こんにちは
感染症研究所ホームページの感染症週報は、2024年32週の速報データが更新されました。
このブログでは、国立感染症研究所ホームページに公表される感染症発生数の情報を元に、当院のある神奈川県の感染症発生状況をお知らせさせて頂きます。
記事の後半に、増加傾向にある感染症や予防のための注意点をまとめていますのでそちらもお読み下さい
公表されているのは、現在から約2週間前の数値ですが、おおよその流行状況を把握することができます。
※速報値のため、再集計の後に修正されることがあります。
尚、神奈川県以外の地域については文末のリンク 1からご確認いただくことができます。
【2024年 第32週 (8/5-8/11の神奈川県の感染症発生動向】
(便宜上、一般の患者さんの生活に密接した疾患のみをピックアップしています)
※ ( )内は同年第1週からの累積数です。
「増減」には、前の週と比較して1週間当たりの発症数が増えた場合は+, 減った場合は-を付けた数字を示しています。数が前週と同じものには+, - を示していません。
* 新型コロナウイルス感染症の報告数については、全数把握疾患ではなくなったため、定点把握疾患の項目に含めることになりました。
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定点把握疾患(週報告)(神奈川県):
※ ( )内は定点医療機関当たりの報告数
【 】内には、前の週と比較して1週間当たりの合計定点報告数が増えた場合は+, 減った場合は-を付けた数字を示しています。数が前週と同じものには+, - を示していません。
定点報告は県内すべての発生数を網羅してはいないので、報告数が無し(-)でも0件を意味しません。そのため、「-」の週からの増減数は示していません。
* 新型コロナウイルス感染症の報告数については、定点報告になりました。
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まとめ:
新型コロナウイルス感染症の発生数は2023年19週以降は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類定点把握対象疾患に移行したため、県内の発生数の全数の把握はできなくなっています。
18週はGWで検査数が少なかったせいか減少傾向だったのですが、19-30週はずっと増加傾向が続いていましたが、31-32週は減少しました。今後も注意が必要です。
自身や家族が感染しないために、日頃から感染予防の心がけを続けることがとても大切です。
新型コロナウイルスが5類感染症となり、マスク着用も緩和されていますが、新型コロナウイルスの感染しやすさが変わったわけではありません。人が多い室内・近くで声を出す活動をする環境で長時間過ごすときは、マスク(可能なら不織布マスク)を着けて生活しましょう。マスクから鼻が出ないようにしましょう。
体調が悪い時は無理して外出や登園・登校・出勤をせずに自宅で休むようにしましょう。
ご家庭では石鹸やハンドソープによる手洗い、外出先では消毒用アルコールによる手指消毒をし、規則正しい生活をして体調を整えて過ごし感染予防に努めましょう。
公費負担での小児の新型コロナワクチンの接種は、2024年3月いっぱいで終了しました。
過去に感染したことがある人が再度感染することもありますのでマスクや手洗いなどの基本的な対策は継続しましょう。
新型コロナウイルス感染症については、公的サイトもぜひご確認下さい。
結核は2023年の1年間で神奈川県内で累計954件の発生がありました。
2024年の32週は、前週同様二桁の発生数が認められました。上下しながら推移しています。
日本では、結核の発生が現代でもまだみられます。BCGの接種対象月齢のお子さん(1歳未満)は忘れずに接種を受けましょう。
2023年の神奈川県の腸管出血性大腸菌感染症の全数報告数は、合計326件でした。
2024年の16週は前週から増加し5件の発生登録がありました その後も32週まで2-6例ずつ、ほぼ毎週報告例が出続けています。
牛肉などはしっかり中まで火を通して食べましょう。生の肉を触ったトングや箸を使って、焼けた肉を取り分けるなども汚染の原因になりますので生の肉と焼けた肉は別々のトングや箸で扱うようにしましょう。生野菜は、よく水洗いしてから食べましょう。
神奈川県の百日咳の登録は2023年の1年間で48例あり、2022年の1年間の発生数の2倍以上になりました。2024年も発生が続いており、30週には6例、31週にも2例、32週には7例の百日咳の登録がありました すでに累計59例になっています。
2023年は破傷風の登録が1年間で5例の登録がありました 。2024年は、8週に1件、21、23週にも1件の破傷風の登録がありました
5種混合(百日咳・破傷風・ジフテリア・不活化ポリオ・Hib)の対象月齢のお子さん(生後2か月~)は忘れずに接種を受けましょう(すでに4種混合で接種開始した人は4種混合+Hibで規定の回数の接種を受けましょう)。
小学校高学年が対象となる2種混合(ジフテリア・破傷風)も、免疫を持続させるために大切です。忘れずに受けて頂けますようお願いします
