※BL・腐の意味がわからない方、これらの言葉に嫌悪感を抱く方は閲覧をご遠慮ください。
また太妹が嫌いな方もです。

現パロで過去の夢を見て思い出すってのはあるけど、逆はあまりないなあと思って書いたものです。いや、既出かもしれないけど・・・。つまり未来予知。
シリアスなんだけど甘いのかなんかよくわからないやつです。

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見覚えのない、狭い部屋。
本来は灯りがついているのだろうが、しかし周りは全て灰色がかって見える。
そこにいた二人の人物。彼らは向かい合っているようで、一方の男はこちらに背を向けていて顔立ちは確認できないものの、後頭部の刈り上げや、近くの壁にかかっている親近感の湧く青いジャージからして、おそらく。
彼自身は腕も足も全て覆われた、視界が灰色がかっていてもわかる全身黒の、珍妙な衣服を纏っている。
彼と対面しているもう一方は、これまた親近感の湧く特徴的な癖毛だ。彼の髪色は茶色だろう、と確信を持つ。
彼は、見たことのないことには変わりなかったが、黒ずくめの男よりも幾分軽くて涼しそうな格好をしている。
だがそれよりも注目すべきは、その表情。
目元には水分がたっぷりと溜まっており、次々と頬を伝って正座をしている彼の膝へと落ちていく。
やや下目のその視線の先には何があるのかと見てみれば、自身の左手。
左手に何があるのかと集中してみると、その時、きらり、と何かが目を刺激してきた。
鈍い光の先を見ると、おそらく銀色であろう、指輪がはめられていた。

「太子、これでやっと、僕たち――」

黒い男も泣いているのだろうか。灰の視界では黒いズボンについた染みまでは確認できない。
また、何か喋っているようであったが、それは聞き取ることができなかった。
二人は手を取り合い、ゆっくりと視線と指を絡ませる。
いまだ止(とど)まることを知らない涙であったが、唇は震えながらもつり上がっていた。
それでも眉が下がっているせいでどこか苦しそうだったが、嬉しさが、幸せが勝っているようであった。

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「・・・という夢を見たんだよ。」

場面は変わり、眼前にはすがすがしいほど青い空。
視界は光に溢れ、柔らかい陽光に照らされた緑が眩しくて、美しい。

「はあ・・・。」

隣にいる、赤いジャージの男はそっけない返事を返す。
まるで興味を抱いていない、というよりも、話の内容に圧倒されて、という低い響きだった。

「なんだったんだろうなあ・・・。」
「僕たちそっくりだったんでしょう?」
「そっくり、ってか、多分私たち本人。黒ずくめの男の顔は最後まで見れなかったけど、お前の顔ははっきり見た。から、それは間違いない。」

長いこと上を向いて固定していた首をもたげ、妹子のほうを見る。
ゆっくりと正したつもりだったが、それでも首は少し痛んだ。

己の視線を受けても尚、彼は横顔しか見せてくれなかった。
どうやら手元にある白い花で何かを作ろうと夢中になっているようだ。少々寂しくおもったが、しかし風に揺れる癖毛が可愛いのでよしとする。

「何故泣いていたんでしょうねえ。」
「それは多分、仕草からしてあの銀の指輪が関係しているんだろうけど。」
「・・・銀の指輪って、そんなに嬉しいものですか?」
「それなんだよなあ。」

夢の中の妹子の表情からして、嫌がって泣いている、という可能性はまずないだろう。
微笑んでいたし、そうなると嬉し泣きくらいしか思いつかない。
けれど、何も着飾っていない、シンプルなただの銀の指輪がそんなに嬉しいものなのだろうか。
確かに銀は貴重な鉱物だ。けれどやはり、その価値は金には劣る。
あの妙な服装からして、仮にあれが遥か遠くの未来だったとしても、色々なものが進化していて、寧ろ今よりも銀の価値が落ちている可能性のほうが高い。
だから余計にわからなかった。あの夢の自分たちは一体何なのか。あの銀の指輪が持つ意味は。

「どうせ贈るならもっと装飾が豪華なほうがいいような気が・・・。」
「まあ、確かにそれなりに装飾はあったほうが相手は喜びそうですよね。」

僕なら仕事の邪魔にならない程度のものがいいですけどね、と彼は独りごちる。

そうやってあれこれ推考しているうちに、妹子のほうは黙々と手を動かし続けてきた結果が出てきたらしい。
初めはシロツメクサばかり集めて何をするんだと怪訝に思っていたが、今では完成形が想像できるくらいになっていた。
なるほど、彼が作っていたのは花冠らしい。しかし男子なのに花冠とは、なかなか夢がある、と太子は思った。
しかしすぐに、妹子のことだからロマンチストというよりか、単に女兄弟が多かったのか、という考えにいきつく。
それでもこみ上げてくる可愛いという気持ちと、愛しさは抑えられなかった。途端に夢の内容なぞどうでもよくなる。

「それよりもさ、今夜、お前ん家行くから。」
「はいはいわかってます、カレーでしょう。」

やっとこちらを振り向いてくれた茶系の瞳には、暖かな色が宿っていた。
それに連動して彼の口許が和らいでいるのを確認すると、ふと自分も笑みをこぼしていたことに気づく。

