僕が愛してやまないもののひとつに映画があります。

 

まだまだ収束の気配が見えないコロナウイルスの影響で、映画􏰀の制作現場、使用機材の環境、映画館で􏰀の上映形態􏰁などが大きく変わりつつありますね。

 

僕はもう数ヶ月、ロードショーへ足を運んではいません。大好きな古い作品を上映してくれる名画座もです。

 

このところ、毎日のように感染者の数が増え、今、警戒レベルが最も深刻な「感染が拡大している」に引き上げられました。

 

新宿にある、お芝居を上演する劇場では、集団感染が発生し、国内初の劇場クラスターになってしまいました。

 

こういう状況下で人が集まる場所へ出かけるには、責任も伴うし、精神的に緊張も強いられるし、なるべく今は控えようという心理が働いてしまいます。

 

大好きな映画やお芝居の今後の行く末が、気になる今日この頃ですが、でも暗く落ち込むばかりではなく、恐れるばかりではなく、諦めたら終わりですからね、必ず明るい未来が訪れると信じたいと思います。

 

映画というのは、「監督、俳優」といった人々だけでなく、脚本家、プロダクション・マネージャー(撮影スケジュールの管理や撮影道具の現地搬送の管理)、カメラ(撮影監督、カメラ技師等)、照明、録音技師、「美術」(画面に登場する物品類の構想、調達、デザイン、制作など)、メイクアップ(化粧)、衣装関連(スタイリスト、衣装デザイナー、衣装制作者等々)、音楽(作曲家、作詞家、歌手、演奏家、指揮者等々)、VFX…といったように、ざっくりと分けても数十種類、細かくわけてゆくと数百種類におよぶ専門家たちがそれぞれの役割を果たしており、映画というのは、そうしたさまざまな人々の能力を結集させることによって作られる「総合芸術」と言われます。

 

その中でも、映画音楽は欠かせないものの一つですよね。

 

映画史に名を残す傑作、名作には必ず名音楽家による名曲がセットになっているものです。

 

7月6日に、映画音楽作曲家のエンニオ・モリコーネが転倒により大腿骨を骨折し、ローマの病院にて91歳で息を引き取られました。

 

『アラビアのロレンス』、『ドクトル・ジバゴ』(「Lara’s Themeは僕が一番大好きな映画音楽です。)、『インドへの道』でアカデミー賞を3回受賞し、『ライアンの娘』も名曲なモーリス・ジャール。

 

映画本編に劣らない人気を誇る『007』シリーズの音楽で知られるジョン・バリー。

 

『ジョーズ』の「Main Title (Theme From Jaws)や、『スター・ウォーズ』シリーズ、『インディ・ジョーンズ』シリーズ、『スーパーマン』シリーズなど、大ヒット作や様々なシリーズ映画で象徴的なテーマ曲を作り出したジョン・ウィリアム。

 

フィリップ・K・ディックの描くディストピア化したロサンゼルスの世界観を見事に表現した『ブレードランナー』、第54回アカデミー賞作曲賞を受賞した『炎のランナー』などシンプルで美しいメロディが特徴のヴァンゲリス。日本映画『南極物語』(1983年)も名曲ですね。

 

アクションやサスペンスの緊迫感ある場面に効果的な音楽をつけることにかけては、他の追従を許さない抜群の手腕をもち、『オーメン』で第49回アカデミー作曲賞を受賞したジェリー・ゴールドスミス。『パピヨン』 (1973年)も大好きです。

 

1960年代からは主に、『ティファニーで朝食を』『シャレード』などオードリー・ヘプバーン作品で注目を集め、ソフィア・ローレン主演『ひまわり』など映画音楽家としてグラミー賞、アカデミー作曲賞に何度も輝いたヘンリー・マンシーニ。

 

ジェーン・カンピオン監督の『ピアノ・レッスン』の音楽を担当し、カンヌ国際映画祭のパルムドールとアカデミー賞のオスカー3部門(脚本、主演女優、助演女優)を受賞し、注目を集めたマイケル・ナイマン。

