明雄は、何週かに1度は実家に帰った。実家での過ごし方も、子供の頃とは大きく変わっていた。例えば蛍だ。子供の頃の夏の夜と言えば、蛍と遊ぶ、蛍と戯れるものだったが、高校生の明雄には、蛍は目に付かない。高校生で関心が別のところに移ったからか、化学肥料、農薬の普及によって蛍が生育できなくなった為かは判然としないが、意識する事もなくなっていた。親に対して、快活に受け答えするとか、学校での出来事を弟や妹達に話して聞かせるとか、そういった子供らしさ、兄らしさの代わりに、重い、何かやりきれなく遠くを見ているような、問題を孕んだ態度、精神の状態だった。母が言った。
「青春て、そんなんじゃないよ。」
整然とした精神状態で無い事は、自分なりに解っていた。だが、自分が掴めないのだ、自分の心も体も。次々とやってくる新しい言葉・概念・観念。自分の心の筈なのに、少しの事に怯えたり、有頂天になったり、絶望したり。そして、熱くなったり、内なる洪水に動揺したり、叫んだり。少しずつ来て欲しい、困難よ。一遍に全部を受け止めようとしている。
「青春て、そんなんじゃないよ。」
整然とした精神状態で無い事は、自分なりに解っていた。だが、自分が掴めないのだ、自分の心も体も。次々とやってくる新しい言葉・概念・観念。自分の心の筈なのに、少しの事に怯えたり、有頂天になったり、絶望したり。そして、熱くなったり、内なる洪水に動揺したり、叫んだり。少しずつ来て欲しい、困難よ。一遍に全部を受け止めようとしている。