追想) 追想~あなたが居た頃~ 9 | オトナになっても

オトナになっても

□■□ 「起承転結」こちらで完結することにしました・長編は「書架の背表紙」(目次)からどうぞ □■□

 「すいません、先生」


 「ごちそおさまでしたあ」


 お店を出ると、リオと、酔っ払いの西川さんが、センセに頭を下げる。


 「大友さん、大変申し訳ないが、その酔っ払いをお願いしますね」


 「はい、大丈夫です」


 リオが西川さんとしっかり腕を組みながら言い切った。


 「リオならだいじょぶだと思いますよ。シラフだし」


 あたしより、ちょっと背の高いセンセを見上げながらあたしが言うと、センセは少し安心したような表情になった。


 「では、気をつけて」


 「はい。おやすみなさい」


 空いている方の手を小さく振って、リオが西川さんを引きずって駅に向かって歩き出した。


 ついていかなくちゃ。


 あたしもセンセに挨拶しようとして、もう一度センセを見上げた。


 優しい笑顔と目が合うと、センセが先に言った。


 「安倍野さん。もう少し・・・お付き合いいただけませんか?」


 「え・・・や・・・えっと・・・」


 「冷たいものでもいかがです?」


 「・・・え・・・と・・・」


 冷たいものに魅かれたんじゃない、と、思う。


 なんでだか自分でも理由はわからないけど、あたしはセンセから視線を逸らせてしまった。


 「い・・・いですよ」


 俯き気味に返事をすると、センセの声が遠慮せずに弾んだ。


 「ああ、よかった」


 ・・・まただ。


 顔を上げてセンセを見ると、さっきよりも表情がやわらかくなっている。


 あたしは、ほっとした顔の、ずいぶん年上のオジサンを、かわいく思った。


 この人は、普段そんなに笑わない?


 うそだあ。


 「ああでも、この時間だと、もうそれだけのお店は開いていないでしょうね。お誘いはしたものの・・・」


 今度はしかめっ面になって言う。


 表情だってよく変わるじゃん。


 うそだよ、取っ付きづらいなんて。


 「いいですよ、センセ。そこにファミレスあるでしょ?あそこで、アイスとかは?」


 「でもそれでは・・・」


 「ううん、シャーベットがあれば、あたしはそっちの方が好きだけど」


 お店の質の問題を、食べたいモノのハナシにすりかえてみた。


 もう一度、センセが笑顔になる。


 「そうですか。では、お好みのシャーベットがあるといいですね」


 すぐそこのファミレスまでを、センセとあたしは、ゆっくりと並んで歩いた。



 あたしは別腹ってヤツにオレンジシャーベットを詰め込んで、前回より更に満足して家に帰った。