 

1951年、当時新進映画監督として注目を集めたフェデリコ・フェリーニと出会い、その後フェリーニの映画の殆どの音楽を手がけることになり、フランコ・ゼフィレッリ監督の「ロミオとジュリエット」、フランシス・フォード・コッポラ監督の『ゴッドファーザー』、ルネ・クレマン監督の『太陽がいっぱい』など映画音楽の分野で多大な業績を上げ、1975年 、『ゴッドファーザー PARTII』でアカデミー作曲賞を受賞したニーノ・ロータ。『ナイル殺人事件』(1978年)のメインテーマもいいですね〜。

 

フランソワ・トリュフォー監督の主要な映画作品で音楽を担当した他に、様々な巨匠、名匠の映画に曲を提供したジョルジュ・ドルリュー。フレッド・ジンネマン監督の『ジャッカルの日』、『ジュリア』は名曲です。

 

『男と女』、『愛と哀しみのボレロ』など、クロード・ルルーシュ監督とのコンビによる作品がよく知られているフランシス・レイ。『ある愛の詩』で1970年度アカデミー作曲賞を受賞。『ビリティス』、『個人教授』も大好きです。

 

ジャック・ドゥミ監督と共に手掛けた『シェルブールの雨傘』、『ロシュフォールの恋人たち』をはじめアカデミー歌曲賞を受賞した『華麗なる賭け』(主題歌『風のささやき』)、『おもいでの夏』、『栄光のル・マン』など数々の映画音楽を創作し、20世紀後半のフランス映画音楽界を代表する存在のミシェル・ルグラン。日本映画『ベルサイユのばら』、市川崑監督『火の鳥』のメインテーマの雄大さは忘れ難いです。

 

僕の大好きな映画音楽家たちを挙げさせてもらいましたが、エンニオ・モリコーネの曲で僕の心にいつまでも残り続けている2曲を紹介したいと思います。

 

僕の音楽携帯プレイヤーの映画音楽のフォルダに入っている曲です。

 

エンニオ・モリコーネと言えば、1986年、ローランド・ジョフィ監督『ミッション』で新境地を開拓し、1987年には『アンタッチャブル』でグラミー賞を受賞、1989年には『ニュー・シネマ・パラダイス』で世界的な知名度を得て、これまでに『天国の日々』(1978年)、『ミッション』(1986年)、『アンタッチャブル』(1987年)、『バグジー』(1991年)、『マレーナ』(2000年)と、合計6回アカデミー賞にノミネートされ、2016年にはクエンティン・タランティーノ監督『ヘイトフル・エイト』でアカデミー賞作曲賞を受賞、さらに2007年には、アカデミー賞の名誉賞も受賞し、日本でも、2003年にNHKの大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』の音楽を担当した大作曲家のお一人なんですが…。

 

僕がエンニオ・モリコーネ作曲で好きな映画音楽は、1977年公開のマイケル・アンダーソン監督によるアメリカ・イタリア合作映画『オルカ』(Orca)と1977年公開のジョン・ブアマン監督によるアメリカ映画『エクソシスト2』(Exorcist II:The Heretic)なんです!

 

『オルカ』は1975年公開の『ジョーズ』の大ヒット後、その影響で多数製作された動物パニック映画の1本くらいにしか思われていない作品かも知れませんが…、「ジョーズ」のパチモンではありませんよ(笑)。詩情溢れる映像美も見所な、人間の傲慢さが引き起こした悲しい物語です。

 

日本では同時期に公開された『カプリコン・1』と共に東宝東和創立50周年記念作品として上映された大作なんです。

 

あまり、ヒットはしなかったみたいですけど。

 

