こんにちは![]()
今週は何かと忙しく、更新の間隔がだいぶあいてしまいました。
映画のご紹介です。
今回ご紹介する作品にはエンタテインメント性がまったくありませんが、ご容赦下さい![]()
『異端の鳥』
監督:ヴァーツラフ・マルホウル
出演:ペトル・コトラール(新人)、ウド・キアー、ハーヴェイ・カイテル他
原作は邦訳されています。
『ペインテッド・バード』
イェジー・コシンスキ 著
西成彦 訳
松籟社
『異端の鳥』 劇場版パンフレットより
著者のイェジー・コシンスキは第二次世界大戦後、ポーランドからアメリカに亡命し1965年に『ペインテッド・バード』を英語で出版。作品は世界的なベストセラーとなりましたが、母国ポーランドでは長年に渡り禁書となっていた経緯があります。
舞台は東欧のどこかの場所、時代は第二次世界大戦中とされています。ナチス・ドイツによるユダヤ人への組織的な迫害行為に加え、ソ連がナチス・ドイツに協力した村の人々に対して行った暴力行為が描かれますが、市井の人々の持つ残虐性がより大きなテーマです。
特定の国とイメージを結びつけられるのを避けるため、映画の中では、人工言語スラビック・エスペラント語が用いられています。
主人公の少年の父親は反ナチ活動家であり、強制収容を逃れるため潜伏を余儀なくされます。終戦まで安全に過ごせるよう、息子を一人で田舎の村に疎開させます。
少年は疎開先の近隣住民からは見た目が異なっており、ユダヤ人やジプシーと言われ凄惨な嫌がらせを受けています。
実の両親とは連絡がつきません。
そんな中、預けられた家の老婆が急死し家も焼失し、少年は孤児として放浪することになります。
1940年前後とは思えないほど迷信に支配された未開の暮らしが残る地域で、人々に排斥され、運よく救出されるも再び虐待される。あるいは保護してくれる者を喪い放浪することを繰り返し、無垢だった少年は残酷さに耐えることを学び逞しくなりますが、一方で心は空虚になっていきます。
少年は、証言者の役割を果たすかのように作中で生き続けますが、生きていられるのが不思議なほどの過酷な運命を辿ります。
暴力、肉欲、嫉妬、倒錯、虐待、復讐.....
人間の恐ろしい部分、醜い部分のすべてを、これでもかと見せられ続けます![]()
「なぜこの監督は、この映画を撮ったのだろう」
「なぜ私は、この映画を観ているのだろう」
と何度も思わずにはいられませんでした。
この作品が伝えるメッセージは一つではないと思います。
生き物はなぜ、自分たちと異なる者を攻撃するのか。
人間はわかり合うことができないのか。
戦争や暴力は無くならないのか。
・・・
私はこの映画から
人間にとって最も恐ろしい存在は人間だがその一方、人間を救うのもまた人間でしかない
というメッセージを(心で)受け取りました。
映像はモノクロームで、感動を誘うような音楽の演出もありません。
しかし、淡々としたカメラワークには静かな美が宿っています。
大きな価値のある作品ですが、観る者は少なからずダメージを受けます。
今年の話題作の一つのようですが、心身に余力がある時に観ることをお勧めします![]()
参考文献:
1. 『異端の鳥』劇場版パンフレット
2. PAINTED BIRD. Jerzy Kosinski. Grove Press, New Yolk.
