こんにちは
感染症研究所ホームページの感染症週報は、2024年2週の速報データが更新されました。
このブログでは、国立感染症研究所ホームページに公表される感染症発生数の情報を元に、当院のある神奈川県の感染症発生状況をお知らせさせて頂きます。
記事の後半に、増加傾向にある感染症や予防のための注意点をまとめていますのでそちらもお読み下さい
公表されているのは、現在から約2週間前の数値ですが、おおよその流行状況を把握することができます。
※速報値のため、再集計の後に修正されることがあります。
尚、神奈川県以外の地域については文末のリンク 1からご確認いただくことができます。
【2024年 第2週 (1/8-1/14)の神奈川県の感染症発生動向】
(便宜上、一般の患者さんの生活に密接した疾患のみをピックアップしています)
※ ( )内は同年第1週からの累積数です。
「増減」には、前の週と比較して1週間当たりの発症数が増えた場合は+, 減った場合は-を付けた数字を示しています。数が前週と同じものには+, - を示していません。
* 新型コロナウイルス感染症の報告数については、全数把握疾患ではなくなったため、定点把握疾患の項目に含めることになりました。
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定点把握疾患(週報告)(神奈川県):
※ ( )内は定点医療機関当たりの報告数
【 】内には、前の週と比較して1週間当たりの合計定点報告数が増えた場合は+, 減った場合は-を付けた数字を示しています。数が前週と同じものには+, - を示していません。
定点報告は県内すべての発生数を網羅してはいないので、報告数が無し(-)でも0件を意味しません。そのため、「-」の週からの増減数は示していません。
* 新型コロナウイルス感染症の報告数については、定点報告になりました。
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まとめ:
2024年の1週は、お正月休み期間で医療機関が診療していないところが多かったせいか、前週と比較して急激に報告数が減少している疾患がいくつかありました。2週は、医療機関も通常通り稼働し始め、報告数が再び大幅に増えています。
新型コロナウイルス感染症の発生数は2023年19週以降は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類定点把握対象疾患に移行したため、県内の発生数の全数の把握はできなくなっています。
2023年47-51週からの発生数が明らかに増加傾向を認めていました 52週は微増、2024年1-2週は明らかに増加しました。今後流行がさらに拡大することが予想され、注意が必要です。
自身や家族が感染しないために、日頃から感染予防の心がけを続けることがとても大切です。
新型コロナウイルスが5類感染症となり、マスク着用も緩和されていますが、新型コロナウイルスの感染しやすさが変わったわけではありません。人が多い室内・近くで声を出す活動をする環境で長時間過ごすときは、マスク(可能なら不織布マスク)を着けて生活しましょう。マスクから鼻が出ないようにしましょう。
体調が悪い時は無理して外出や登園・登校・出勤をせずに自宅で休むようにしましょう。
ご家庭では石鹸やハンドソープによる手洗い、外出先では消毒用アルコールによる手指消毒をし、規則正しい生活をして体調を整えて過ごし感染予防に努めましょう。
生後6カ月~4歳および5-11歳の小児用新型コロナワクチンの接種は今も無料で受けられます。子供が新型コロナウイルスに感染した場合、軽症で済むことが多いのですが、中には重症化や死亡に至る例もあります。
オミクロン変異体の流行で小児の感染者が増えたため、重症化する子供の数も増えました。子供用の新型コロナワクチンは、発熱などの副反応は大人に比べるととても少ないです。感染による重症化予防のためにワクチンの接種をお勧めします。迷っている方は、小児科の主治医にご相談下さい。
接種済みの人が感染したり、過去に感染したことがある人が再度感染することもありますのでマスクや手洗いなどの基本的な対策は継続しましょう。
