本です。 主にモノクロではありますが、複数のカラーイラストを含む368ページ、PDFとソフトバックおよびハードカバーの物理書籍バージョンがあります。見栄えの良い本です。 カバーアートは象徴的で独創的なリズ・ダンフォースによるもので、私などには、これぞトンネルズ&トロールズ、と感じられます。彼女のイラストは本全体を飾り、以前のT&T製品の古いクラシック作品と新しいまたは今までに見たことのない作品とを結びつけています。スティーブ・クロンプトンによるアートワーク(トロールワールドの美しい地図を含む)とロブ・カーバーによるクラシック。 テキストは、 T&Tの創造者ケン・セント・アンドレ、リズ・ダンフォース(彼女は第5版と同じ美しい明瞭さと正確さでゲーム全体を編集しました)、そしてジェイムズ(ジム)・“ 熊の”ピータース(彼は伝説的な「ベア・ダンジョン」の製作者です)。 このゲームはフライング・バッファロ―社のリック・ルーミスによって公開されています。彼はこの新バージョンに資金を提供した、非常に成功したキックスターターも運営していました。

 

ただ、たしかに大きな本ではありますが、デラックス・トンネルズ&トロールズのサイズは少々欺瞞的です。印刷は多くのハードカバー本のそれよりも大きく、そして紙は厚く、もっと切り詰めるプロデューサーならおそらく内容を約2/3のサイズに絞り込めたでしょう。しかし、T&Tはこれまで常に大きく、元気がよく、親しみやすいものでしたので、 DT&Tの膨張した感じはそこによくフィットしていると言えます。しかし、これは念頭に置いておいていただきたいのですが、DT&Tは言葉数の多い、凝った文章で書かれた本ではありません。非常に完成度の高いゲームではありますが、ルールは実際には簡潔で、複雑ではなく理解しやすいものです。

 

まず、この本の3分の1以上は「トロールワールド」、DT&Tの背景設定、およびサンプルアドベンチャーに費やされています。 D&Dと同様に、T&Tはモジュラー型のオープンなFRPGで、自作されたものを含むあらゆる設定で使用できます。 実際、その歴史の大部分の間、T&Tには公表された公式の世界設定はありませんでした。 トンネルズ&トロールズ(および、ケイシアオム社の素晴らしいストームブリンガー第1版を含む他の多くのゲーム)の尊敬すべき創造者であるケン・セント・アンドレは、長年にわたり公開されてきた多くのソロアドベンチャーとGMアドベンチャーの中でT&Tの世界設定をそれとなく示しては来ましたが、その膨大な量に渡る詳細についてはこれまで公開されていませんでした。 カザン、クノール、コースト、恐怖の街、ベア・ダンジョンなどと呼ばれる、じれったくなるような手がかりはありました。しかし、T&Tをプレイした私たちのほとんどは、これらの場所を私たち自身のキャンペーンの一部として組み込むか、世界全体の地理や歴史とは関連を持たない単なる一回性のものとして扱うかのいずれかにしていました。

 

それがいまや! デラックス・トンネルズ&トロールズは、本当に初めて、トロールワールドの十分に詳細な設定情報を公開しました――豪華なフルカラーの世界地図(スティーブ・クロンプトン作)、カザン、クノール、コーストといった各都市の、その地下に広がる領域まで含めた地図、そして55ページにわたる、世界の3大大陸と無数の島々と群島についての地名辞典と解説文。 それは見るに楽しく、そして古参プレイヤーの目からみても十分に満足のいくものです。

 

私なら別のやり方をしていたであろうこともいくつかはあります。例えば、縮尺表記のない世界地図は最近かなり一般的に見えますが、私はすべてのマップに明確なスケールを付けます (私はマッパーです。そのため、この種の詳細は重要なのです)。さらに、私ならいくつかの冒険のフックを地名辞典の中に散りばめていたかもしれません。しかし、それはうわべの装飾に関わる話です。この資料は本当に素晴らしいと思います。

 

そして、本の3分の残り3分の2、ページ1から226までがあります。あなたがT&Tの前の版を知っているならば、あなたは構造に精通しているでしょう。最初は「基本ゲーム(ルール)」です。T&Tのゲームの基本にして全体――キャラクター作成、行為判定、戦闘、魔法、モンスター、マスタリングなど――ですが、これは155ページの長さで、10ページの呪文索引がついています。 もう一度言います。ゲーム全体で155ページ、親しみやすいタイプです。 他のゲームならおそらく100ページにテキストを圧縮するでしょう。そしてそれは30数ページの、呪文に関する説明文を含んだうえでの話です。

