※BL・腐の意味がわからない方、これらの言葉に嫌悪感を抱く方は閲覧をご遠慮ください。
また太妹が嫌いな方もです。

リーマン×お弁当屋さんの続き。
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町が暖かな陽光に包まれたこの日も例の客はやってきた。
長身痩躯の身体がのっそりと入ってくる。

「はい。」
「え?」

妹子は注文を受け取る前に袋を差し出した。
中身は勿論弁当である。
ただし、他の使い捨ての弁当箱とは違い、家庭で使う、何度も洗って使用できる素材と形状のものだ。

妹子はここ数週間、彼を観察していた。
というか彼が毎日来るので必然的に彼を見なければいけなかったのだが。
あれから彼はやはり毎日弁当を買いに来ていた。
しかし日が経つにつれ、昼食と夕飯用以外にも、もう一つ、翌日の朝食用だと思えるものまで買い始め、挙句の果てには週末の一日分まで買いだめするようになっていったのだ。
利益になるとは言え、流石の妹子も呆れ、ため息がでた。

そしておせっかいとも苦労性ともいえる、人の好さが出てしまい、彼の栄養面を気にした妹子は、自分で彼専用の弁当を作ることにしたのだ。

「アンタどうせ毎日ここにくるでしょう。」
「あ、バレてた?」
「バレるも何も毎日顔合わせてるじゃないですか。
アンタ、いくらうちの弁当が良いからって、流石に栄養偏りますよ。
だからほら。僕がアンタ専用の弁当を作りました。」
「君が・・・?」
「はい。栄養面が気になったので、そこらへんのバランスを考えて作りました。
嫌っていってもこれ以外の弁当は出しませんよ。」
「拒否権はないんだ・・・。」

妹子の勢いに圧倒されつつも、彼は差し出された袋を受け取った。

「あ、それ、見ればわかりますけど、普通の弁当箱なので夕方返しにきてください。」
「え、でも私・・・。」
「知ってます。いつも夕方は来ませんよね。
でも今、夕飯の分と朝食の分を持っていったら荷物になるでしょう?
店が閉まってからでもいいので、来てください。」
「そんなに優遇されてていいの・・・?」
「アンタだけは特別です。かなりのお得意様ですから。」

妹子の口調は強いものだったが、実は内心、相手の反応がどんなものなのか心配で胸の鼓動を速まらせていた。
ごくり、と唾を飲み込む。

「ありがとう。」

今まで呆然と話を聞いていただけの彼は、袋の中身を確認すると、顔をくしゃっと歪めた。
思っていた以上の好感触に妹子はほっと胸を撫で下ろす。

「・・・太子。」
「え?」
「私の名前は太子だから。そう呼んで。君の名前は?」
「・・・妹子です。」
「妹子・・・。そっか、いい名前だな!
じゃあ、妹子!また今夜、な!」

太子は白い歯を見せ、満面の笑みで手をひらひらと軽く振った。
それにつられて妹子も頬を緩ませ、小さく手を振り返す。

この日妹子は何故か一日中気分が良く、夕方が待ち遠しく感じられた。

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*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆あとがき*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
何か妙に短くなってしまった。
出会ったのは何週間か前だけど始まりはやっとここからって感じだね!
妙にスランプ気味?なので早く治したいね!!

ではでは、いつもありがとうございます(*^ー^)ノ
※BL・腐の意味がわからない方、これらの言葉に嫌悪感を抱く方は閲覧をご遠慮ください。
また太妹が嫌いな方もです。

多分長編。続けば。
リーマン太子×お弁当屋さん妹子のお話という、またもやパロ。
前回はシリアスでしたが今回はほのぼの。
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柔らかな日差しに包まれながらも、頬を撫でる風はまだまだ冷たい。
日向にある雪解けの下からは新緑の芽吹きが感じられる。

ここ、飛鳥町は今日も人々の賑わいを見せている。
この地はわりと発展したところで、中心部では様々な店やビルが立ち並ぶ。
しかし中心部とはいえ、その力はそこまで大きいわけではない。面積的に小さい町のせいか、暫し歩いてそこを離れると、途端に閑静な住宅街へと入る。
両極端かもしれないが、周辺の住人は、家では静かに過ごせ、しかし少し歩けば買い物ができるとそれなりに満足なようだ。

そこの住宅街の端には、商店街には立ち並ばずにひっそりとたたずむ小さな弁当屋がある。
家族で切り盛りしている店で、外観は周りの家々に埋もれるほどの普通の家のような店だ。
いや、確かにそこは普通の家で、一部だけを弁当屋として改装したような造りなのである。
しかし外観は小さくとも味は良いため、わりと繁盛しているようだ。ここの味を知った客の多くがリピーターにつく。
そして店先のショーケースを眺めている長身痩躯のこの男もリピーターの一人だ。

「いらっしゃいませー。」

妹子は愛想笑いを浮かべて店先へ出る。
と同時に、またか、と思った。

彼の目の前にいるサラリーマンと思しき男はここ最近毎日店に通い詰めている。
初めは朝に昼飯の分を買いに来ていたようだが、今では夕方も来るあたり、夕飯もここの弁当ですませているようだ。
となると、歳は30代くらいに見えるが未婚者で一人暮らしなのだろう。

(毎日毎日飽きもせず・・・まあ売り上げが増えるからいいけど。)

彼とは店員と客の立場だ。相手のことをとやかくいう間柄ではない。
けれども元々人の良い妹子は密かに彼の栄養面を気にしていた。

いくら栄養のある日替わり弁当を頼んでいようが、やはりこうも同じ店のばかりだと少しは偏ってしまうだろう。
しかも日替わり以外にも、彼の数少ない好みのものを、それを交代で食べているのだからやはり身体にはあまり良いとはいえない。

「日替わり弁当を一つ。」
「はい、ありがとうございます。」

心の内では色々なことを思っていても勿論それを表に出すことはない。
接客用の笑顔を浮かべながら注文された品を出し、それからレジで金をもらう。

「ありがとうございました。」

笑顔で軽く頭を下げれば、相手も遠慮がちに微笑を浮かべながら帰っていく。
彼が立ち去ってから数十秒後、完全に静寂が訪れたとき、妹子は一つため息をついた。

「・・・はあ。」

男の姿が見えなくなっても、妹子の脳裏にあるのは彼だった。
確かにこの店はリピーターが多い。しかし彼のような、休日を除いて毎日、朝夕来るような客は滅多にいない。というか彼だけだ。
しかも店には両親もいるというのに、なんとなく自分ばかりが接客しているような気がする。

(いや、親は弁当作っていて、僕が接客をほぼ担当しているから当たり前なんだけど・・・。
でも一日中弁当作っているわけでもないんだけどなあ。)

どうも何だかあの男が気になる。
何故だろうか、と首をひねっていると、そのうち子連れの母親が来店し、妹子の頭から彼の姿は消えたのであった。

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*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆あとがき*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
やっとだよ!!ほのぼのだよ!!!
元々得意分野なはずなのにずっとシリアス書いてたせいかパッと文章がでなかった・・・いや、あと普通にスランプ。なので脱出するまで大目に見てやってください。

今回は完全妹子視点のお話。
何か知らんけどこの客気になる悶々・・・みたいな。この客の正体は大体わかったよねもう。

この話が続くかどうかは私の調子に左右されていくと思います・・・今身体の調子が悪くなると精神にもきちゃう感じになっているので。
なので調子の良い時に更新、だと思うから、結構気長になるかな・・・。

ではでは、いつもありがとうございます(*^ー^)ノ