かまちゃんの話…


かまちゃんはダイゴ似のイケメンダンサー


ちょっと中性的な男性

かまちゃんが今のマンションに住む前


六畳一間のボロアパートに住んでいた…


先輩が新しい所に引っ越すので 実家を出たばかりのかまちゃんに声がかかった


これは好都合と二つ返事で先輩の後へ引っ越す事にした…


下見もせずに…

家賃家¥は4万5千円

バストイレ付きで
この家賃かなりお得


そのアパートは二階建てで かまちゃんの部屋は一階の奥から二番目…


窓を開けると すぐ前を電車が通る


電車が通るたびアパート全体が少しゆれる…音もすごくて、通っている間はテレビの音も聞こえなくなる…


なるほど安いはずだ…

アパートの住人は、学生がほとんどだが 同棲中のカップルがいたり
水商売で働く女性もいたとか…


アパートは10室 全室詰まっている…


住み慣れると電車の音も少し揺れる部屋も気にならなくなる…


ただかまちゃんの部屋には最初からもう1人住人がいた…


かまちゃんより先に部屋に住んでいたのだから我慢ショック!するしかない

その住人は 30前後の男性でいつも部屋の隅で壁に向いて背中を丸めて座っているらしい

別に何かを訴えてくるわけもなく
ただひたすら壁に向いて背中を丸めて座っているだけなので
その存在さえ無視すればいいのだから気にも止めなかったらしい…


ただ、おかしな事に月のうち1日か2日 必ず決まった日に姿が見えなくなる…


その事だけが気にかかっていたそうだ…


次回つづく…
いつものように
プレイルームで
待っていた…

カウンセリングを終えた 1人の男子が入ってくる


名前はOくん…歳は 見た感じ幼く見えるけど、たぶん 自分より二つ三つ年上かな…

何も喋らず…

何も見ない…

ソファーに腰掛けて 右手の爪を噛んで まばたきする時 顔を天井に向けてパチパチパチパチッと連続でやっている…



最初は変なヤツ~
とか思ってたけど…


しばらくボォーっとしていたら…


歌が聴こえる…


何の歌だろ~


小さく口ずさんで聴こえてくる


歌詞を聞いて…
あっ!!子守唄だ!!

はよねろ なかんで おろろんばい
??…


その時は 初めて聞いた歌だったので何の子守唄か
わかんなかったけど 島原の子守唄のようです…


どこの子守唄?


よく知らないけど
これはね 僕のお婆ちゃんが教えてくれた歌


お婆ちゃんは
九州の佐世保市にいるんだ



Oくんは爪を噛んだまま…


しばらくすると
Oくんの お母さんがカウンセリングルームから出てきた…



Oくんの隣に座って…
爪を噛む手をグイっと引っ張って


やめなさい…
って一言


Oくんは天井を見上げ まばたきして また爪を噛む



注意してもやめないのよ~
なんて ニコッて笑いながらOくんの お母さんが
自分に話かけてきた…


ハハツて 愛想笑いをして やり過ごした…こうゆう時って何て答えたらいいのかわかんないし めんどー




ぼくも 何て言えばいいのか
よく悩むよ
でも悩んでる内に相手がどんどん
違う話してくるから ついてゆけないんだよね
だいだい
この人~
人の話ぜんぜん
聞かないしね~
まあゆっても
わかんないだろうけどね…



今しゃべってる事そのまんま声に出せばいーじゃん


Oくんは生まれた時から泣かなかったらしい…


ん~簡単にいえば…
感情をうまく表現できないようだ


今は自閉症という診断で ここへ通っている…


と言っても 中身はいたって正常なのだ


喜怒哀楽もちゃんと持っている


ただ それを感情として表に出せないだけなのだ


なぜそうなのかなんて自分にはわからない
だいたいOくん自身にもわからないんだからわかるはずもない…


ただOくんが
こういう事を背負って生まれてきたのには
意味があるのだ



Oくんは子供の頃からここへ通っている

自分が通いだしたのは中1の終わりからだからOくんと知り合ってから まだ日が浅い…この時は 確か4回目ぐらいだっただろうか…

確か初めて会った時から話しをしていた…


最初はOくんの方から話かけてきた


話かけられて 初めは無視していたが お構い無しに話してくるので 一度うるさいんだけどむかっ って声に出して言ったら
Oくん自身の話に答えたのは自分が初めてだったから逆にOくん自身がびっくり!!して


