流行中の感染症 2023年 第14週 | mikenecoのブログ

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横須賀市 馬堀小児科医院 院長のブログです。

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こんにちは桜

 

 

国立感染症研究所ホームページの感染症週報2023年14週の速報データが更新されました。

 

 

このブログでは、国立感染症研究所ホームページに公表される感染症発生数の情報を元に、当院のある神奈川県の感染症発生状況をお知らせさせて頂きます。

 

 

記事の後半に、増加傾向にある感染症や予防のための注意点をまとめていますのでそちらもお読み下さいウインク


 

公表されているのは、現在から約2週間前の数値ですが、おおよその流行状況を把握することができます。

※速報値のため、再集計の後に修正されることがあります。

 

 

尚、神奈川県以外の地域については文末のリンク 1からご確認いただくことができます。

 

 

【2023年 第14週 (4/3-4/9)の神奈川県の感染症発生動向】

(便宜上、一般の患者さんの生活に密接した疾患のみをピックアップしています)

 

 

※ ( )内は同年第1週からの累積数です。

「増減」には、前の週と比較して1週間当たりの発症数が増えた場合は+, 減った場合は-を付けた数字を示しています。数が前週と同じものには+, - を示していません。

 

* 新型コロナウイルス感染症の報告数については、神奈川県衛生研究所からの報告(リンク3)をもとにしています。なお、2023年から新型コロナウイルス感染症については累積数の入力を省略します(桁が多すぎるため)。

 

全数把握疾患(週報告)(神奈川県):

  14週 累積 増減
新型コロナウイルス感染症 3216   +779
結核 7 210 -8
腸管出血性大腸菌感染症 2 23 -1
劇症型溶血性連鎖球菌感染症 1 18  
侵襲性インフルエンザ感染症 0 6  
侵襲性髄膜炎菌感染症 0 0  
侵襲性肺炎球菌感染症 1 26 -1
先天性風疹症候群 0 0  
破傷風 0 0  
百日咳 0 12 -1
風しん 0 0  
麻しん 0 1 -1
     
 
     
     

 
     

定点把握疾患(週報告)(神奈川県):
※ ( )内は定点医療機関当たりの報告数

  【 】内には、前の週と比較して1週間当たりの合計定点報告数が増えた場合は+, 減った場合は-を付けた数字を示しています。数が前週と同じものには+, - を示していません。

定点報告は県内すべての発生数を網羅してはいないので、報告数が無し(-)でも0件を意味しません。そのため、「-」の週からの増減数は示していません。

  第14週 定点 増減
インフルエンザ  679 1.94 -376
RSウイルス感染症 25 0.11 +7
咽頭結膜熱(プール熱)   23 0.1 +4
A群溶連菌感染症 73 0.33 -20
感染性胃腸炎  590 2.63 -44
水痘  33 0.15 +26
手足口病  4 0.02 -4
伝染性紅斑(りんご病)  3 0.01 +1
突発性発疹   48 0.21  
ヘルパンギーナ   7 0.03 +5
流行性耳下腺炎 9 0.04 -1
細菌性髄膜炎 - -  
無菌性髄膜炎 2 0.2  
マイコプラズマ感染症  - -  
ロタウイルス胃腸炎  - -  
     


 
     
     
     
     
     

まとめ:

新型コロナウイルス感染症の発生数は2023年11週までは減少傾向が続いていましたが、12週は、11週からの減少幅がだいぶ少なく、13, 14週は増加に転じてしまいましたびっくり

 

(日々報じられる新規感染者数からは乖離がありますが、ここでは2週間前の数値をお示ししています)

 

自身や家族が感染しないために、日頃から感染予防の心がけを続けることがとても大切です。

マスク着用は緩和されましたが、新型コロナウイルスの感染しやすさが変わったわけではありません。人が多い室内・近くで声を出す活動をする環境で長時間過ごすときは、マスク(可能なら不織布マスク)を着けて生活しましょう。マスクから鼻が出ないようにしましょう。

 

体調が悪い時は無理して外出や登園・登校・出勤をせずに自宅で休むようにしましょう。

 

ご家庭では石鹸やハンドソープによる手洗い、外出先では消毒用アルコールによる手指消毒をし、規則正しい生活をして体調を整えて過ごし感染予防に努めましょう。

 

新型コロナウイルスワクチンを接種していない方で接種が可能な方は、検討のうえ接種を受けて頂けるようお願いします。

すでに感染した方も、ワクチンを受けることで新型コロナウイルスに対する免疫が高まり再感染の予防になります。

 

 

生後6カ月~4歳および5-11歳の小児用新型コロナワクチンの接種も進められています。子供が新型コロナウイルスに感染した場合、軽症で済むことが多いのですが、中には重症化や死亡に至る例もあります。

オミクロン変異体の流行で小児の感染者が増えたため、重症化する子供の数も増えました。子供用の新型コロナワクチンは、発熱などの副反応は大人に比べるととても少ないです。感染による重症化予防のためにワクチンの接種をお勧めします。迷っている方は、小児科の主治医にご相談下さい。

 

接種済みの人が感染したり、過去に感染したことがある人が再度感染することもありますのでマスクや手洗い、ソーシャルディスタンスの保持などの基本的な対策は継続しましょう。

 

新型コロナウイルス感染症とワクチンについては、公的サイトもぜひご確認下さい。

・厚生労働省 - 新型コロナウイルス感染症について -
 

 