新型コロナウイルス感染症とワクチンについては、公的サイトもぜひご確認下さい。
結核は2023年の1年間で神奈川県内で累計954件の発生がありました。
2024年の1週は、すごく久しぶりに一桁の発生数となりました(お正月休み期間の影響でカウントが少なかった可能性があります)。2週は、昨年同様二桁の発生数に戻りました。
日本では、結核の発生が現代でもまだみられます。BCGの接種対象月齢のお子さん(1歳未満)は忘れずに接種を受けましょう。
2023年の神奈川県の腸管出血性大腸菌感染症の全数報告数は、合計326件でした。
2024年の1週の発生は0件でしたが、2週は1件発生がありました。
牛肉などはしっかり中まで火を通して食べましょう。生の肉を触ったトングや箸を使って、焼けた肉を取り分けるなども汚染の原因になりますので生の肉と焼けた肉は別々のトングや箸で扱うようにしましょう。生野菜は、よく水洗いしてから食べましょう。
神奈川県の百日咳の登録は2023年の1年間で48例あり、2022年の1年間の発生数の2倍以上になりました 2024年も、2週にすでに1件の百日咳の登録がありました。
2023年は破傷風の登録が1年間で5例の登録がありました 。
4種混合(百日咳・破傷風・ジフテリア・不活化ポリオ)の対象月齢のお子さん(生後3か月~)は忘れずに接種を受けましょう。
小学校高学年が対象となる2種混合も、免疫を持続させるために大切です。忘れずに受けて頂けますようお願いします
就学前に、任意接種(自費)ではありますが3種混合(百日咳・破傷風・ジフテリア)と不活化ポリオワクチンの追加接種を受けておくと、免疫をしっかり長続きさせることが出来ます。ぜひ接種をご検討下さい。
2023年の神奈川県の麻しんの発生数は合計1例、風しんの発生数は合計2例でした。
今後も流行を阻止するために、麻しん・風しん混合ワクチンの社会全体での接種率を高い水準に維持することが大切です。
1歳と、6歳(年長さん)で定期接種(無料)として受けられる麻しん・風しん混合ワクチン(1期・2期)は忘れずに受けましょう。
上記の年齢で2回のワクチンを受けられなかった方は、自費となりますが接種を検討下さい。
感染性胃腸炎は2023年52週は定点あたり7台でした。2024年1週は大幅に減少しましたが、お正月で医療機関がお休みのところが多かった影響で集計が減ったものの、2週には定点あたり6以上と、実際には流行は続いていたことがわかりました。
吐物や下痢から感染しますので、感染予防のためにオムツ交換後やトイレから出た後・食事の前には毎回、石けんやハンドソープで手をよく洗いましょう
インフルエンザは2023年52週までは定点あたり19を超えていました.
2024年1週は定点あたり7台と減少しましたが、お正月で医療機関がお休みのところが多かった影響で集計が減ったものの、2週には定点あたり11と増加しました。流行は続いていますが、年末よりは少し減っているようです。
インフルエンザの予防にはマスク・手洗い・十分な換気が有効です。十分注意して過ごしましょう。
RSウイルス感染症は2023年20-25週にかけて大きめの流行となりました。その後は減少し、2024年にかけて少なめで推移しています。
RSウイルス感染症は、特に0-1歳で呼吸状態が悪化しやすい感染症です。2歳以上では再感染のことが多く、0-1歳よりは軽症と考えられますが、発熱が長引いたり咳が悪化する場合もあります。
お子さんの息がゼイゼイして苦しそう、顔色が悪い、ミルクや母乳の飲みが悪いという場合は早めに小児科の受診をしましょう。
プール熱(アデノウイルスによる感染症)も多めで推移していましたが、2023年の49週以降は概ね減少傾向です。
のどと目が赤く、高熱が長く(5日以上など)出るのが特徴です。咳を伴うことも多いです。感染力が強いため、症状が治まってから二日間休んだのちに登園・登校する必要があります。特効薬はありません。
手洗い・マスクが予防のために重要です。
溶連菌感染症は2023年19, 20週は一気に増加しその後は増減を繰り返していました。2023年末の時点で定点あたり3を超えておりかなり多めで推移していました。2024年の2週は定点あたり2を超えており、今後も注意が必要です。当院では、陽性の人が幼児から小中学生を中心に結構います。
