「すいません、先生」
「ごちそおさまでしたあ」
お店を出ると、リオと、酔っ払いの西川さんが、センセに頭を下げる。
「大友さん、大変申し訳ないが、その酔っ払いをお願いしますね」
「はい、大丈夫です」
リオが西川さんとしっかり腕を組みながら言い切った。
「リオならだいじょぶだと思いますよ。シラフだし」
あたしより、ちょっと背の高いセンセを見上げながらあたしが言うと、センセは少し安心したような表情になった。
「では、気をつけて」
「はい。おやすみなさい」
空いている方の手を小さく振って、リオが西川さんを引きずって駅に向かって歩き出した。
ついていかなくちゃ。
あたしもセンセに挨拶しようとして、もう一度センセを見上げた。
優しい笑顔と目が合うと、センセが先に言った。
「安倍野さん。もう少し・・・お付き合いいただけませんか?」
「え・・・や・・・えっと・・・」
「冷たいものでもいかがです?」
「・・・え・・・と・・・」
冷たいものに魅かれたんじゃない、と、思う。
なんでだか自分でも理由はわからないけど、あたしはセンセから視線を逸らせてしまった。
「い・・・いですよ」
俯き気味に返事をすると、センセの声が遠慮せずに弾んだ。
「ああ、よかった」
・・・まただ。
顔を上げてセンセを見ると、さっきよりも表情がやわらかくなっている。
あたしは、ほっとした顔の、ずいぶん年上のオジサンを、かわいく思った。
この人は、普段そんなに笑わない?
うそだあ。
「ああでも、この時間だと、もうそれだけのお店は開いていないでしょうね。お誘いはしたものの・・・」
今度はしかめっ面になって言う。
表情だってよく変わるじゃん。
うそだよ、取っ付きづらいなんて。
「いいですよ、センセ。そこにファミレスあるでしょ?あそこで、アイスとかは?」
「でもそれでは・・・」
「ううん、シャーベットがあれば、あたしはそっちの方が好きだけど」
お店の質の問題を、食べたいモノのハナシにすりかえてみた。
もう一度、センセが笑顔になる。
「そうですか。では、お好みのシャーベットがあるといいですね」
すぐそこのファミレスまでを、センセとあたしは、ゆっくりと並んで歩いた。
あたしは別腹ってヤツにオレンジシャーベットを詰め込んで、前回より更に満足して家に帰った。