読書日記2023-217
ここでは誰もが嘘をつく
嶋中潤(著)
[講談社2022年12月発行]
✩✩✩✩+
あらすじ
この仕事は、誰かがやらなければいけない。 目の前の患者を救うことを、分け隔てなく。
函館にある医療刑務所分院に努める勤める金子由衣(かねこゆい)は、2年目の矯正医官。 医療刑務所では、患者である受刑者の平均年齢も高く、凶悪な罪を犯した者も基礎疾患などを抱え医師の助けを必要としている。 一方で不調を訴え刑務作業逃れをしようとする者も多い。 受刑者の過去の罪と患者としての現在の状況を毎日のように目の当たりにし、贖罪とは何かを考える由衣だったが、当直の晩、糖尿病を患っていた前科四犯の受刑者が亡くなった。これは医療事故か、あるいは殺人事件なのかーー。
感想
多分お初な作家さん。
お邪魔したブログで拝見し、題材の医療刑務所というのに興味があり読んでみました。
矯正医官という、普段意識もしたことなかった職業の話。
色んな意味で衝撃だった…
認知症になり、多くの人を不幸にした自分の罪も忘れて矯正医官、看護師、刑務官らの手を借りて生きている無期懲役や死刑を言い渡された服役囚…
被害者家族や加害者家族の言い分ももっともだし、またそこで働く人たちも皆んな悩みながらも、自分なりのこの仕事に対する意味を考えながら働いている姿…
登場人物が言っていた「誰かがやらなくてはいけない仕事」の一言が印象的でした。
《人は生まれてくる前、場所も時代も親も選べません。(略)多くは悪戦苦闘して世の中を渡っていきます。誰であっても死だけは平等に訪れます。どんなに善行を積もうが、むごたらしく他者の命を奪おうが》
ミステリーとしての結末は、現実には許されないだろうが…
まぁいいんじゃないの!と言いたくはなりました。
ありがとうございましたm(_ _)m