カナダ・ニューファンドランドの漁師ノーラン(リチャード・ハリス)は、高度な知能と、巨大なサメを一撃で倒す獰猛さを併せ持つシャチ“オルカ”に魅せられた海洋学者のレイチェル( シャーロット・ランプリング)とともに、オスのオルカ(シャチ)を生け捕りにしようとしますが、誤って隣にいたメスのオルカに銛を撃ってしまい妊娠している子供もろとも死なせてしまうのです。復讐に燃えたオスのオルカが、漁師ノーランの住む港町を襲撃し、ノーランは北の海での一対一の勝負を強いられるのです…。

 

この作品のテーマ曲が、北の海の冷たさと雄大さを表現した、哀切感と美しさに満ちた旋律で素晴らしいんです。

 

人間のエゴの醜さと、復讐の虚しさ、愚かさ、悲しみをエンニオ・モリコーネは音楽で伝えてくれているように感じます。

 

『エクソシスト2』(Exorcist II:The Heretic)は、恐怖映画の原点にして頂点であり、全世界で空前の大ヒットを記録した前作の後を受け、4年後の1977年に公開されました。

 

メリン神父(マックス・フォン・シドー)と悪魔との壮絶な戦いから4年が経過しました。幼い少女だったリーガン(リンダ・ブレア)は成長し母親の秘書であるシャロン(キティ・ウィン)とニューヨークで暮らし、精神医タスキン(ルイーズ・フレッチャー)の元に通いつつも平和な学生生活を送っていました。亡きメリン神父の弟子であるラモント神父(リチャード・バートン)は、メリン神父にかけられた異端の疑いの調査を枢機卿から引き受けることになり、4年前の出来事について聞くためにリーガンの元を訪れます。しかしリーガンには再び恐ろしい異変が訪れ始めていました。ラモント神父はメリン神父の過去を探るべく、40年前に彼が悪魔パズスの魔の手から救ったコクモ(ジェームズ・アール・ジョーンズ)が暮らすアフリカを訪ね、メリン神父の功績を知るのです。そしてアメリカに戻った彼を、悪魔との苛烈な対決が待ち受けていました…。

 

このパート2は、前作に比べれば残念だ、駄作だと言われることが多いです。まぁそう思われる方もいるでしょう。色んな意見、感想はあって当然です。

 

アメリカ本国で酷評されようが、批評家がケチを付けようが、『エクソシスト』の原作者が「こんなのは『エクソシストの』続編じゃない」と激怒しようが僕は好きなんですけどね〜(笑)。

 

でもこの作品の価値を高めているのは、エンニオ・モリコーネが手掛けたサントラだということは確実に言えると思います。サントラ盤は傑作ですよ。

 

 Regan's theme (Finale) (リーガンのテーマ[終楽章])やMagic And Ecstasy (魔力とエクスタシー)の2曲は特に名曲。美しさと不気味さと呪術的な声楽が絡み合ったメロディアスで美しい旋律がたまりません。

 

エンニオ・モリコーネは、口笛、教会の鐘、鞭、コヨーテの遠吠え、小鳥のさえずり、時計の音、銃声、女性の声など、珍しいサウンドを取り入れた先駆的な作曲家としても知られていて、典型的なスタジオ・アレンジではつくり出せない質感を音楽にもたらした偉大な映画音楽界のマエストロです。

 

エンニオ・モリコーネが残したレガシーはあまりにも偉大です。どうか安らかにお眠りください。

 

8月21日から『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督と映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネがタッグを組んだ不朽の感動作『海の上のピアニストが1999年に日本で公開されてから約20年の時を経て、4Kデジタル修復版、そしてイタリア完全版として再び劇場公開されることになりました。

 

これまでに500作品以上の映画音楽を手掛けてきたエンニオ・モリコーネ。巨匠が築いた輝かしい実績の中でも、本作は音楽がある種の主人公とも言える作品です。

 

まさにエンニオ・モリコーネの音楽に存分に浸れる作品となっています。

 

僕は初公開時に劇場で観て、大感動した作品です。

エンニオ・モリコーネも天国で喜ばれているでしょうね。

 

まだ観ていない方には是非、観ていただきたいと思います。