就学前に、任意接種(自費)ではありますが3種混合(百日咳・破傷風・ジフテリア)と不活化ポリオワクチンの追加接種を受けておくと、免疫をしっかり長続きさせることが出来ます。ぜひ接種をご検討下さい。
2023年の神奈川県の麻しんの発生数は合計1例、風しんの発生数は合計2例でした。今月になり、国内での麻疹の発生が次々に報告されています。14週は、神奈川でも1件、麻疹の登録がありましたが、15週には累積0になっていたため、詳しい検査の結果、麻疹ではなかったようです。 麻疹は非常に感染性が高く、免疫がない場合は小児だけでなく大人も感染します。
今後も流行を阻止するために、麻しん・風しん混合ワクチンの2回接種の接種率を社会全体で高い水準に維持することが大切です。
25週に、風疹の登録が1件ありましたが、26週は累計0となっていたので、取り下げられたようです。
1歳と、6歳(年長さん)で定期接種(無料)として受けられる麻しん・風しん混合ワクチン(1期・2期)は忘れずに受けましょう。
上記の年齢で2回のワクチンを受けられず現在に至っている方(大人も含む)は、自費となりますがぜひ接種を検討下さい。
※麻疹が発生したというニュースが出ていたため、急に接種希望者が増え、ワクチンが入手しづらくなっています。定期接種以外の方は、予約のうえ、入荷を待っていただくことが多いです。
21週と27週に、侵襲性髄膜炎菌感染症の報告がそれぞれ1例ずつありました 無症状の人も保菌しているため、寮生活や合宿が多い方は、予防接種をお勧めします。1回接種で済みますが、自費のため費用はある程度かかります。
感染性胃腸炎は18週はGWで検査数が少なかったせいか大幅に減少し、定点あたり1台となりましたが、19週は定点当たり2以上、20-23週は定点当たり3以上に戻り、24週はさらに増えて定点当たり4となっていました。30-32週は減少傾向となりました。感染性胃腸炎をきたす病原体には複数のウイルスがあり、それをまとめて集計しています。ノロウイルスが有名ですが、それ以外の病原体も含まれます。
吐物や下痢から感染しますので、感染予防のためにオムツ交換後やトイレから出た後・食事の前には毎回、石けんやハンドソープで手をよく洗いましょう
インフルエンザは2023年52週までは定点あたり19を超えていました.
2024年1週は定点あたり7台と減少しましたが、お正月で医療機関がお休みのところが多かった影響で集計が減ったものの、2週には定点あたり11と増加しそれ以降大幅な増加が続き、6週は定点あたり27を超えていました。7-9週は大幅に減少しましたが、10-11週は増加し12-24週は大幅に減少し、25週-27週は増減を繰り返していますが、定点当たり1未満となり流行は収束しています。28週は少し増加し29-32週は減少しました。
インフルエンザの予防にはマスク・手洗い・十分な換気が有効です。十分注意して過ごしましょう。
RSウイルス感染症は2023年20-25週にかけて大きめの流行となりました。その後は減少し、2024年にかけて少なめで推移しています。12-16週は、週を追うごとに増加傾向を認めていましたが、17週は少し減少しました。18週はGWで検査数が少なかったせいかさらに大幅に減少しましたが、19-20週は増加しました。22-23週は減少していますが、24-26週は横ばい、27週はやや大幅に減少傾向となりました。28週は横ばい、29-32週は減少しました。昨年は夏に流行があったので今後も経過に注意が必要です。
RSウイルス感染症は、特に0-1歳で呼吸状態が悪化しやすい感染症です。2歳以上では再感染のことが多く、0-1歳よりは軽症と考えられますが、発熱が長引いたり咳が悪化する場合もあります。
お子さんの息がゼイゼイして苦しそう、顔色が悪い、ミルクや母乳の飲みが悪いという場合は早めに小児科の受診をしましょう。
プール熱(咽頭結膜熱。アデノウイルスによる感染症)は昨年から多めで推移していましたが、2023年の49週以降は概ね減少傾向です。2024年の6週も前週と比較して減少傾向でした。7週-18週は増減を繰り返し、19-20週はやや大幅に増加しています。21週は横ばいでしたが、22週は大幅に増加し23週も引き続き増加傾向となりました。24週はほぼ横ばいでした。25-26週は少し減少しましたが、27週は増加傾向となりました。28-32週は減少が続いています。
咽頭結膜熱は、のどと目が赤くなり、高熱が長く(5日以上など)出るのが特徴です。咳を伴うことも多いです。感染力が強いため、症状が治まってから二日間休んだのちに登園・登校する必要があります(特効薬はありません)。
手洗い・マスクが予防のために重要です。
溶連菌感染症は2023年19, 20週は一気に増加しその後は増減を繰り返していました。2023年末の時点で定点あたり3を超えておりかなり多めで推移していました。2024年の17週は、定点あたり3を超えて多めに推移していましたが、18週はGWで検査数が少なかったせいかいきなり大幅に減少し定点当たり1を割りこみましたが、19週は再び増加し20週はさらに大幅に増加して定点当たり3を超えました。21週は横ばいでしたが、22週は増加しました。23-26週は減少しましたが、27週はやや増加傾向となりました。28-32週は減少しました。今後も注意が必要です。