それからどんどん話すようになって



Oくんは昼間は養護施設へ通っていて 卒業後はクリーニング工場に就職する為 今は職業訓練を受けている…


プラモデルを造るのが好きで 零戦とかいう飛行機を半日で完成させたとか…いろんな話をしてくれた



人に自分自身の事を話したりする楽しさで
いっぱいだったんだと思う…


自分はいつも聞いていた…
でもOくんの話を聞くのは凄く疲れる…



ほおっておくと 調子に乗って自慢話ばかりになってくる…

母親が隣にいる時は
母親の悪口ばかり…


しまいには 自分自身の事を代わりに代弁してくれないかとまで言い出した


だんだん うっとおしくなって…


自分はOくんをわざと避けたり
一緒になっても話を聞かないように頭の中をシャットアウトした…


その時の自分は 子供だったし 自分自身もOくんと同じ欠陥人間だとひねくれていたので Oくんを傷つけることなど何ともおもわなかった…
本棚の陰に
しゃがみこんで
身を潜めている
女の子
目には涙がいっぱいで今にも こぼれ落ちそう…


どうしよう
一緒に連れて出ようか…


ドアドアは 自分のすぐ目の前にある…


本棚はドアドアに向かって右側



考えるより
早く行動した方がいい よし!


と思った瞬間
ドーンと体に衝撃があり 全く体が動かない


耳の奥が
びーんとなって
聞こえていた音が遠くに こもったような 眠くて気が遠くなるような変な感覚になった

目の前に あの看護婦が 立っていた…


だめだ…
つかまった…


背筋から脂汗出てゾワッーて鳥肌がたつ…


本棚の方を見ると女の子も こちらの様子を見ている

怖くて動けないのか…
今のうちに部屋を出ればいいのに…

妙な正義感が湧いてきて

ググっと顔を上げて思い切り キッと睨んだ…


睨んだものの
看護婦は自分の事は目に入らないのか…


片手で手を伸ばしたり縮めたり


……?


何かしている様な仕草 だけれども自分の上には何もない…


ただの壁に向かって何してんだろう自分の目の前にはチューブが足元までさがっていた



もしかして…これは夢かも…と
ふと思い
時間を確認
左手首をゆっくり回して腕時計腕時計を見ると4時半だ!!

さっき見た時も4時半だった…
やっぱ夢か…


夢にしては超リアルで
この重苦しさは
何だろう



手を伸ばすの大変だったけど何とか指先が垂れているチューブに
かかった…
それを指先で挟んで手のひらで
ぎゅっと握った



本棚の女の子を見ると 立っていた

よし 逃げるのか…と思った


それまで気がつかなかったが
立っている女の子の着ている服…


冬なのに 半袖ブラウスを着て 下は長ズボン
しゃがみこんで
いる時は見えなかったが
右腕が…ない…


看護婦は作業?を終えたのか
クルッと回って
本棚の方へ行き
女の子の前に片膝をついて座り
女の子は コクンコクンとうなづいている……


座った看護婦の片膝をついた方の足の 立てたかかとの靴の裏が白衣から少し見えている
見えた部分の靴裏は溝もなくツルツルだった…


検定試験会場での体験の後、なるべく細かく見るように注意していた

そうすれば後で夢かどうか判断しやすいからだ…

一年余りカウンセリングを受けてきたので この時の自分はカウンセラーの言うように
情緒面で このような幻覚を見てしまうのかも知れないと自分の体験に疑いをもっていたのです…



靴裏を見ているうちに気が遠くなって 気づいた時
ソファーに座ったまま眠っていたようで…


パッと腕時計腕時計を見ると4時半だった…やっぱり さっきのは夢だったのか
プレイルームを見回すと本棚のかげには誰もいない


反対側では 一畳ほどのスペースで女の子が遊んでいた…


でもね…

やっぱり夢じゃなかったの…

自分の手の中にねチューブがあったんです…