溶連菌の迅速検査キットが出荷調整となっており、どの医療機関でも品薄の状態のようです。当院でも在庫がなくなり、注文はしていますが入荷の見込みがありません。
当院では、診察での症状から溶連菌感染症の臨床診断となった場合は抗菌薬による治療を開始し、検査は咽頭ぬぐい液の培養検査を提出しています(結果判明まで数日かかります)。
溶連菌感染症は、A群β溶結性連鎖球菌がのどや皮膚に感染し発熱・咽頭痛、場合により発疹や腹痛・嘔吐が伴いますが咳は出ません。飛沫で感染しますので、マスクと手洗いが感染予防に有効です。
感染した場合は、リウマチ熱を予防するために抗菌薬を飲んでしっかり治療する必要があります。
水痘(水ぼうそう)の発生は2024年1週も引き続き2ケタの発生を認めました。お正月休みにも報告数が大幅な減少を認めておらず、2週も2桁の発生がありました。今後の流行拡大が心配です。
定期接種の年齢(1歳~2歳)のお子さんは、忘れずに水ぼうそうの予防接種を2回受けましょう。それ以上の年齢でも、自費での接種を受けることは可能ですので、まだ感染していない人はご検討下さい。
水ぼうそうは軽い病気と思われていることもありますが、脳炎や脳症の合併を含め重症化するケースもあります。また、免疫が低下している人が水ぼうそうに罹ると生命の危険があります。社会全体で、水ぼうそうが流行しないようにするためにも、お子さんの水ぼうそうワクチンの接種をお願いいたします。
ヘルパンギーナの流行は2023年12月は大幅に減少し0に近くなり、流行はほぼ終息したようです。
手足口病(エンテロウイルスによる咽頭炎・四肢を中心とした発疹をきたす疾患)の発生数は上下しながら、2023年52週~2024年1週にも発生が続いていました。2週は減少を認めました。
一般的にヘルパンギーナや手足口病を含む感染症は「夏かぜ」と言われ夏季に大きな流行を認めることが多いのですが、2023年からは気温が下がってきてからも、多くの発生がみられました。
これらの発熱性疾患の多くがエンテロウイルス系によるもので、3,4日で解熱することがほとんどですが、場合によっては無菌性髄膜炎をきたすこともあります。高熱に頭痛・嘔吐を伴うときは受診しましょう。
いずれも、予防にはマスク・手洗いが有効です
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の定点あたり発生数は2023年19週以降、増減を繰り返しています。
おたふくかぜは、ムンプスウイルスによる感染症で飛沫から感染します。発熱、耳や顎の下の腫れで発症しますが、無菌性髄膜炎や感音性難聴などの合併症も生じうるため、あなどれない感染症です。
予防のためには、おたふくかぜのワクチンを受けることが大切です。1歳から接種できますが、多くの自治体では自己負担が必要です。当院でも予約を受け付けていますので、ご検討下さい。
突発性発疹はその性質上、基本的に季節性の流行はありません。
(県内の詳細は、リンク3を参照下さい)
【データをご覧になる際の予備知識】
感染症発生数の報告は、全数把握疾患(全国で発生したすべての症例を数える)と、定点把握疾患(あらかじめ指定された医療機関からの報告症例を数える)があります。
定点は報告する疾患によって5種類(インフルエンザ定点、小児科定点、眼科定点、STD定点、基幹定点)があります。指定医療機関の数は地域の人口によって決められています。 神奈川県では、インフルエンザ定点185、小児科定点233、眼科定点52、STD(性感染症)定点70、基幹定点12の機関が指定されています。(当院は定点機関ではありません)
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今後もご注目下さい
次回の更新予定は2月3日ごろです(国立感染症研究所の更新日の後です)。
リンク:
1.国立感染症研究所ホームページ IDWR速報データ 2024年第2週
2.神奈川県衛生研究所ホームページ 感染症情報センター 感染症発生動向調査