溶連菌感染症は、A群β溶結性連鎖球菌がのどや皮膚に感染し発熱・咽頭痛、場合により発疹や腹痛・嘔吐が伴いますが通常は咳は出ません。飛沫で感染しますので、マスクと手洗いが感染予防に有効です。
感染した場合は、リウマチ熱を予防するために抗菌薬を飲んでしっかり治療する必要があります。
劇症型連鎖球菌感染症の増加も報じられており、神奈川県では32週も5例の登録がありました
水痘(水ぼうそう)は18週も2桁の発生がありましたが、減少傾向を認めました。19週は大幅に増加しました。20週はかなり減少しましたが、21週は大幅に増加しました。22週は少し減少しましたが、23週はまた少し増え、24-25週は減少しました。26週は大幅に増え、27-28週はやや減少していました。29-30週は横ばい、31-32週は減少傾向でした。全体的には多めに推移しており、今後も注意が必要です。
定期接種の年齢(1歳~2歳)のお子さんは、忘れずに水ぼうそうの予防接種を2回受けましょう。それ以上の年齢でも、自費での接種を受けることは可能ですので、まだ感染していない人はご検討下さい。
水ぼうそうは軽い病気と思われていることもありますが、脳炎や脳症の合併を含め重症化するケースもあります。「かかっておいたほうがいい」という考え方は危険です。また、基礎疾患の治療などにより免疫が低下している人が水ぼうそうに罹ると生命の危険があります。社会全体で、水ぼうそうが流行しないようにするためにも、お子さんの水ぼうそうワクチンの接種をお願いいたします。
ヘルパンギーナの流行は2023年12月以降は大幅に減少し0に近くなり、流行はほぼ終息しているようでしたが、14週-19週は増減を繰り返していましたが、20週は増加傾向を認めました。21週は横ばいでしたが、22週は大幅に増加しました。23-28週も大幅な増加傾向が続いていましたが、29週からは減少傾向となり、30-32週は大幅に減少しました。
手足口病(エンテロウイルスによる咽頭炎・四肢を中心とした発疹をきたす疾患)の発生数は増減を繰り返しておりましたが、19-21週は増加傾向となり、22-28週は週を追うごとに大幅な増加が続いていましたが、29週からは減少傾向となり、30-32週は大幅に減少しました。
一般的にヘルパンギーナや手足口病を含む感染症は「夏かぜ」と言われ夏季に大きな流行を認めることが多いのですが、2023年からは気温が下がってきてからも、多くの発生がみられました。
これらの発熱性疾患の多くがエンテロウイルス系によるもので、3,4日で解熱することがほとんどですが、場合によっては無菌性髄膜炎をきたすこともあります。高熱に頭痛・嘔吐を伴うときは受診しましょう。
いずれも、予防にはマスク・手洗いが有効です
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の定点あたり発生数は、2024年19-23週にかけて横ばいで経過していましたが、24-25週は増加しました。31週は減少し32週は横ばいでした。
おたふくかぜは、ムンプスウイルスによる感染症で飛沫から感染します。発熱、耳や顎の下の腫れで発症しますが、無菌性髄膜炎や感音性難聴などの合併症も生じうるため、あなどれない感染症です。
予防のためには、おたふくかぜのワクチンを受けることが大切です。1歳から接種できますが、多くの自治体では自己負担が必要です。当院でも予約を受け付けていますので、ご検討下さい。
16週は、伝染性紅斑(りんご病)が急に増加傾向を認めました。17-20週は、増減を繰り返しています。21週は大幅に増加しましたが、22-28週は上下しながら推移していました。29-32週は上下しながら推移しています。今後の推移に注意したいと思います。
29週から、マイコプラズマ感染症が増加傾向です。32週は大幅に増加しました。Mycoplasma pneumoniaeという細菌による感染症で、幼児~小中学生が感染することが多です。発熱や長引く咳が特徴で、時には肺炎になることがあります。飛沫と、比較的濃厚な接触により感染します。発熱や咳のある人との密着を避け、マスク・手洗い・十分な換気を行い十分注意して過ごしましょう。
突発性発疹はその性質上、基本的に季節性の流行はありません。
(県内の詳細は、リンク3を参照下さい)
【データをご覧になる際の予備知識】
感染症発生数の報告は、全数把握疾患(全国で発生したすべての症例を数える)と、定点把握疾患(あらかじめ指定された医療機関からの報告症例を数える)があります。
定点は報告する疾患によって5種類(インフルエンザ定点、小児科定点、眼科定点、STD定点、基幹定点)があります。指定医療機関の数は地域の人口によって決められています。 神奈川県では、インフルエンザ定点185、小児科定点233、眼科定点52、STD(性感染症)定点70、基幹定点12の機関が指定されています。(当院は定点機関ではありません)
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今後もご注目下さい
次回の更新予定は8月31日ごろです(国立感染症研究所の更新日の後です)。
リンク:
1.国立感染症研究所ホームページ IDWR速報データ 2024年32週
2.神奈川県衛生研究所ホームページ 感染症情報センター 感染症発生動向調査