こんにちは。

 

6月16日(土)から28日(木)まで、「梶芽衣子映画祭」が池袋の新・文芸坐で開催されます。

 

3月に出版された半生記ともいえる著書『真実』(文藝春秋刊)の刊行を記念した特集上映だそうです。

 

僕も『真実』を読ませていただいたので、今日は大好きな女優のお一人、梶芽衣子さんのことをつらつらと書いてみたいと思います。

 

「梶芽衣子映画祭」の開催はファンとしては嬉しいですよね〜。

 

新・文芸坐はご近所なので、ちょこちょこお邪魔してるんですよ〜(笑)。

 

13日間、連続上映される26本の作品選定には梶さん自身の意向が反映されているんだそうです。

 

梶芽衣子さんは歌手としても活躍されていますよね。『女囚さそり』シリーズの主題歌『恨み節』は大ヒットしました。僕も大好きな曲ですね〜。『修羅雪姫』の主題歌『修羅の花』も良いですよね〜。

 

クエンティン・タランティーノ監督が自身の作品『キル・ビル』のエンディングテーマに『恨み節』、挿入歌に『修羅の花』を使用し、公開当時話題になりました。タランティーノ監督は若い頃、『女囚さそり』シリーズや『修羅雪姫』を観ていて、梶さんの大ファンだったそうですから。

 

『キル・ビル』の公開をきっかけに、日本では過去のものとして一部のファン以外には忘れられていた、梶芽衣子さんの作品が再び脚光を浴びて良かったなあと思います。

 

『修羅雪姫』はレンタルビデオではありましたが、続編合わせてDVD化されたのは『キル・ビル』公開後でしたからね。

 

今年3月に43年ぶりに発売されたCD『追憶』のなかで『恨み節』をセルフ・カバーをされているそうです。

 

映画祭では、このCD発売にあわせ、3月に新宿ReNYで開催されたコンサートの貴重な映像も上映されます。このなかでは、ロックバージョンの『恨み節』も歌われているんです。上映が行われる23日(土)には梶さんの舞台挨拶が予定されています。

 

『梶芽衣子映画祭』 上映スケジュールです。

6月16日(土)

『野良猫ロック セックス・ハンター』(監督 長谷部安春さん)

『女囚さそり 701号怨み節』(監督 長谷部安春さん)

梶芽衣子さん舞台挨拶

 

17日(日)

『女囚さそり 第41雑居房』(監督 伊藤俊也さん)

『女囚さそり けもの部屋』(監督 伊藤俊也さん)

 

18日(月)

『青春前期 青い果実』(監督 堀池清さん)

『太陽が大好き』(監督 若杉光夫さん)

 

19日(火)

『日本最大の顔役』(監督 松尾昭典さん)

『日本残侠伝』(監督 マキノ雅弘さん)

 

20日(水)

『女番長 野良猫ロック』(監督 長谷部安春さん)

『野良猫ロック ワイルド・ジャンボ』(監督 藤田敏八さん)

 

21日(木)

『野良猫ロック マシン・アニマル』(監督 長谷部安春さん)

『野良猫ロック 暴走集団’71』(監督 藤田敏八さん)

 

22日(金)

『無宿』(監督 斎藤耕一さん)

『反逆のメロディー』(監督 澤田幸弘さん)

 

23日(土)

『動脈列島』(監督 増村保造さん)

『曽根崎心中』(監督 増村保造さん)

梶芽衣子舞台挨拶+ライブ映像 『梶芽衣子Concert at ReNY』上映

 

24日(日)

『修羅雪姫』(監督 藤田敏八さん)

『修羅雪姫 怨み恋歌』(監督 藤田敏八さん)

 

25日(月)

『仁義なき戦い 広島死闘篇』(監督 深作欣二さん)

『やくざの墓場 くちなしの花』(監督 深作欣二さん)

 

26日(火)

『新仁義なき戦い 組長の首』(監督 深作欣二さん)

『ジーンズブルース 明日なき無頼派』(監督 中島貞夫さん)

 

27日(水)

『わるいやつら』(監督 野村芳太郎さん)

『鬼平犯科帳』(監督 小野田嘉幹さん)

 

28日(木)

『あゝひめゆりの塔』(監督 舛田利雄さん)

