トロピカル系の果物はアレルギーを起こしやすいか | mikenecoのブログ

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横須賀市 馬堀小児科医院 院長のブログです。

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こんにちはバナナ

 

 

夏は、いろいろな旬の果物が楽しめる季節です。

 

 

お子さんの食物アレルギーを心配する保護者の方から、「小さい子にはパッション系の果物は食べさせない方がいいでしょうか」と聞かれることがあります。

 

 

パッション系の果物は、何だかアレルギーを起こしやすそうなイメージがあるようですもぐもぐ

 

 

パッション系の果物とは何を指すでしょうか。南国で生産されるイメージですね。

身近なものではバナナ、パイナップル、マンゴー、パパイヤあたりが思い浮かびます。

ほかにも、ドリアン、グアバ、ライチなどもありますね。

スターフルーツ、パッションフルーツ、ランブータンなども時々見かけます。

 

 

文献1によれば、熱帯果物とは熱帯(北回帰線と南回帰線に挟まれた地域)や亜熱帯由来の果物を指しますが、実際には品種改良などにより、熱帯原産のフルーツの中には温帯で生産できるものもあります(文献1)。

 

 

トロピカル系の果物が、それ以外の果物(リンゴ、イチゴ、みかん、スイカ、ブドウなど)よりも食物アレルギーを起こしやすいということはありません(文献2)。

 

 

新規発症の食物アレルギーの原因として果物の割合が増えるのは幼児期以降です(文献3):

1歳 果物は5位(6%)

2, 3歳 果物は5位(8.7%)

4-6歳 果物は1位(16.5%)

7-19歳 果物は2位(13.0%)

 

 

果物アレルギーは、花粉症の人に多いです。

これは、植物の花粉アレルゲンのたんぱく質の形が果物アレルゲンのたんぱく質の形と分子レベルで似ているためです(文献2,3,4)。

 

 

幼児期以降、季節性アレルギー性鼻炎を持つ人が増えるにつれて、果物アレルギーの割合も増えると考えられます。

 

 

花粉症が無くても果物アレルギーを発症することはありますが、頻度としては多くないのでトロピカル系の果物を過度に避ける必要はありません。

 

 

体調が良い時に、少量(5mm~1cm角など。口の中でつぶせるぐらいの柔らかさであることを確認します)を食べさせてみても良いと思います。

 

ほかの食品もそうですが、アレルギー症状が出たときに受診ができるよう、なるべく日中の時間帯に食べるようにすると安心ですウインク

 

 

既に花粉症がある方の場合は、様々な生の果物で口の中がかゆくなるなどの症状が出ることがあります。

 

症状が出たことがある場合は、食べた量、症状が出るまでの時間、どのような症状が出たかを詳しくお伝えいただけると診断の有力な手掛かりとなりますバナナオレンジ

 

 

 

 

リンクと参考文献:

1. 垣内典夫. 果物. 化学と生物. 28巻 2号 p.120-127/1990年

 

2. An overview of fruit allergy and the causative allergens. A.K.G. Hassan, Y.P. Venkatesh. Eur Ann Allergy Clin Immunol. 2015; 47: 180-187.

 

3. AMED研究班による食物アレルギーの診療の手引き 2017.

 

4. 雑草花粉. 堀向健太. 日本小児アレルギー学会誌 第33巻第5号 p.749-756/2019年