虫よけ剤の選び方 | mikenecoのブログ

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横須賀市 馬堀小児科医院 院長のブログです。

子どもの育ち・病気・ケガ・ワクチンなどについて正しい医学的根拠に基づいたわかりやすい情報をお伝えできるよう心がけています。

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こんにちは黄色い花

 

 

蒸し暑い日が増えてきました。

それに伴い、蚊にさされたところが腫れてしまったという患者さんが増えてきました。

 

 

蚊にさされることを完全に避けることは難しいですが、さされる数がなるべく減るように、上手に虫よけを使いたいですね。

 

 

虫よけを使うとき、どんなものを選びますか?

 

 

一般的なドラッグストアには子供も使える虫よけが売っていますが、通販などで買う人もいるかと思います。

 

 

私は子供が小さいころ、匂いや使用感が好きでユーカリオイル入りの虫よけスプレーを使っていたことがあります。

そういったナチュラル系の虫よけの効果はどうなのでしょうか。

 


血を吸うのはメスの蚊です。

蚊は、ヒトが放出する二酸化炭素、汗の中にある乳酸やそのにおいに惹きつけられます(文献1)。

 

虫よけ剤は、主に蚊のにおいセンサーをブロックすることで効果を発揮します。

 

 

一般に虫よけ剤として人体に使用されている成分には、以下のものがあります。

DEET(ディート)

Picaridin(イカリジン)

エッセンシャルオイルを含むもの(ユーカリオイル、シトロネラなど)

 

 

ディートは、厚生労働省からの通達で小児への使用制限があります。

6か月未満:使用しない

6か月~2歳未満:1日1回

2歳~12歳未満:1日1~3回

 

(アメリカでは濃度30%以下のものは生後2か月から使用可能となっています) (文献5, 6)

 

日本で販売されている虫よけ剤のディートの濃度の上限は30%です。

濃度が高くなるほど効果持続時間は長くなります。

 

 

イカリジンは、小児への年齢による制限は特にありません。

 

 

ユーカリオイルに含まれるPMD(P-menthane-3,8-diol)は、低濃度(6.65%)のディートと同様の有効性が報告されていますが、眼への刺激があり、FDAは3歳未満への使用を禁止しています(文献1,2)。

 

ユーカリオイル以外の植物由来の虫よけは、ディート(23.8%)に比べ効果持続時間が1/15以下と非常に短かったことが報告されています。

 

また、ディートをしみこませたブレスレットは効果持続時間が20秒以内であり、ほとんど効果が無かったと報告されています(文献2)。

 

 

必ずしも「植物由来=安全」「薬品=危険」というわけではありません。

現在許可を得て販売されている虫よけは、十分な安全性が確認されています。しっかりした効果のある虫よけ剤を使いましょう。

 

 

蚊にさされないためには、大前提として沼地など虫が多い場所をなるべく避け、なるべく長めの衣服などで肌を守ります。露出する部位には虫よけを塗りましょう。

衣服の上から使用できる虫よけもありますが、ディートはプラスチックを溶かす性質があるので、飾りのついた衣服のときは注意が必要です。

 

 

日焼け止めと虫よけの両方を使うときは、先に日焼け止めを塗り、その上から虫よけをつけます。

 

ただ、ディートによって日焼け止めの効果は低下してしまいます。

 

また、日焼け止めを塗りなおすと虫よけを子供の肌にさらに塗り込むことになってしまいますので、日焼け止めを塗りなおさなくてよい時間内の外出にできれば良いかと思います。

 

 

子供を虫さされから守って、楽しく安全な外出を楽しみましょうブルー音符

 

 

 

 

 

※ 参考文献に示したものはすべて自分で読んでいますが、1, 2, 5の文献とリンクの存在は長野県佐久医師会・佐久市による「教えてドクター!」プロジェクトチームのツイートで教えていただきました。

 

https://twitter.com/oshietedoctor/status/1271327994091466760?s=21

 

 

 

 

参考文献とリンク:

1. Lee MY. Essential oils as repellents against arthropods. Biomed Res Int. 2018;6860271.

 

2. Fradin MS, et al. Comparative efficacy of insect repellents against mosquito bites. New Engl J Med. 2002; 347(1):13-18.

 

3. 厚生労働省ホームページ ディートを含有する医薬品および医薬部外品に関する安全対策について

 

4. 厚生労働省 蚊媒介感染症の診療ガイドライン

 

5 . 米国小児科学会(AAP)ホームページ Choosing an Insect Repellent for Your Child

 

 

6. 堀向健太、青鹿ユウ『マンガでわかる!子どものアトピー性皮膚炎のケア』中外出版社 p. 98-102, 107-108.