きっと今夜も、楽しい夜になるだろう。
彼が、今日のために昨日から寝かせていた美味しいカレーを、二人で笑いあって食べることになるだろう。
そして熱い夜を送るのだろう。

二人とも信じて疑わなかった。もはやそれが当たり前だったからだ。
この、愛という優しさが支配する世界を、壊すものは何もないと、その想いは信じすぎて心の中にすっかりとけこんでいた。だから未来におけるあらゆる可能性など考えたことはなかった。
それもそうだ、未来のことを考えたところで、これから起こることなど誰にもわからない。
だがそれでも彼らは、甘すぎた。

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太妹だぜいえ~~~~~~~~~い。
甘いんだけど漂うシリアス臭、とか、暗喩、とか、技量がないと無理ですねこれ。誰かに同じテーマで書いてもらってその文章を参考にしたい・・・!自分じゃうまく表現できていないような気がして。
でも思ってたよりはすらすら書けた。それは嬉しい。けどまだ足りないかも・・・。
本当に書きたいものは書けない、って、わかるわあ~・・・。

さてここで解説。
冒頭の、太子が夢で見たというやつは、あれは紛れもなく未来の太妹二人です。
そして全身黒ずくめ。なんとなく想像できた(と信じたい)とは思いますが、スーツです。青ジャージって書こうとしたけど「プロポーズにジャージは流石の太子でもしないんじゃ・・・」と思い、やめました。でも特徴がわかるように近くの壁にハンガーでジャージかけといた。
ちなみに妹子の格好は個人的に半袖に長ズボンという、ラフな格好。休みの日に買い物から戻ってきたとかそんな感じでしょう。狭い部屋=アパート。

二人は同棲しています。なんだか現パロだとたいていリーマン×大学生の図が浮かぶけど大学生相手にプロポーズしてもなあ・・・特に妹子は真面目だから、せめて大学出たら、とか断られそうだし。
ということで妹子は新社会人さんとかでもいいです。ともかくお互い社会人。なら何故マンションではなくアパートなのか。それはなんか想像するのに都合よかったからです(

一応夢の中の妹子の台詞で、=この時代では幸せになれなかった、と暗喩?したつもりなのですが、多分できていない・・・。

長々と解説失礼致しました。解説するならちゃんと文で表現しろや!私もそう思います。ごめんなさい。
そしてオマケ程度に、冒頭の夢の全文を↓。舞台は同性婚が許された未来です。現パロ、妹子視点でハッピーエンド。よろしければこのままお読みください。

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あの時代から約二千年後。
僕らは再びこの国で出会った。その瞬間、僕らは脇目も振らずお互い駆け寄り、周囲を気にせず思い切り涙を流し、熱く抱擁を交わした。
記憶は輪廻の輪に還る際に消えていたはずなのだが、彼を一目見た刹那、ただその記憶は膨大すぎてその場ですぐさま全てを理解したわけではないのだけれど、彼が聖徳太子ということと、僕は遥か昔その人を愛していたということを思い出した。

途端に、すれ違ってそのまま前へ進むはずだった踵を返し、意図せずしてその人の元へ駆け寄った。
それは彼も同じようだった。駆け寄る際に自分でも理解しきれていないような、どこか不思議そうな顔をしていたのが印象的だ。間抜け面すぎて感動の再会で危うく噴きだすところだった。

この時代でもあの時とさほど歳の差は変わっておらず、性別も容姿もお互い特別変わっていなかった。
当時僕は学生だったが、一人暮らしをしていたので着の身着のままということもあり、すぐさま同棲の手続きをした。
恥を感じている暇などなかった。一分一秒、あの時代よりも彼と一緒にいたいという想いのほうが強かったのだ。

お互い変な身分もなくなり、今度こそ何の障害もなく平和に暮らしていけるかと期待していたが、逆に一つ、あの頃より厳しくなったものがあった。
それは性別だ。あの頃はその辺はわりと緩く、婚姻関係こそ結べなかったがあまり邪険にもされなかった。むしろ女っ気のない朝廷では、部下が上司の下の世話をすることさえ黙認されていたくらいだ。
しかしこの国が発達していく途中で入ったある宗教により、同性愛というものへの当たりが強くなってしまった。
今では寧ろ、それを国教としている国よりもその部分の理解は遅れをとり、逆に珍しい国となっている。

だが、一部の性的少数者がタレントとしてテレビにとりあげ始めて何十年。
国中の数々の性的少数者団体が声をあげ数十年。
彼らが長い闘いに身を投じ、障害を乗り越え、最近やっと、この国でも異性婚と同等の権利が与えられた。
まだまだ偏見や差別が多いが、それはこれから何百年に渡って、なくなっていくだろう。
同性婚の法律が可決した現在、僕は社会人になっていた。

そして今日、買い物から帰ってきたら、太子がスーツ姿で正座していた。
手元には深い青色の、緩やかなアーチを描いた小さな箱。
それが何なのか、一目みてすぐさまわかった。同時に、どこにでもあるTシャツにズボンという、すっかり休日の格好でいたことを頭の隅で後悔する。