『子どものころ戦争があった』(監督 斎藤貞郎さん)

 

楽しみなラインナップですよね〜(笑)。

 

僕の心に『梶芽衣子』という女優さんのお名前が強く刻まれたのは、中学生の頃、深夜のテレビで放映された、増村保造監督の『曽根崎心中』を観た時です。

 

その時間帯では、市川崑監督『鍵』、斎藤耕一監督『約束』、『津軽じょんがら節』、篠田正浩監督『心中天網島』、増村保造監督『妻は告白する』などを毎週放映していて、僕が日本映画にのめり込むきっかけを作ってくれたんです。

 

『曽根崎心中』を観る前は、増村保造監督の作品では『妻は告白する』は観ていましたが、変な映画を撮る人だなあという印象しかなかったんです。子供だったので、増村監督が描く女性像が強烈過ぎて理解できなかったんですね〜(笑)。今では大好きな監督ですけれど。

 

『曽根崎心中』は大好きなミュージシャン、宇崎竜童さんが俳優として初めて出演された作品ということは知っていましたし、サングラスを取って、初めて世間に素顔を晒し、女性にクスクス笑われたと何かに宇崎さんが書かれていたのを読んだこともあったので、最初はその程度の興味で観たような覚えがあります。

 

近松門左衛門が書いたものを映像化したものは、篠田正浩監督『心中天網島』を先に観ていて、予算が少ないことを逆手に取った、無駄を配したモダンな美術と映像美に子供心にとても衝撃を受けていましたし、『曽根崎心中』の舞台となった大阪の北区曽根崎にある「露 天神社」(通称・お初天神)は関西人(僕は神戸出身)なら皆知っていますし、関西では馴染み深いあの物語をあの増村っていう監督はどう映像化したんやろ〜な〜んて生意気に思いながらさほど期待もせずに観始めました。

 

民放でのテレビ放映でしたから、CMは入りますし、カットもされていたのでしょうが、梶芽衣子という女優さんの美しさに圧倒され、渾身の演技に最後まで釘付けでした。

 

テレビの小さな画面(まだアナログの時代です)からでも伝わる、凄まじいまでの俳優さんたちの何かに憑かれたような演技に身体が硬直してしまい、凄い緊張感に包まれてしまったことは覚えています。

 

後年観た、溝口健二監督の『近松物語』もそうですが、近松門左衛門は心中という行為を、男女のただの美しい悲恋物語に仕立て上げるのではなく、男女の狂おしいまでの情念の爆発として描いているのだと増村監督は僕に気づかせてくれました。

 

中学生の僕としては凄い発見でした〜(笑)。

 

心中というと、『昭和枯れすすき』という有名な曲のように、貧しさに負け、世間に負け、追われ追われて、光が見えぬ闇に堕ち、選ばざるを得なかった結末というイメージがありますが、近松が描く『曽根崎心中』の二人の主人公、お初(梶芽衣子さん)、徳兵衛(宇崎竜童さん)は「義理」に負けたからではなく、「人情」に流されたわけでもなく、二人にはそれぞれの「意地」と「誇り」があり、それを貫くために死を選んだんですね。

 

徳兵衛にとって、一人前の商人になることが男を立てることであり、汚名を着せられて、それが叶わぬと分かった時は死んで身の潔白を立てるしかない…。

 

お初にとって、好きな男と夫婦になることがこの世で無理ならば、あの世に行ってでも必ず成就させる…。

 

二人は強固な意志と信念で、自分たちの想いを貫き通すのです。「後の世までも恋の手本になりたい」という心意気がとても強くて美しくて胸を打たれました。

 

死を選んだからといって、この世から逃げたのではない、負けたわけではないのです。

 

お初を演じた梶芽衣子さんの、一途にひたむきに徳兵衛へ寄せる想いの深さと、最後まで何があっても揺るがない姿が神々しくて、最後まで目が離せませんでした。

 

徳兵衛を演じた宇崎竜童さんは、役者デビューということもあり、台詞も棒読みのような、お世辞にも上手いとは言えないのかもしれませんが、逆にその朴訥とした台詞回しと佇まいが、徳兵衛という純で誠実な男にピッタリでしたね〜。

 

宇崎さんが歌うテーマ曲『道行華』もいいんですよ〜。

 

