もはや前回いつだったかわからないレベル…

 そしてだんだん語れる内容も写真も減っていきます。各論第4回、フランスの開拓者カマック。





 こちらも本家のホームページにロゴの変遷まで大変詳しく載っていますので要所だけかいつまむと、成立が1972年、ラップハープから作り始め、シングルアクションハープ(チロル地方の民族楽器のチロリアンハープというもの)なんかにも手を出し、現行モデルが発表されたのが1996年!最近!

 日本の総代理店は東が高田ハープサロン様で西が京都ハープファクトリー様。


高田ハープ様


前回出てきた京都ハープファクトリー様

 どちらのご主人も、日本屈指のハープ技術者でいらっしゃいます。
 昔はカワイが代理店やっていたこともあった。

 特徴はですね、高田ハープサロン様のサイトにそれは詳しく書いてあるのでそちらでいいんじゃないかと思いますが、

 「他のメーカーと全く違う」

 この一言ですな。まず形が違う。


カマックの代表アトランティッドプレステージ

参考

「グランドハープの代名詞」ライオン&ヒーリーの23号

腕木のカーブが違うのがお分かりになりますでしょうか?カマックの方が緩い。慣れるとシルエットみただけで見ただけで「あ、カマック」って分かるようになります。
なので構えた時に他のメーカーだったら右耳のあたりになる最高音域まで視界に入るし、高音域が広くて手が入りやすい。
 



ペダルのおさまっている溝の形が違うのは以前にも書きました通りですが、こちらは新しい楽器でまた少し変わってます。あとペダル自体の配置もなんというか内より?踏み心地は非常にスムーズ。
そして響孔!大きく丸い!猫が入れるくらい(本当)





こちらは東京大学出身の看護師でありながら在学中は一流のジャズギタリスト、そしてその後にハープをはじめられ、数年後にはこちらも超一流となり、現在アメリカを中心に世界で活躍される素晴らしいジャズハーピスト、小佐古基史 様が日本でお使いの楽器。トリアノンという機種の古いモデルで、響孔など形が違う。アメリカでは前述のアトランティッドプレステージをお使いです。

だいたいどのメーカーも彫刻モデルを主力にしているところ、あえてシンプルなアトランティッドを代表としているのも異色といえば異色。


 あとは普通だと写真がとれないところなので流しますが、ペダルアクションが「下についているバネで金属の棒を押し上げる」から「上についているバネでケーブルを引っ張る」となっていたり、柱でアクションを収めているのが他社ではプラスチック、ホルンガッハーは金属!のところカーボンで丈夫かつ軽量だったり、弦止めに木片を使っていたり。

 それからスペック上は奏者にも調整ができるようになっていて、カマックを買うと工具を入れたリュックサックがついてきます。実は柱の頭のところがパカッと外れる他社ではありえない構造(中身はなんというかサイボーグみたい)だったりもする…でもご自分で調整する方は国内だとまずおられなくて、みんな代理店様にもっていかれるそうな…(´~`;

普通だったらまず既存のメーカーを参考にするところ、あくまで独自路線を貫く。

どうしてこうなったのかといいますと、やっぱり根底には「フランスこそハープの宗主国であり、自分たちこそエラールの後継者である」というプライドがあると思うんですよ。

 今日の「ダブルアクションペダルシステム」を完成させたのはフランスのエラール、そして今日のハープで非常に重要なレパートリーを築いたのもアッセルマンからルニエ、トゥルニエ、グランジャニー、ディリング、サルツェード、サバレタ、ラスキーヌと続くフランスの系譜。(なのでオーストリアのモルナール先生からはじまる日本のハープ界はちょっと特殊かも。)

 でもフランスの楽器がなくなってしまって、アメリカ、イタリア、ドイツ、日本の楽器となってしまった現状に切り込んでいく!


その象徴だと思うのがこの楽器…


エリゼ。画像はメーカー様より拝借。たぶんまだ日本には入ってない。お分かりになりますでしょうか?前回お出しした、


ホルンガッハーのエンパイアと同じデザインなんですね~

なぜかというとさらにこの元のデザインというのが、



はいこちらはカマックご本家のホームページからの転載。エラールなのです!

カマック的には「それはフランスのデザインだ!」って思いがあったそうな…(京都の森田様がカマックの社長に聴いたら本当にそう言ったそうで…)

 ディスクがシャープとナチュラルで逆方向に回るというのも、エラールはもともとそうだったとか。

 なのですごく先進的ですが、やっぱり「フランスっぽい」ところがあると思います。バンバン力強く鳴るのとは違う。鳴りやすさ、ちょっとレバーハープやギターなんかを感じる軽やかさがある。
 森田様のところにはエラールのピアノがあって、その音を聴いて似たキャラクターがあるな~と思いました。

メーカー様的にはよく通る音質だそうで、グランドハープを習う人なら必ず言われる「がっちり弦をつかんで、手のひらに握りこむくらいはじいて!」というのとはちょっと違う鳴らし方をした方がよさそう。「楽器が鳴るんだから無理に鳴らそうとするな」というか。「下品なことするな」というか。サルヴィやホルンガッハーとは別の方向にプライドの高い感じ。

 このあたり、「すごく鳴っていい!」という方と「音質が違いすぎてどうしたものか」という風に意見が分かれそう。

 胴体は大きいと言われることが多いそうですが、僕はいつもサルツェード弾いているのでそんなでもなかったです。でも、


響板のウィングは随分高いところから広がる。
 

あと44弦というほかのメーカーではちょっと作らないようなサイズで金箔を貼った上位機種まであるのも、なんというかもう哲学が違う。

レバーハープもいわゆるケルティックというか、伝統よりなものから胴体にカーボンを使ったものまで、そしてレバー、グランドともに得意なエレクトリックなど、ここでもやってることが他と違います。

 あと南米のいわゆるアルパも出し始めた。


後発メーカーなので日本国内のシェアはビッグ3には及ばないのですが、最近カマックを愛用されている方も増えているんですね。
 レバーでケルティックを奏でる方、エレクトリックで斬新な演奏をされる方、グランドでとても典雅に弾かれる方から軽快なジャズやポップスを弾かれる方まで。

 とても面白い選択肢になっているのではないかと思います。