しかしムードという、お堅い雰囲気が苦手なこの人にはそれでよかったのかもしれない。既に顔は汗で湿っており、起毛の箱を持っている手は震えていた。
多分僕が帰宅したと同時にパカッと箱を開け、格好良く決めたかったのだろう。だが指先ではまだもだもだと箱をいじくっている。
流石にここで笑い飛ばすのはあまりにも可哀想なので僕は真剣に待った。といっても衝撃的すぎて腰が抜け、その場でへたりこんでしまったので何も言えなかった。表情筋を操ることさえできず、僕自身間抜けな顔をしていたかもしれない。
だって僕らは長らく待ったのだ。この時を。きっと、世界中の誰よりも。
約二千年越しの恋なんて、そうそう存在し得ないだろう。

やっと爪が箱の繋ぎ目を掠り、少し力を入れただけなのだろうが、それから勢いよく箱が開いた。
外装と同じく紺青の小さな布団の真ん中には、鈍く光るプラチナの指輪が鎮座していた。
飾り気のない、至ってシンプルなものだ。

「いっ、いもこ!・・・さん。わたひ・・・わたしと、けっこん、してください。」

一応、その眼は真っ直ぐ僕の瞳を見据えていたが、いつもへらへらとしている太子が、これほどまでにあがっているのを見たことがない。顔は真っ赤で額には汗が噴き出て声も震え、しかも大事なところで噛んでいる。
そこで噛んだら台無しだろう、というツッコミは、後になって浮かんだ。
恋は盲目、というがその通りで、今は、それほどまでに自分は大事にされていたのか、と感動に打ち震えていた。

「・・・はい、もちろん、です。」

胸の鼓動の速さに戸惑い、拙い返事になってしまった。
しかし現時点でいち早く是の返事をすることで精一杯だったし、それは太子もわかってくれているようだった。
彼は一瞬目を瞠った後、震える手で指輪を摘む。
それから僕の左手をとってくれたが、あまりにも震えているので、小さな指輪を落としはしないかと、無意識に僕は右手で彼の手首を掴み、サポートをした。

端から見たらこれは、もしかしたら世界で一番間抜けなプロポーズ現場かもしれない。
けれど僕はそれでいいと思った。全てが整い、計算され、全てが順調なプロポーズよりも、そっちのほうが、僕らにはお似合いだと思った。

緩慢とした動作で、やっと指輪が左手薬指に入った時、突然視界が歪み出した。
突如として感情の波に襲われたのだろうか。目頭が熱く、急速に涙が溜まっていくのを自覚する。

「・・・太子、これでやっと、僕たち、家族になれるんですね。」

自分で放った言葉が胸に突き刺さり、更に涙が溢れ出てきた。
やっと、やっと。約二千年の時を経てやっと一緒に、家族になることを許された。

「ああ、妹子・・・二千年も待たせて、ごめんな。」
「こちらこそ、長らく待たせてしまって、すみません。」

改めて言葉にすると、あの時代での末路を思い出し、胸が痛いほど詰まり、とても苦しかった。

あの頃僕らは、あの穏やかな関係が、永久に続くと信じきっていた。
けれどそれは甘かった。知能が未発達な幼子のような、甘すぎた考えだった。
熟れすぎた果実が醜くなっていくように、時を過ぎれば現実は、凄惨で残酷なものへと移り変わっていったのだ。

色々あった、色々あった、本当に、辛いことも、何も。
けれど今はそれを遥かに上回る幸福感が、悲愴感でいっぱいだった胸を満たしてくれる。
今この瞬間願いは叶い、そして塗り替えられたのだ。

気づけば頬が少し痛い。どうやら力が抜けていた表情筋は再び動き出し、この上ないほど緩みきっているようだ。
それで太子も安心したのかもしれない。彼も、緊張が解けた顔で同じく微笑み、そしてその目元には涙を溜めていた。

指輪をはめたほうの手を、お互い無意識に絡み合わせ、それを顔の横に持っていく。
彼の顔は汗と涙でぐしゃぐしゃで、非常に格好悪かった。でも、それでいい。いつもの貴方の笑顔さえ浮かべていてくれるなら。
きっと僕だってこれまでにないほどの変な顔をしているだろう。だから、おあいこだ。

交わった視線はいつの間にか熱を帯びていく。

「これから、やっと、二人で歩んでいけるんだ。」
「二人だけでいいんですか?」

こどもは?と、声には出さず唇だけ動かして示唆する。
すると予想外だったのか、太子は目を瞠り、それから小さく噴きだす。

「そうだなあ。今は色々発達してるから・・・それもいいかもな。」

その瞬間に見せた彼の、明るい未来を想像しただろう、優しげで幸せそうな笑みを瞼裏に焼き付けた。
それから近づいてくる顔に合わせて僕はゆっくりと目を閉じた。

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はい!これで本当に終了です!
お読みくださりありがとうございました!そして皆様、いつもありがとうございます!
ではでは(*^ー^)ノ