この作品は中々、DVD化されなかったのですが、2008年でしたかやっと発売されて、即購入して何度も観ています。観るたびに深みが増す作品ですね。

 

梶芽衣子さんが本当に素晴らしい‼︎

 

『曽根崎心中』で梶芽衣子さんは、ブルーリボン賞、報知映画賞、キネマ旬報賞、毎日映画コンクールの主演女優賞に輝いたのです。モントリオール映画祭では審査員特別賞を受賞されました。

 

『曽根崎心中』は日本映画界が誇る傑作の一つです。

 

僕が初めて劇場のスクリーンで梶さんを観たのは、1980年公開、野村芳太郎監督、松本清張原作の『わるいやつら』です。

 

僕が初めて読んだ清張さんの小説が『わるいやつら』だったんです。中学生の頃です。授業中も教科書で隠しながら夢中になって読んでました。

 

とても面白い小説で、映画化されていたのは知っていたのです。公開当時はまだ幼かったので、劇場へ見にいくことは叶わず、後年、『松本清張映画祭』か『ミステリー映画へようこそ』のような特集上映で観たと思います。

 

あの小説をどんな風に映像化されたのか興味がありましたし、あの梶芽衣子さんが自分から出たいと希望し、出演された作品と聞いていたので劇場で観ることができて良かったと思えた作品です。

 

『わるいやつら』は1978年、松本清張さんが野村芳太郎さんと共に設立した「霧プロダクション」第一回作品で、欲にまみれた男の愚かさと、女の愛憎と怖さを豪華俳優陣が見事に演じたミステリーです。

 

主人公は片岡孝夫さん(現・十五代目 片岡 仁左衛門さん)演じる総合病院の院長・戸谷信一。名医と言われた父の死後、漁色にあけくれ、病院の赤字を女たちからまきあげた金で埋めているプライドだけは高いダメ男です。

 

梶さんが演じたのは戸谷信一の愛人の一人、東京と京都にある料亭を切りまわす女将、藤島チセという女性です。悪い奴の一人なんですけど、梶さんの存在感が抜群で、匂い立つような美しさと悪女ぶりが最高なんです。

 

批評家からの作品としての評価は今ひとつのようですが、僕は好きな作品ですね〜。

 

チセは疎ましい夫を戸谷が与える薬で毒殺するのですが、夫が息を引き取ったかどうか確認するために、着物の袖を口に当て、夫に顔を近づけ、息をしていないことを確かめ、嬉しさを嚙み殺しながら「死んだ…」とほくそ笑むシーンの梶さんの迫力は他の女優さんでは出せない怖さです!(笑)。

 

梶芽衣子さんの代表作といえばやはり「女囚さそりシリーズ」でしょうね。

 

篠原とおるさん原作の劇画の映画化ですが、元々は梶さん主演の女版"網走番外地"として企画されたものなんだそうです。

 

後にピンキー映画とも呼ばれるようになりますが、最初、東映としてはただのポルノ路線の一作として制作するつもりだったんでしょうね。梶さんは脚本を最初に読まれた時、これは安っぽいエログロ映画になると思われたそうですし。

 

梶さんは「女囚なんて嫌よ」と断られたそうですが、原作の劇画を読み、「ヒロインが全く言葉を発しなかったら面白いんじゃないか」と気づかれるのです。

 

どんな目に遭っても、相手にせず、無言で通せば凄みが出る…それで勝負してやろうと思われたのです。

 

この時の梶さんの前代未聞の発想が、クールで今なお不変の輝きを誇るヒロインとして「さそり」は生き続けている所以なんだなあと感じます。

 

第1作では主人公である、松島ナミは恋人の刑事(夏八木勲さん)に裏切られ、男たちに犯されるシーンがあります。また下着姿で元恋人に出刃包丁を突きつけるシーンもあります。

 

梶さんはそうしたシーンを嫌だったとはおっしゃっていません。この作品で必要ならば女優として躊躇いはないとハッキリとおっしゃっています。

 

この潔さと自分が受けたからにはどんな仕事も手を抜かない、納得するまでとことんやり切るという梶さんの強い意志が、今だに世界中にファンを持つ作品として生き続けているのでしょうね。僕も大好きなシリーズです。

 