 

言い換えれば、 DT&Tには山ほどのルールはありません。 基本的にそれは単純なゲームです。しかし、それは柔軟で直感的で、そして即応的な判断とあらゆる状況への応用に向いています(T&TにSF、現代スパイ、そしてポストアポカリプス物のバージョンが存在することは故のないことではないのです)。 HeroQuest 、Fate 、Savage Worlds 、または「オールドスクール・ルネッサンス」に属するいずれかのゲームのファンであれば、ここには多くの賞賛に値するものがあります。 あなたはたぶん1、2分の読書で、T&Tをプレイするために学ぶべきルールの全てを拾うことができるでしょう。

 

本の次の3分の1、166から226ページは、「詳細ルール」と呼ばれ、 T&T第5版の同じ名前のセクションに似ています。基本的に、ハウスルール、ヴァリアント、およびゲームへの追加モジュールの格納庫です。怪物的なキャラクター、言語、騎乗動物、宝物決定チャート、キャラクターの「タイプ」のための高度なルール( D&Dのキャラクタークラスよりも少し原型的ですが、大体似ています)などを含みます。 ゲームを遊ぶために必要不可欠なものではありませんが、あなたが導入を望むのであればいつでも使うことができます。

 

そして最後に、この本の最後には2つのアドベンチャーが含まれています。1つは基本的に死んだキャラクターのための「アビスにて」というソロアドベンチャー、もう1つは「ゾルの奥地へ」というGMアドベンチャーです。 個人的に私は「アビスにて」は導入用のソロアドベンチャーにはあまりふさわしくないように思います――それは少しばかりニッチで、そして他のソロのようにトロールワールドの雰囲気を感じさせません。私ならおそらく「ゴブリン湖の冒険」のようなものを選んだでしょう。しかし、どちらにしてもそれは良いアドベンチャーではあります。

 

「ゾルの奥地へ」は面白い冒険です。 私の最初の直感は、フライングバッファロー社の人たちは、たとえば彼らの象徴的なGMアドベンチャーである『ベア・ダンジョン』などを選ぶべきだったのではないかということでした。しかし良く考えてみると、それは良くないアイデアだったでしょう――第一に、「ベア・ダンジョン」はコアルールブックに収めるにはおそらく長すぎます。第二に、それは少々オールドスクールすぎるとも言えます――本質的には生のままのダンジョン巡りですから。 「ゾルの奥地へ」は、「イーグル大陸」の都市ズカリアでの社会的交渉、ゾルの内陸部を踏破する旅、そして最後のダンジョンでの冒険の3部構成の冒険であり、そのそれぞれが、DT&Tのルールが再現できる様々な側面のショーケースとなっています。 それはケン・セント・アンドレによるT&T作品への素晴らしい追加であり、そしてそれはうまく機能するように見えます。

 

これが本の概要です。 足りないものはありますか? まあ、ないことはないかもしれません。 つまり、この本にはモンスターの百科事典は含まれていません。その欠如は興味深い決断です。 以下に述べるルールの概要からわかるように、 T&Tは非常に詳細なモンスターデータには依存していません。そうしたデータを使用することもできますが、する必要はありません。 代わりに、対戦相手は単一の「モンスター・レート」(または「MR」)という数値を使って、たとえば「MR20」(平均的な人間のようなもの)から「MR500」、モリアのバルログ、さらには悪竜スマウグのような怪物までもが表現されます。

 

「詳細ルール」内に、50から60種類のモンスターがそのモンスターレートと出現数とともにリストアップされたワンダリング・モンスターの表がありますが、正直なところそれがあなたが必要とするものの全てです――もしもあなたが「MR25のオーク」以上のことを知る必要があるのにそれができないほどオークというモンスターに不案内なのであれば、代わりにあなたがもっと慣れ親しんでいる数多のモンスターの寓話や伝説を参考にすることもできます。そこにはきっと、あなたがこのゲームで必要とする以上の数のモンスターたちが存在していることでしょう。

 

さて、見たところおそらくフライングバッファロー社はモンスター事典に関するプランを持っているようです。私が思うにそれはこのゲームのプレイに必須ではないまでも、クールで使い勝手が良く、DT&Tのルールがモンスターを使ってどんなことができるのかの素晴らしいショーケースになっているものと思われます。その詳細は下記をご覧ください。