 

結核は14週は一桁の発生数となりました。2022年1年間の神奈川県での発生数は1011例でした。

BCGの接種対象月齢のお子さん(1歳未満)は忘れずに接種を受けましょう。

 

 

百日咳の登録は2022年の1年間で19例ありました。2023年3週, 4週に2件ずつ、5, 7週に1例登録がありました。また、8週に2例, 10, 11,13週にも1例登録があり、すでに累積で12例になっています。2022年よりも多くなるかもしれません びっくり 

 

2022年は26週, 48週に破傷風の登録が1件ずつあり、1年間で3例の登録がありました びっくり

 

4種混合(百日咳・破傷風・ジフテリア・不活化ポリオ)の対象月齢のお子さん(生後3か月~)は忘れずに接種を受けましょう。

小学校高学年が対象となる2種混合も、免疫を持続させるために大切です。忘れずに受けて頂けますようお願いしますお願い

 

 

2022年の麻しん、風しんの発生はいずれも1例ずつでした。

2023年10週に1例の麻しんの報告がありましたが、11週には累積0例になっていたので、麻しんではなかったようです。13週にも1例の報告がありました。14週は0例でしたが、累積が1例のままでしたので、13週の報告はそのままのようです。

ただ、11週には風しんの報告が1例ありましたが、12週には累積0例になっていたので、風しんではなかったようです。

今後も流行を阻止するために、麻しん・風しん混合ワクチンの社会全体での接種率を維持することが大切です。

1歳、6歳(年長さん)で受けられる麻しん・風しん混合ワクチン(1期・2期)は忘れずに受けましょう。

 

 

感染性胃腸炎は2022年末から引き続き流行中です。2週は、定点あたり10を超えました。3-14週は減少傾向ですが、まだ定点あたり2以上で推移しており、流行中といえる状況です。当院でも、嘔吐や下痢の症状で受診する人がまだ複数いる印象です。

 

吐物や下痢から感染しますので、感染予防のためにオムツ交換後やトイレから出た後・食事の前には毎回、石けんやハンドソープで手をよく洗いましょうくもり

 

 

インフルエンザは2022年49-50週から大幅に増加し、定点あたり1を超え流行期に入り、2023に入りさらに増え、5週には定点あたり12を超えました。6週は定点あたり11.31でしたが、7週は定点あたり13.57とまた増加しました。8-12週は、上下しながらゆっくり現象傾向でした。13, 14週は大幅に減少しました。当院の発熱外来でも、インフルエンザAの陽性を示す人はかなり減ってきている印象です。

コロナ以前のインフルエンザ流行期においてはは春先にB型のインフルエンザが増えてきいたのですが、今シーズンはそうでもないようです。

インフルエンザの予防にもマスク・手洗い・十分な換気が有効です。

 

 

RSウイルス感染症2022年の夏から流行が認められていましたが、現在はだいぶ下火になりました。

 

RSウイルス感染症は、特に0-1歳で呼吸状態が悪化しやすい感染症です。2歳以上では再感染のことが多く、0-1歳よりは軽症と考えられますが、発熱が長引いたり咳が悪化する場合もあります。

お子さんの息がゼイゼイして苦しそう、顔色が悪い、ミルクや母乳の飲みが悪いという場合は早めに小児科の受診をしましょう。

 

 

溶連菌感染症は2022年42週にやや増加しましたが、その後は少し減少傾向でしたが2023年2週はやや増え、3-6週は横ばいで推移していましたが、7週から11週にかけては変動が見られますが概ね横ばいで推移し、12, 13週はやや増えました。

A群β溶結性連鎖球菌がのどや皮膚に感染し発熱・咽頭痛、場合により発疹や腹痛・嘔吐が伴いますが咳は出ません。飛沫で感染しますので、マスクと手洗いが感染予防に有効です。

感染した場合は、抗菌薬を飲んでしっかり治療する必要があります。

 

8週は、水痘(水ぼうそう)の発生が少し増えましたが、9週はまた減り10-12週はおおむね横ばいでした。14週は、水痘がやや大幅に増加を認めました びっくり 今後も注意が必要です。

 

 

突発性発疹はその性質上、基本的に季節性の流行はありません。

 

 

(県内の詳細は、リンク3を参照下さい)

 

 

【データをご覧になる際の予備知識】流れ星

感染症発生数の報告は、全数把握疾患(全国で発生したすべての症例を数える)と、定点把握疾患(あらかじめ指定された医療機関からの報告症例を数える)があります。



定点は報告する疾患によって5種類(インフルエンザ定点、小児科定点、眼科定点、STD定点、基幹定点)があります。指定医療機関の数は地域の人口によって決められています。


神奈川県では、インフルエンザ定点185、小児科定点233、眼科定点52、STD(性感染症)定点70、基幹定点12の機関が指定されています。(当院は定点機関ではありません)

 
小児科定点機関からは、RSウイルス感染症、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、水痘、手足口病、伝染性紅斑、突発性発しん、ヘルパンギーナ、流行性耳下腺炎が集計されます。

 

 

今後もご注目下さいウインク

次回の更新予定は4月29日ごろです(国立感染症研究所の更新日の後です)。

 

 

 

リンク:

1.国立感染症研究所ホームページ IDWR速報データ 2023年第14週


2.神奈川県衛生研究所ホームページ 感染症情報センター 感染症発生動向調査

 

3.神奈川県衛生研究所ホームページ 週報