◎女囚701号/さそり(1972年8月25日公開)

監督:伊藤俊也さん

◎女囚さそり 第41雑居房(1972年12月30日公開)

監督:伊藤俊也さん 

◎女囚さそり けもの部屋(1973年7月29日公開)

監督:伊藤俊也さん 

◎女囚さそり 701号怨み節(1973年12月29日公開)

監督:長谷部安春さん

 

全身全霊で、ナミというキャラクターを演じきっている梶さんを観ていると僕はいつも胸が熱くなります。

 

梶さんが東宝に招かれて撮った『修羅雪姫』、『修羅雪姫 怨み恋歌』二部作も良いんですよ〜。大好きです。

 

『修羅雪姫』は小池一夫さん原作、上村一夫さん作画による漫画を原作とした、明治時代の日本を舞台にした異色の時代劇映画です。

 

文明開化期の明治。母から託された怨念をはらすことだけを胸に、修羅の道を歩く娘・ヒロインの雪(梶芽衣子さん)は、蛇の目傘にドスを仕込んで仇たちを次々と殺していくのです…。

 

孤独と悲しみを背負い、自分自身を捨て、不吉な死の香りを漂わせ、恨みの河に身を委ねる女… 最高です!(笑)。

 

1974年に公開された、斎藤耕一監督『宿無』も好きです〜。

 

ロベール・アンリコ監督のフランス映画「冒険者たち」を日本風にアレンジしたような作品で、日本のクロード・ルルーシュと呼ばれた斎藤監督の作品ですから、風景描写が美しく、坂本典隆さんの撮影も見事なんです。

 

勝新太郎さん、高倉健さん、梶芽衣子さん、この三人が共演してるんですよ〜。それだけで満足ですよ、僕は(笑)。

 

梶さんは、貧しさのために女郎に売られた女性、サキエを演じています。薄幸で教養も何もないけれど、健気で純粋で無邪気で可愛い(笑)。

 

それまでの梶さんのイメージとは180℃違うキャラクターなのですが素晴らしいんですよ〜。梶さん以外に考えられない役柄です。

 

『真実』には、1982年公開、五社英雄監督『鬼龍院花子の生涯』の制作経緯のある出来事が書かれています。

 

この作品の企画は最初、梶芽衣子さんが出したものということは以前から知ってはいたんです。

 

この作品のプロデューサー、日下部 五朗さんが書かれた『シネマの極道―映画プロデューサー一代』という本に書かれていたのを読んでいたので。

 

この本には、梶芽衣子さんから小説を読んでみてと渡され、それを自分の考案・企画で映画化したように書かれているのですが、梶さんはこの時点で日下部さんとは面識も話もしたことがなかったということを『真実』では書かれているのです。

 

自分が出した企画書を横取りされたのです。梶さんは。

 

あの作品が誕生した裏にはこんな出来事があったのかと知らされました。

 

夏目雅子さんが演じた松恵を梶さんは演じたかったんです。

 

一つの作品が出来上がるまでには、色々なことが起こるものなのですね〜。

 

梶さんこの『真実』を伝えるためにこの本を書かれたような気もします。

 

梶さんのインタヴュー記事で僕の心にビビッときた言葉を書いておきます。

 

「私、中途半端なことが苦手なんです。だからやると決めたからには、とことんやりました。どんな端役でも「梶芽衣子じゃなきゃ」と思ってもらえるように。」

 

「仕事として用意されている以上、どんな雑用でも無駄なものなんて一つもないと思いますよ。それが自分の代表作にならなかったとしても、「この人なら任せられる」という信用を積み重ねていくことが前進につながると私は思います。」

 

「間違えちゃいけないのは、自信と自惚れは違うってこと。自信は謙虚、自惚れは驕りです。謙虚さがなくなると人間って学ばなくなるの。そうなったら終わり。前にも上にもどこにも行けなくなってしまう。これまで仕事をしてきて「この作品は素晴らしくうまくいった!」なんて達成感は一度も味わったことがない。」

 

「自分の作品は見返さない。でもだからこそ続けてこられたんだとも思う。いつか満足する日がくるかもしれないって努力できるから。」

 

梶芽衣子さん。「クールビューティー」という形容詞はあなたのためにある言葉です。

 

 

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