こんな詩を書いてみました。

 

『甘い夜の果て』 

 

甘い夜の果てにある闇 

私の罪を溶かして行く 

バカラのグラスに浮かんでる 

快楽を楽しむだけでいいの 

ただ美しいだけの男 

何も与えてはくれないし 

意味のない囁きばかりが 

淋しい胸を満たして行くね 

あゝ 見え透く嘘にさえも 

あゝ うなずく私 

あの日あの頃の夢はどこ 

月並みなセリフばかり 

いつもの夜がまた来る 

とめどなく心は渇いてる 

愚かだと笑われても 

戻れないの夜の果て 

 

 

あなたを苦しめているもの 

私を悲しませてるもの 

答えはでているはずなのに 

汗ばむ指を絡み合わせる 

何かを企んでいるのね 

憐れんだ目で私を見て 

新しい煙草に火をつけ 

口元に浮かぶ含み笑い 

あゝ 自分しか愛せない 

あゝ 褐色の肌 

湿った肌を重ね合わせ 

欲望に溺れて行く 

出逢ってはいけなかった 

愛してはいけない人だった 

危険と戯れていた 

許されない夜の果て 

 

 

心など望まないわ 

愛だとは言えないと知っている 

深い闇へ堕ちて行く 

戻れないの夜の果て 

 

 

スタンダールの小説『赤と黒』をモチーフにして、「出世がしたい。金がほしい」を口ぐせにしている津川雅彦さん演じる、女性を踏み台にしてのし上がろうとする青年の野望と挫折を描いた、吉田喜重監督の『甘い夜の果て』(1961年)と言う映画があります。

 

そんな作品に触発されて、男の野望を叶える為に利用された女性側からの視点で詩を書いてみました。

 

才能や知能や美貌を持ちながら、ただ経済的に恵まれない家庭に生まれたと言うだけで、満足な教育も受けられず、その結果、望んだ職種にもつくことができない人はまだ日本が貧しかった頃にはたくさんいたと思います。

 

男性、女性、限らずですね。

 

どんなに頑張っても、努力しても、現状は全く変わらない。報われない毎日…。

 

お金さえあれば全ては変えられるのに…。

 

そう思う人は現代でもたくさんいますよね。

僕もその一人かもしれません。

 

何の後ろ盾もない人間はどうすればいいのか…。

 

「そうだ!この恵まれた容姿や美貌、身体を利用すればいいんだ」と考えても不思議はないですよね。

 

僕が書いた詩の女性は、経済的にも豊かで、家柄も良い家庭に育った、容姿にも恵まれた女性です。仕事も出来、プライドも高い。高級なバーでお酒も飲める時間も余裕もあります。ただ、恋に関しては臆病なところがあり、まだ情熱的に身も心も解き放てるような恋愛はしたことがないのです。

 

ある時、行きつけのバーで、褐色の肌を持つ、美しく魅力的な年下の若者と出会います。

 

最初はただの遊びと割り切っていたはずなのに、いつの間にか逃れられない、甘い夜の闇に囚われてしまった女性の愛の果ては?をテーマに書いてみました。

 

長い説明でしたね〜(笑)。

 

僕はこの詩を書いていて、若者の抱く野心も、女性の他人から見たら愚かだと笑われるような行為もみな理解できるなぁ〜って感じています。

 

「何か良からぬ目的の為に私を抱くんでしょう?」と思いながらも、若者の身体に溺れたっていいじゃないですか?

若者から「哀れな女だな」なんて思われても楽しめばいいんですよ。思いたい奴には思わせておけばいいし。

 

愛に堕ちることは恥ずかしいことでも、みっともないことでもなんでもないと僕は思います。その瞬間、「刹那の快楽に酔う」ことは悪いことじゃない。愛に常識なんかいらないんじゃないかぁ。

 

僕が同性愛者だから言えることかもしれませんね。