エホバの証人として信仰生活を続けてこられた方であれば、JW組織だけが神の是認を受けており、JWだけが聖書の真理を会得していると確信してこられたことでしょう。

だからこそ組織以外の情報を取り入れることには慎重になってこられたに違いありません。

私たちは,背教的な教えに対してどのように反応すべきでしょうか。それらを毒と見なしましょう。決して読んだり,返信したり,他の人に伝えたりしてはなりません。エホバや組織に疑いを抱かせるように作られている情報を素早く見抜き,退けましょう。(集ワ23 5月号 16ページ)

JW組織に信仰を持っている以上、組織に疑問を抱かせるような内容の情報はすべて「背教的」ということになります。当然ながら組織を批判したり、JW教理の矛盾点を指摘するような文書は背教文書とみなされます。

しかしJW組織的にも、この「背教的」な情報というものの線引きには曖昧な部分もあり、単に他の宗教の教理を知識として取り入れることが禁止というわけではありません。

宣教奉仕で様々な宗教の人に証言をするのですから、有能な伝道者となるために、相手の宗教の信条をよく理解するように、あらゆる宗教の情報に精通するよう努めるのはむしろ推奨されることでしょう。

でもだからといって、相手の方の宗教が出している本を読んだり、集まりに参加してまで学んで来いなどとは組織ももちろん言いません。ミイラ取りがミイラになっては元も子もありませんから。

JWには世界中の様々な宗教の概要を調べるための「探究」という本が組織から出版されており、他の宗教について調べたいなら「これで十分」とされています。

それで信者は「JW以外はすべて偽りの宗教」という大前提で書かれたこの本を読んだだけで、世界中のあらゆる宗教について「分かった気」になります。

しかしながら、実際には一つの宗教の教理を理解するというのはそんなに簡単なことではありません。エホバの証人の教理も最低半年はレッスンを受けて学ばないと基礎的なことも分からないはずです。

仮にエホバの証人以外の別の宗教が「探究」のような本を出版し、そこに何ページかエホバの証人の教理の概要もまとめられていたとして、それを読んだだけで「分かった気」になられたとしたら、「冗談じゃない」と証人たちは思うのではないでしょうか。

しっかり聞く耳を持って、時間をかけて教理を1から体系的に学ばなければ、理解できるわけがないと思うのはどんな宗教でも皆同じでしょう。

キリスト教にも様々な宗派があり、他宗派の聖書解釈を情報として知ること自体が背教的なものに触れたことにはなりませんので、別の宗派の書物をただ読むだけなら何の問題もないはずです。

しかし大抵のJW信者は、相手の土俵に立って、アウェイな立場から知識を取り入れることには強い難色を示します。

JWの聖書解釈の方が絶対的に優れているのであれば、他の解釈を知ったからといって、何ら動じることもないはずです。むしろいかにJWの教理が優れているかを再認識できて良いはずでしょう。

JWの信仰は盲目的なものではなく、理性的なものであると豪語しているのですから、自派の教理こそ真理だという自負があるならば、情報統制などする意味はなく、本当は堂々と構えていればよいのです。

しかし統治体は、「サタンは巧妙」を連呼し、外部情報はすべて悪魔に汚染されて危険なもののように警告しますので、信者は組織以外の情報に触れないこと、近づかないことが賢いことのように思い込まされています。

これこそ典型的なカルトの手口、一方的な情報しか取り入れないことで自分の理性による判断力を放棄した盲信なのですが、結果的にその教理が本当に正しいかどうか、自分が信じてきたことが本当に正しいかどうか、自ら検証する機会を失っています。

でもよく考えてみて下さい。

霊感を受けて聖書を執筆した使徒パウロでさえも次のように述べていたのです。

しかしわたしは啓示があったので上って行ったのです。そして,自分が諸国民の間で宣べ伝えている良いたよりを彼らの前に示しました。といっても,主立った人々に対してだけです。自分が無駄に走っているようなことは,あるいは無駄に走ってきたようなことはないかと思ったからです。(ガラテア 2:2) 

パウロはイエスからの啓示を受けながら、聖霊に導かれてキリスト教の真理を当時の世界で広めた偉大な宣教者です。

そのパウロであっても謙虚に「無駄に走ってきたようなことはなかったか」と自分の信仰を吟味し、周囲の人々に評価を求めました。

そうであれば、キリストの教えとは、個人であれ組織であれ、人間の誰かがそのすべてを会得しているようなものでは決してないでしょう。

JWの聖書理解について、一切の異論を認めないという組織の姿勢に盲従するのではなく、何が真に価値あることなのかを「求め続け、探し続ける」姿勢を柔軟に保つことで、キリストの教えに真に従う者であることを示すことができるに違いありません。

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